あるところに、牛たちがいました。
おじいさんは芝刈りに、おばあさんが水汲みに行って、毎日牛たちはそれを食べて暮らしていました。
ある日、突然、この世が壊れると思うほどの揺れがありました。
家が崩れて死んでしまった仲間もいました。
揺れは、何度も何度も何度も続き、 そして、海が押し寄せてきました。
一瞬で流されて海へ消えてしまった仲間もいました。
あたり一面、真っ暗な日が続きました。
やがて、ぼんっと音がし、人がいなくなりました。 おじいさんもおばあさんもいなくなりました。
誰も牛達のところには来ませんでした…。
来れませんでした…。
グー…
『 お腹が空いた…』
ペコペコで木の柱をかじりますが、硬くてとても食べれません。
それでも、生きるために、赤ちゃんにお乳を出すために、必死にガリガリかじりつきました。
それでも、全くお腹の足しにはなりませんでした。
何日も、何週間も、水も餌も無くて、 やがて、仲間はバタバタと倒れていきました。
死にかけるとき、牛舎の柱が倒れて、外に出ることができました。
ようやく、外に出て、明るい日と、青い草を体に感じました。
とにかく喉がかわいて仕方なかったので、水を探し回りました。
山へ行くと、チョロチョロと、小川のせせらぎが聞こえました。
ゴクゴクゴク お腹一杯飲みました。
今度は何か食べたくなりました。
いつもおじいさんが持ってきてくれていた餌はありません。
でも、目の前の草を一口、食べてみると… !
おいしい
それからは、一心不乱に、モグモグモグと食べまくりました。
餌がなくて死んでしまうと避難先から泣いていたおじいさんやおばあさん達。
涙は枯れません。
立ち入りたいけど、立ち入れなくて、毎晩毎晩泣いていました。
草の枯れる冬になると、… もう完全に死んでしまう、とガックリと心が折れてしまった人も。
…しかし、生き残っていた牛達は、冬も青い葉っぱを探して山へ入り、短い草をたくさん歩いて食べて、生きていました!
一つ目の冬を越し、
二つ目の冬を越し、、
ようやく何とか立ち入れた人が探し回ると…
ひょっこり、物陰が!
そう、牛達は生きていたのです。
そのおしりの影からは、小さな顔ものぞいていました。 赤ちゃんも自然に生まれていました。 そして、周り全てが森のように草に覆われる中で、牛達のいたところだけが、とてもキラキラと明るいグリーンになっていました。
人は、その草と水のあるところを柵で囲い、牛達を入れました。
囲ったところはぐんぐん、ぐんぐん、キレイになっていきました。
そして、牛がジャングルのような草を食べてくれるので、死にかけていた花や果物も生き返ってきました。
牛達がキレイに平らげると、次の区画へ移動してもらい、その次の区画も平らげると、また次のぼうぼうの区画へ。
こうしてじゅんぐりに、牛にお腹一杯に食べてもらいながら、土地が荒れるのを防ぐことができました。
牛もお腹一杯食べられて幸せ。
ぼうぼうな草を食べてもらって人も幸せ。
花やその他自然も幸せ。
明るくなった大地には、たくさんの笑顔が広がっています。