全身麻酔を受けられる方へ
全身麻酔を受けられる方へ
手術前
飲水・絶食:麻酔を開始する前の一定時間は食べたり飲んだりしないようにしてください。
(絶食:手術前日 飲水: )
内服:普段内服しているお薬は、調整が必要な場合があります。別途説明いたします。
喫煙:喫煙をする方は、手術が決まり次第すぐに禁煙してください。
当院では術前1か月以上、術後3か月の間の禁煙ができる方を手術適応としています。
喫煙により手術の後の感染率が高くなり、傷口の治りが悪くなります。また、手術後に咳や痰が多くなります。そのため、肺炎のリスクが高くなり、傷の痛み、出血も強くなります。その他、狭心症や血栓症が起こりやすくなります。
風邪:風邪をひいている時に麻酔をかけると、治りが悪くなったり、悪化する可能性があります。喘息や肺炎を起こす危険性も高くなるため、風邪気味や発熱など体調不良になった場合は、必ずお知らせください。手術が延期や中止になる場合があります。
手術室入室後
手術室へ入室後、ベッドに仰向けに寝ていただきます。 その後、酸素をはかるパルスオキシメーター、血圧計、心電図など、 麻酔に必要な装置をつけます。モニターを観察し、 全身状態を把握しながら、麻酔薬をいれていく点滴ルートを確保します。
麻酔開始~終了まで
全身麻酔とは、全身麻酔薬を用いて意識を一時的に無くし、痛みを感じなくさせる方法です。
鼻と口にマスクを当て、酸素を吸っていただきます。その後、麻酔のお薬を使用し眠っていただきます。(麻酔薬の成分の関係で、点滴のところが痛むことがありますが、心配いりませんのでご安心ください。)眠った後は、自分では十分な呼吸が出来なくなるため人工呼吸が必要となります。そのため、口から気管にかけて道具を入れます。
麻酔中は常に麻酔科がそばにいて、全身状態を観察し、変化に応じて薬や輸液を調整します。
手術が終了し、麻酔を覚ましていきます。ご自身で呼吸が出来るようになったら、呼吸を助ける道具を抜きます。その後、呼吸、循環が安定していれば、手術室を退室し、リカバリールームで経過観察を行います。
合併症
・吐き気・嘔吐
全身麻酔薬の影響で起こることがあります。年齢、性別、体質などによって左右されます。過去の麻酔で吐き気があった方、乗り物酔いをしやすい方は術後の吐き気、嘔吐の頻度が高くなります。
・歯の損傷、口唇や下の腫れ
呼吸を助けるための道具を挿入する操作や、麻酔から覚める時に歯を食いしばることにより、グラグラした歯や義歯が損傷することがあります。
・咽頭痛・嗄声(かすれ声)
声帯は気管にある膜で、声を出すために使います。呼吸を助けるための道具を入れる時や、長時間の人工呼吸で声帯に少し傷がつき、術後にのどの痛みやかすれ声になることがあります。ほとんどの場合は数日で軽快しますが、1週間以上続く場合や、声が出しにくい、むせやすくなった等の症状がある場合は、医師や看護師に相談してください。
・寒気(40~60%)
麻酔の影響で体温の調節機能が一時的に落ちてしまうため、術後に寒気やふるえが出ることがあります。
・悪性高熱症(2万人から6万人に1人、0.023%)
麻酔薬により全身麻酔中に起こる症候群で、筋肉の硬直、異常な高熱、不整脈といった症状がでます。一旦起こると手術を中止し治療を最優先させることがありますが、予後はよくありません。このような遺伝を持っている人は2万~6万人に1人程度と極めて稀ですが、血縁の方に麻酔でこのような反応を起こした方がおられましたら主治医あるいは麻酔科に必ずお知らせください。
・肺炎・誤嚥性肺炎(0.061%)・無気肺・低酸素血症
麻酔中や麻酔直後は、胃の内容物が気管内や肺に入り、ひどい肺炎が起きることがあります。そのため、手術前の絶食・絶飲の指示は必ず守ってください。また手術後、痰がたまりやすく成り、肺炎や肺がつぶれた状態になる無気肺といった肺の病気を招いてしまうこともあります。防止のために、深呼吸や咳をしっかり行うようにしてください。
・気管支痙攣(喘息発作)・喉頭痙攣
吸入麻酔薬や、喉に入れた道具の刺激、あるいは使用薬剤のアレルギー反応で気管支痙攣をおこす可能性があります。喘息の持病がない方でも発作を起こすことが稀にあります。
咽頭痙攣とは、声帯が閉じたまま固定してしまい、一時的に呼吸が出来なくなるものですが、麻酔科の適切な処置により回復します。
・術中覚醒
稀に点滴漏れなどが生じると麻酔が浅くなって覚醒し、術中の記憶が残ることがあります。
・アレルギー反応・アナフィラキシーショック
薬剤や医療器具に対してアレルギー反応を起こすことがあります。卵や大豆の成分が含まれた薬剤を使用しますので、アレルギーの方はお知らせください。また、キウイやバナナなどで喉が痒くなったり、ゴム製品でかぶれたりする方は、ラテックスアレルギーの可能性がありますのでお知らせください。
・肺血栓塞栓症
肺の血管に血栓(血の塊)などが詰まり、呼吸困難、胸痛、ときに心停止を引き起こす病気です。エコノミークラス症候群と同じものです。一旦発生すると死亡する可能性が高い危険な病気です。主な原因としては、下肢の血の流れがゆっくりになることによって、下肢の静脈に血栓ができること(深部静脈血栓症)です。長期間寝たきりの方、血液が固まりやすい病気の方、肥満、妊娠、経口避妊薬(ピル)の服用、下肢の浮腫、心疾患、悪性腫瘍、脳卒中、喫煙者などでは危険性が高くなります。また、長時間の手術などで危険性が高くなります。
その他、麻酔・手術によって、身体には多大なストレスがかかります。
そのため手術中は血圧が急上昇・急降下するなどの血行動態の変化が現れ、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、肝機能障害、腎機能障害が起こる可能性があります。高血圧、脂質異常症、糖尿病、腎臓病等の患者様の場合ではそのリスクは高くなります。
合併症は、細心の注意を払って麻酔することで予防できると考えております。しかし、麻酔も医療行為である以上、100%安全な麻酔は存在しません。常に100%安全な麻酔を目指し、私たち麻酔科医は日々研鑽し、努力しております。
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