(図1) 横浜港大黒ふ頭自動車ターミナルの位置図(A). 自動車ターミナル内で蔵置されている完成自動車(B)、これらを輸送する自動車専用船(C).
(図2) Planet Dove/SuperDove コンステレーション画像. 使用に適する画像(A, B)、雲の影響で使用に適さない画像(C, D)、データの欠損/未撮像(E, F).
自動車産業は日本経済を支える重要な基幹産業です。完成自動車は自動車専用船で輸送されますが、港湾では労働者の高齢化・人手不足が顕在化しています。そのため、科学的知見に基づいて港湾の現場が日々どのように稼働しているのか明らかにすることが重要です。宇宙空間では超小型光学衛星Planet Dove/SuperDoveコンステレーションが構築されており、日々全地球陸域を撮像するサービスが提供されています。こうした日々の衛星画像が港湾でどの程度・どのように活用できるか、横浜港大黒ふ頭自動車ターミナルを対象として調査しました(図1)。2018年から2023年(計6年間)にかけて調査した結果,「使用に適する画像(図2A, B)」が37.1%、「雲の影響で使用に適さない画像(図2C, D)」が21.2%、「データの欠損/未撮像(図2E, F)」が41.8%という結果でした。平均で2.7日に1回の頻度で「使用に適する画像」が撮像されていました。これらの「使用に適する画像」から横浜港大黒ふ頭自動車ターミナルの船舶数をモニタリングした結果、8月はその他の月よりも停泊している船舶数が少ない傾向にあることが分かりました。また、月に関係なく月末25日以降に船舶数が増加する傾向にあることが明らかになりました。
衛星画像が港湾の現場でどのように使えるのか調べた結果、Planet Dove/SuperDove コンステレーションは月に1日しか「使用に適する画像」が撮像されていないことがあり、日々の現場の進捗管理に利用するのは難しいと言えます。一方で、本研究で示したように長期的なモニタリングによる現場の稼働状況・傾向を把握するという目的では活用できる結果が得られました。今後、合成開口レーダ(SAR)による衛星コンステレーションの構築が見込まれていることから、こうした先端科学技術が物流の現場でどう活用できるのか今後も研究を進めていきます。
さらに詳しい内容は以下の論文をご参照ください。
(図の出典)Murata H, Imura N, Nishinari K. 2024. Evaluation of the Planet constellation’s daily coverage for estimating the number of vessels at Daikoku Pier automobile terminals, Port of Yokohama, Japan. Frontiers in Remote Sensing, 5(1474468).