合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar: SAR)は昼夜を問わず、かつ悪天候時にも地表面の観測を行うことができます。日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は現在、ALOS-2 PALSAR-2を運用しており、今後後継機であるALOS-4 PALSAR-3を打ち上げる予定です。こうしたSARデータは災害発生時に役立つことが期待されていますが、データ取得時の入射角の違いがもたらす影響(後方散乱係数)については調査されていませんでした。そこで、三重県英虞湾に設置されている養殖筏を対象として入射角の異なるALOS-2 PALSAR-2 HH単偏波画像を解析し、その影響を評価しました。その結果、養殖筏の検出に最適な入射角は33.8°~45.1°であるという結果が得られました。また、衛星軌道に対する養殖筏の向きが影響することも示唆されました。
将来、津波等の災害発災後に養殖筏の流出・被害状況をSARを用いてリアルタイムに把握することによって、船舶の入出港の可否判断や航行の安全確保につながると考えています。
図は入射角 (A) 33.8°, (B) 44.0°, (C) 45.1°, (D) 52.1° のALOS-2 PALSAR-2 HH単偏波画像を示します。(海面上の養殖筏が入射角52.1° (D)の場合、他の入射角33.8°~45.1° (A-C)と比べて見えにくい様子が判読できます)
さらに詳しい内容は以下の論文をご参照ください。
(図の出典)Murata H, Fujii T, Yonezawa C. 2023. Evaluating the effect of the incidence angle of ALOS-2 PALSAR-2 on detecting aquaculture facilities for sustainable use of coastal space and resources. PeerJ 11:e14649 https://doi.org/10.7717/peerj.14649