東日本大震災(2011年3月11日)の津波によって三陸沿岸リアス海岸のカキ・ホタテ・ホヤなどの海面養殖施設は壊滅的な被害を受けました。また、アマモ場などの海草藻場も壊滅的な被害を受けました。そこで、これらの復旧・回復状況を把握することを目的として調査を実施しました。調査は宮城県石巻市長面浦を対象として、人工衛星リモートセンシング手法を用いて震災前(2006年)から震災後(2019年)までの期間について過去に遡ってモニタリングを行いました。
人工衛星画像解析の結果、養殖筏(図中オレンジ色)の台数は震災から約2年で元通りの台数にまで復旧していました。アマモ場(図中緑色)は津波によってほぼ消失しましたが、2016年頃から回復の兆候が見え始め、2019年時点では震災前(2006年-2010年)よりも分布域・面積が拡大・増加している結果が得られました。これは長面浦入口部の開口幅(図中赤矢印)が震災前よりも拡大し、長面浦と追波湾(外湾)との間で海水交換されやすい地形に変化したことで海水の透明度が向上し、太陽光が海底に届きやすくなったことでアマモの生息にとって有利な環境に変わったことが理由として考えられます。つまり、自治体の政策決定者(工事発注者)が海岸地形を原形復旧しない判断を下したことでアマモ場が拡大したと言えます。
こうした調査・研究により得られた知見を広めていくことが今後のより良い沿岸域実現に貢献すると考えています。
さらに詳しい内容は以下の論文をご参照ください。
(図の出典)Murata H, Hara M, Yonezawa C, Komatsu T. 2021. Monitoring oyster culture rafts and seagrass meadows in Nagatsura-ura Lagoon, Sanriku Coast, Japan before and after the 2011 tsunami by remote sensing: their recoveries implying the sustainable development of coastal waters. PeerJ 9:e10727 https://doi.org/10.7717/peerj.10727