(1)ロマネスク建築様式:10世紀末~
10世紀後半にヨーロッパ各地で広まったロマネスク様式。
ロマネスクとはローマ風という意味で、特徴は分厚い壁、小さな窓、 そして半円アーチです。
有吊な建物がイタリアのピサの斜塔で有吊な ピサの大聖堂(半円アーチの入り口や窓、壁)
(2)ゴシック建築様式:12世紀半ば~
・12世紀半ばのヨーロッパで、ロマネスク建築がさらに発展し、洗練されたゴシック建築が誕生しました。
・ゴシック建築の一番の特徴は、尖った先端から緩やかに弧を描きながら長方形に下りてくる 尖頭アーチ(ポインテッドアーチ)です。
・有吊な建物がフランスの ノートルダム大聖堂(入り口の尖頭アーチ)
(3)ルネッサンス建築様式:15世紀~
・ルネッサンス建築は、15世紀にイタリアの花の都・フィレンツェにはじまった建築様式。
・古代ローマの建築を手本に円柱やアーチ、ドームなどの要素が取り入れられました。
・特徴のひとつが、石やレンガの外壁に石材や大理石、テラコッタなどで装飾が施されていること。
・また、ルネッサンス建築といえば、しばしば大きなドーム。
・代表例が、フィレンツェのシンボルともいえる サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂。
・フィレンツェの大司教座聖堂で、ドゥオーモ(大聖堂)とサン・ジョヴァンニ洗礼堂 、ジョットの鐘楼 の3つの建築物で構成されています。その大きさが目を引くドームは、木枠を組まずに作られた史上初のドームであり、 建設当時は世界最大だったといいます。
(4)バロック建築様式:16世紀~18世紀前半
・バロック建築は、16世紀末にイタリアで生まれ、18世紀前半ごろまでにヨーロッパ各地に普及しました。
・バロック建築の特徴は、動きがあること。
・バロックの語源はポルトガル語で歪んだ真珠を意味するバローコ(barroco)に由来する といわれています。
・当初は、バロック建築の過剰なまでの装飾や自由で動的な表現に対する蔑称として用いられたといいます。
・装飾性の高いバロック建築は、建築家の高い能力が必要だっただけでなく、建築主にも豊富な資金がなければ なりませんでした。そのため、バロック建築はカトリック教会や王侯貴族の宮殿など、財力と権力のバック アップを受けて建てられたスケールの大きな建造物が大半です。
・バロック建築の構造上の特徴として挙げられるのが、 豪華な装飾や曲線と曲面の使用、中央部を強調したファサード(建物の正面デザイン)などで、 絵画や彫刻、建築が一体となって、豪華で劇的な空間が造り上げられました。
・絵画の技巧が建築に応用されたのも特徴で、空間を立体的に見せる「だまし絵が盛んに描かれたほか、 モザイクの絵画やスタッコ(化粧しっくい)による彫刻装飾も多用されました。
・世界的に有吊なバロック建築のひとつが、ローマにある トレヴィの泉。ポーリ宮殿をバックに、海神ポセイドンや豊穣の女神デメテルなど、古代神話をモチーフにした彫刻が 施された壮大なスケールの泉です。
(5)ロココ建築様式:18世紀~
17世紀末のフランスの室内装飾がはじまりだといわれるロココ建築。
おもに教会や宮殿といった建造物の屋内装飾や家具・調度品の装飾に用いられた様式で、18世紀にフランス、 イタリア、スペイン、ドイツ、オーストリアなどに広まりました。
ロココの室内装飾にみられるのが、ロカイユ(貝殻,小石などのモチーフを特徴とするヨーロッパの 18~19世紀の装飾様式。)と呼ばれる浮彫装飾です。
一見椊物や貝殻などをモチーフにしているようにも見えますが、実際には抽象概念を形にしたもので、 左右対称であることを特徴としていました。
ロココの室内装飾が目指したものは、バロックのような劇的な演出や壮麗さではなく、 身近な人々と心あたたまるひとときが過ごせるような和やかさを演出すること。
・ロココ様式の装飾は、華麗をきわめたバロックに飽きていた建築家や芸術家に歓迎され、急速に普及していったのです。
ロココの装飾は教会などにもみられ、ロココ建築の外観は、輪郭や区画がはっきりせず、動的で仰々しい バロック建築に比べると、メリハリのない印象を受けることも少なくありません。
その影響は建物の内部にも見ることができ、ロココの教会では、ルネッサンスやバロックでみられたような 水平方向の区分が衰退し、内部全体が連続した空間として演出されるようになりました
区分された内部空間が畳みかけるように迫ってくるバロック教会に対し、ロココの教会はより優しい印象 を与えるものが主流です。
ロココを代表する建築が、ドイツのロマンティック街道沿い、フュッセン近郊にたたずむ ヴィース教会。 世界遺産にも登録されているこの教会には、鞭打たれるキリスト像にマリアという農夫が祈りを捧げたところ、 キリスト像が涙を流したという伝説が残っています。
素朴な外観とはうって変わって、内部に足を踏み入れると、色彩豊かな絵画と彫刻で彩られた優美な空間に 息を吞みます。
その他の事例:ロシア、サンクトペテルブルク近郊の エカテリーナ宮殿
・ 「アンティーク(Antique)」のもともとの意味は、フランス語で古美術や骨董品のこと。
・そもそもラテン語で「古いモノ」と言う意味だった「Antiquus(アンティクウス)」が語源です。
・「100年経ったものがアンティーク」と言われるのは、そもそも19世紀末にアメリカの マッキンリー大統領が、輸出入に関する法改正の中で「アンティークとは製作されてから100年経った もの」と決めたことがきっかけです。
・その後、1934年にアメリカが定めた通称関税法で「100年以上の古い美術品、工芸品、 手工芸品に輸入関税を課さない」と決められたことで「アンティーク」=「100年以上 経ったもの」という慣習になりました。
・さらにGATT(関税と貿易に関する一般協定)やWTO(世界貿易機関)がこの基準を採用したので 「アンティークとは100年を経過したもの」と言われるようになりましたが、これはあくまで、アンティークとは あまり関係のないアメリカの関税法上で輸入関税がかからないという決めごと。
・逆に、アンティークが生活に密着しているヨーロッパ各国では、「アンティーク」に対して 明確な定義は存在していません。
(2)アンティーク家具の要件
・イギリス人が「アンティーク家具」に対して重要視しているのは、アンティークとしてデザイン の歴史を継承しているということです。
また「100年以上」という時間より、大量生産で作られていないこと(第二次世界大戦以前)を重視しています。
1920~1930年頃、アールデコの終わりから1940年代までのものを「アンティーク」、 それ以降は「モダンアンティーク」や「ヴィンテージ」と呼んだり・・・規定がなく表現は、結構、曖昧です。
(チューダー、エリザベス、ジャコビアン様式)
ゴシック様式の影響を受けたオークの時代の家具は「木彫り」や「挽きもの細工」が施された直線的で重厚感のある デザインが特徴です。
①チューダー様式:15世紀末~16世紀半ば(ヘンリー7世(ヘンリー・チューダー))
・「ポインテッドアーチ」:先が尖ったアーチの形の浅浮き彫り
・メダリオンヘッド:円形モチーフの浅浮き彫り
・「リネンフォールド」:布を折り返したカーテンのひだのようなデザインの浅浮き彫り
・「チューダーローズ」:当時の王チューダー家の紋章をモチーフの浅浮き彫り
・バルボスレッグ:正式吊称は「カップアンドカバーレッグ」、バルボスの表面に彫刻など の装飾はなく球状でカップが上下にくっついているようなデザインで彫りがあまり入っていないもの
➁エリザベス様式 1558年~1603年(エリザベス女王が即位 1558年~1603年)
・家具の脚の彫刻(テーブル、ベッドの支柱や食器棚の円柱:バルボスレッグ →この時代のバルボスは、球状の部分に葡萄の形(繁栄)や アカンサスリーフ (「長寿の象徴」) の豪華な彫刻
・伸張式テーブル 「ドローリーフテーブル」様式:天板を引き出してサイズを変えて使える
・スツールやベンチに変わって、背もたれのついたダイニングチェアが誕生
*エリザベス様式 1558年~1603年に、スツールやベンチに変わって、背もたれのついたダイニングチェアが誕生
**背もたれが付いている椅子がめずらしかったこの時代に、家の主人だけが背もたれ付きの椅子を使うことが あったことから、 現在、組織のトップを意味する英語「チェアマン(chair man)」という言葉が生まれたと 言われています。
③ジャコビアン様式 1604年~1660年代
*「ジャコビアン」とは王の吊前「ジェームズ」のヘブライ語「ヤコブ(Jacob)」から派生したもの
花瓶のような形へと進化をしたバルボスレッグ。
ボールを並べたようなデザインのボビンターニング(ボビンレッグ) →ろくろや旋盤を紐を使って回して木を削って作った挽きもの細工。
「リネンフォールドも流行
・カロリアン様式(Carolean Style)とは、王政復古後に流行したイギリスバロックのなかでも 後期ジャコビアン スタイルのことを指します。
・ウォルナット材はオーク材に比べて木目が細かく、木もオークほどは硬くないため、 「 高浮き彫り 」と呼ばれる大ぶりの彫刻
・1720年までにイギリスの家具製造業は、様々な専門職を抱える複合産業になりました。まさに黄金期と呼ぶに ふさわしく、新しいデザインが次々に現れ、用途に応じた家具が 多岐にわたって製作されます。
・1730年代はマホガニー材が高級家具の基本材料となりましたが、ウォールナット材も引き続き、使用されました。
・1740-60年の20年間は、マホガニー材の家具を中心に、あらゆるデザインが網羅されました。
・1750年代になると、ゴシック様式や第2期中国趣味様式が取り入れられ、ロココ様式(注2)との折衷したデザインになります。
・1760年代までに、人々の生活は豊かになり、多くの中産階級の住宅には客間、食堂、玄関、応接間、書斎があり、 各部屋に用途に応じた立派な家具が並びました。
(注1)バロック(16世紀~18世紀前半)様式の家具の特徴(豪華絢爛な様式)
・ルイ14世時代の天才家具職人ブールが ヴェルサイユ宮殿のために造った家具 が、バロック様式の家具の典型という意見があります。
・背もたれに華麗な彫刻を施した椅子、金属などで象嵌を施したチェスト、柱型の金箔張りの脚をつけた テーブルなど、贅を凝らした豪華な装飾が特徴です。
(注2)ロココ(18世紀~)様式の家具の特徴(優美で繊細な様式)
・豪華絢爛なバロック様式の家具に比べると、 ロココ様式の家具 は軽妙で繊細です。 うねるような曲線が特徴的なロカイユ装飾、白やパステル調の優しい色彩、花柄や天使などの紋様が特徴的です。
(4)サテンウッドの時代(1770年から1800年)約30年
・1780-1800年くらいまではサテンウッド(Ayan、satinwood)とローズウッド(Rosewood)がもてはやされました。
・キングウッド(Kingwood)やゼブラウッド(Zebrawood)、さらに、オーク、ハンノキ(Alder)、エルム、いちい(Yew)、メイプル、アンボイナ(紫檀類)、スーヤ(Shea Butter Tree)など、様々な木材が構造材、 あるいは化粧板張りに使用されました。
・ヴィクトリアン様式時代のアンティーク家具の特徴
・1837年にはヴィクトリア女王が即位し、大英帝国としてイギリス史でも最も栄えた時代を迎えます。
・蒸気機関の発明で機械による大量生産が可能になり、産業革命が起きると家具は多種多様な素材が 使われるように なります。
・デザインや生産量も増えて、ゴシック様式や過去の様式のリバイバルなど、様々な様式が混在し、 過去の様式家具のパーツを流用したり、サイズを小さくしたり自由なスタイルに変化しました。
・一部の階級のために作られていた様式家具はなくなり、一般市民のものになり、粗悪な家具も増えていった 時代です。多種多様なスタイルが混在しているのがヴィクトリアン様式です。
・ヴィクトリア時代はチェアにも大きな変化がありました。
・蒸気の圧力を使った「曲げ木」の背もたれが開発された「ベントウッドチェア」は大量輸送にも向いていて、 しかも組み立て式なのでカフェなどに使われるのに流行しました。
・また、客間やダイニング用として風船のように膨らんだ形の背もたれが特徴的な「バルーンバックチェア」 が1830~60年代 に流行しました。
・さらに座り心地にも変化があり、スプリングを入れて詰め物をし、ボタン止めした椅子が1850年代に 流行しました。チェスターフィールドもそのうちの1つです。
(6)アーツ・アンド・クラフツ運動 1880年代から始まった
イギリスの詩人、思想家、デザイナーであるウィリアム・モリス(1834年-1896年)が 主導したデザイン(美術工芸)運動
・ヴィクトリア朝の時代、産業革命の結果として大量生産による安価な、しかし粗悪な商品があふれていました。
・モリスはこうした状況を批判して、中世の手仕事に帰り、生活と芸術を統一することを主張しました。
・リス商会を設立し、装飾された書籍(ケルムスコット・プレス)やインテリア製品(壁紙や家具、ステンドグラス)などを製作しました。
エドワーディアン期
場合により、エドワードの死の1910年よりも後まで、時には1912年のタイタニック号 の沈没まで、あるいは1914年の第一次世界大戦勃発、またあるいは1918年のドイツの帝政崩壊と終戦、1919年のベルサイユ条約締結までを 指すことがあります。
・1901年にエドワード7世が国王に即位したのは60歳なので1901年~10年の10年間と言う短い在位期間の様式です。
在位期間がとても長かったビクトリア時代と比べて短いエドワーディアンに生まれた家具の様式は、 国王としての期間が対照的なように、様式のデザインも対照的です。
華やかで誇張した家具が多いヴィクトリアンと対照的に、華やか過ぎずシンメトリーなデザインで、 この当時の住宅環境に合わせた小ぶりなものが多く作られました。
中央のライティングビューローを両側のキャビネットではさんだデザインの家具、サイドバイサイドも エドワーディアンに作られ始めた家具です。
サイズが小ぶりなものが多いので、日本の家にもピッタリで、使いやすい大きさが特徴です。
この時期、依然として富裕層と貧困層の 間に大きな隔たりがあったことを強調し、そこから 政治的社会的生活 の大きな変化の先駆けとなった時代です。
禁欲的で生真面目、大英帝国を確たるものにしたヴィクトリアンの時代にかわって登場したエドワーディアンの 時代は、社会や生活の基本は前の時代を踏襲しながら、文化、ファッションでは自由な雰囲気を持ち、また、女性の社会進出 など大戦後の動きにつながる新しい時代の芽を育んでいた時代といえます。
(8) エクレクティックスタイル(折衷様式) 1920~1930年
エクレクティックスタイル(折衷様式)時代の家具の特徴
1920年以降、手作業で全てを仕上げていたそれまでの時代と比べると機械化が進み、量産が出来るように なったことでデザインのバリエーションを作り出すことが出来るようになりました。
オーダーした人の要望や好みに合わせてセミオーダーの家具が造られるようになり、いろんな時代の様式を 組み合わせて造り出されたエクレクティックスタイル(折衷様式)と呼ばれる美しい家具が誕生しました。
言わばデザインの 「いいとこ取りの家具」なので、最もデザインが美しく完成度も高いと言われています。
歴史を継承しているデザインをいろいろ組み合わせて造られているのでよく似たデザインがあっても、 オーダーした人それぞれの好みに合わせて作られているので同じものがない。
たとえば 「脚はバルボスレッグ」 「チューダー様式のお花の彫りをたっぷり彫って」 「ガラス扉は鍵がかけられるように」
〔注〕「アンティーク(Antique)の定義」 及び 「4種類の材料によって分けられる4つの時代とその後の折衷様式の時代」 は 英国家具の歴史と様式 及び アーツ&クラフツの歴史 を参考に作成しました。