1.鼻の手術を受けた方からよくある質問集です
※休日や夜間に受診する時は、みくりや鼻の診療所緊急連絡先にまでご連絡ください。
①鼻血(はなぢ)
・鼻から赤い液体が出ますがはなぢでしょうか?
顎を引いて鼻から濃い赤い血がポタポタと垂れてきていればハナヂと判断します。薄い場合は傷口から出る分泌物や洗浄液に血液が混じったもので心配はありません。
・出血が続く時は?
鼻翼(鼻の穴まわりの膨らむ部分)を指でしっかりと挟みます。中にはティッシュなど詰めません。15分間圧迫し止まらない場合は耳鼻科受診を準備し始めてください。鼻栓(鼻ポン)と非常用の点鼻液を持っている人は、点鼻液を数滴鼻にさして、鼻栓をつめ、圧迫してください。これでも止まらない場合や、のどに血液がたれておぼれるような状態になる場合は耳鼻科を受診してください。血液は飲み込むと吐き気が出ますので、口からはき出してください。また、顔は常に心臓より高い位置にすると出血が減りますので座位がおすすめです。いったん止まっても繰り返し出血する時は、同様の手順を繰り返します。3度目の出血が起きれば受診を考えて下さい。
・いつまで出血する危険性がありますか?
粘膜(血管)が再生し「かさぶた」が剥がれ始める頃に出血しやすく、7−14日目頃になります(1-3%)。それを過ぎると出血はほとんど起きませんが、治りが悪い時は1ヶ月近くまで出血を起こすことがあります。抗血栓薬(血液サラサラの薬)を飲んでいる方はリスクが倍(頻度、期間)になりますので注意が必要です。休薬していても出血リスクはほとんど減りません。
・手術当日のガーゼ交換はどのようにしたらよいでしょうか?
テープで貼っているガーゼのみ交換して下さい。詰めてあった小さい綿が外れしまったら、綿球や事前に渡していた鼻ポンをつめても大丈夫です。
②痛み・違和感・しびれ
・のどが痛いのはなぜですか?
全身麻酔の方はのどにチューブが入っていたので痛みが残ることがあります。数日で治っていきますが、痛みが強い場合は鎮痛薬を使用してください。また、鼻閉が強いと口呼吸になり、のどに違和感や痛みを感じることもあります。
・おしっこの管はいれますか?
原則、導尿はおこないません。稀に、尿の管を入れることがあります。しばらく痛みが強かったり血液が混じったりすることがあります。鎮痛薬で対応します。
・頭痛がしますが関係ありますか?
通常術当日は頭痛のような痛みが出ますが、翌日以降には楽になることがほとんどです。例外はもともと頭痛持ちの方で、痛みを感じやすい体質があるため痛みが長引くことがあります。処方された痛み止めで効果が薄い場合は、自分にあった頭痛薬や鎮痛薬などを使用して構いません。
・風邪気味の症状(発熱、鼻水、頭痛)が続きます
鼻の術後は鼻風邪を人工的に作った状態に似ています。個人差はありますが最初の1−2週間は鼻風邪の状態をイメージしておいてください。傷の治りに2−3ヶ月かかりますので、その間に症状が反復することがあります。弱っている粘膜からウイルスやアレルゲンなどが入らなように、予防や鼻うがいできれいに保つ意識を持っていてください。まれに、鼻と脳が近いため髄膜炎になることが稀にあります。高熱と頭痛がひどい時は早めに連絡してください。
・前歯や上あごに違和感があります
鼻中隔矯正術や麻酔の影響で、しびれた感じや痛みが出ることがあります。月単位ですが徐々に治っていくことがほとんどです。
③鼻閉(鼻づまり)
※一般に術後1~2週間は一般に傷の治りを優先させるため鼻栓をすることが多いですが、当院では少しでも早く鼻詰まりを楽にするために術後1~2日目のみにしています。ただし、出血・感染・乾燥予防には鼻栓は非常に有用ですので、各自で鼻栓をする、マスクと鼻の間にガーゼを挟むなど工夫をお願いします。
・いつ頃から鼻が通るようになりますか?
鼻の通りは1週間ぐらいするとよくなってきます。それまでは、鼻の中に詰まっているもの(止血剤、分泌物のかたまり)、鼻粘膜のむくみ状態、かさぶたのせいで吸った空気の感覚がわからない、などの影響を受けます。乾燥を避ける、鼻うがいを定期的に行う、など忘れないようにしましょう。寝る時に頭を心臓より高い位置に上げておくと、鼻粘膜のむくみが減り鼻閉が起きにくくなります。
・術後に匂いや味がしません
鼻閉がひどいと嗅覚や味覚の低下が起きます。粘膜の腫れが引いてくると嗅覚が戻ってきます。術前から嗅覚低下がある方は、薬の力を借りて治す必要があります。1ヶ月程度はかかることが多いです。
④その他
・黄色い鼻水がでたり、嫌な臭いがしますが大丈夫でしょうか?
術後1ヶ月ぐらいは、かさぶたや止血剤、縫合糸に感染を起こす場合があります。黄色い鼻が出たりくさい臭いが続く場合は、追加のお薬や処置が必要になりますので受診を考えてください。
2.鼻洗浄/鼻うがい(鼻洗浄のはじめ方を参照して下さい)
・いつから鼻洗浄(鼻うがい)を開始しますか?
術後の初回処置後、夜から開始です。1日3回朝、昼、夜おこないます。
・何回洗いますか?
可能なら1日3回洗います。忙しい場合は1日2回で構いません。術後に汚れが引っかかる感じがあれば追加で洗って良いですが、追加は2回/日ぐらいまでにしましょう。
・いつまで洗いますか?
最低2ヶ月は洗いましょう。汚れが全く無くなったら1日1回でも良いです。タイミングは朝、夕どちらでも良いです。鼻洗浄は医師から指示があった人、洗った方がすっきりすると感じる人はずっと洗っても良いです。
・鼻うがいの水は水道水でよいでしょうか?
水道水を使用した方法で構いません(井戸水は不可)。ただし塩分濃度、温度は必ず調整してください。水は煮沸するとより安全ですが、蛇口から出た水をすぐに使用するのであれば煮沸の必要はありません。
・鼻洗いの道具の使用期限はありますか?
洗浄後の容器は赤カビがはえやすいため、しっかりと水をきり乾燥させるようにしてください。サイナスリンスであればレンジでの消毒(500W-600Wで1分間)が可能です。週に一度は消毒します。サイナスリンス以外の容器は哺乳瓶の消毒液を使用をお勧めします。
・鼻がつまって水がはいっていかないですが洗ってもよいですか?
鼻うがいは、水圧でよごれを洗い流して通りを良くするためではなく、湿らせて粘膜の回復を良くする、粘膜がもつ加温・加湿・自浄作用が最大限発揮できるような環境にするのが目的になります。ゆっくりと鼻のなかにしみこませるようなイメージでつづけてください。ある程度鼻がとおりだしたら、水圧ではなく、水量でよごれを押しだすイメージで洗浄をおこなってください(コップに水をそそいで溢れ出させるように)。
・鼻洗いの道具の血の塊、糸・綿のようなものが出ましたが大丈夫でしょうか?
術後1ヶ月ぐらいは、鼻の中から赤黒い塊、レバーのようなもの、糸のような繊維や綿、硬いプラスチックのような小片がでることがありますが心配はありません。術後のたまった血液や鼻水、鼻うがいのよごれが固まったもの、吸収性の綿、糸、手術時の削りカスが出てきています。
・鼻洗いすると耳が痛くなりますが大丈夫でしょうか?
圧が高すぎる可能性があります。圧をくわえずにゆっくりながすようにする、痛い側の鼻からはいれない、以上の対応をおこなっても痛みが強い場合は回数を最低限する、もしくは次の処置をうけるまでやめてもらってかまいません。ただし、湿らせていたほうが治りは早いですので可能な範囲でつづけてください。
3.術後のお薬について
・術翌日は薬が処方されますか?
傷の治りを良くする薬、痛み止め、非常用の点鼻薬を処方します。非常用とは鼻詰まりがひどくて寝れない、鼻血がでてきたときにご使用ください。使いすぎはよくありません。
・術前の鼻の薬はいつ再開しますか?
術前の薬は使わず、術後に処方された分だけ服用してください。他科から処方されている薬、例えば喘息の吸入薬や内科の薬などは術翌日から再開してください。痛みどめも普段使っているものがそちらを優先して服用してください。
・薬の副作用が出たかもしれません
副作用やアレルギー反応をおさえる薬を術中に投与していますので、数日後から副作用を自覚することがあります。疑わしいと思ったら自己判断で中断して構いません。次回外来受診時に相談してください。息苦しくなる、口の中が腫れるなど、気道に関係する副作用が出た場合は、疑わしい薬は全て中止し、なるべく早く連絡してください。緊急連絡先は術前検査日の説明のときにおしらせします。
・術後の点鼻液は何のためですか?
緊急用に渡しています。鼻詰まりがひどくて寝れない、鼻血がポタポタ出てくるときに使用してください。この点鼻液は鼻粘膜を収縮させる効果がありますが、長期間、頻回に使用すると薬剤性鼻炎という状態になりかえって粘膜の機能が落ちてきますので乱用は避けましょう。
・軟膏は何のためですか?
鼻不調時、鼻洗浄後、鼻出血時に使用します。
処方薬の説明書に付け方等記入していますので是非お読みください。
鼻毛のあたりにティッシュや綿棒、指先でつけます。軟膏は手前から奥に運ばれていきますので鼻毛より奥につける必要はありません。保湿効果、傷口の保護、外部からの汚れを付着させるフィルターの役割があります。鼻洗浄をやめるタイミング、または軟膏が無くなったら終了です。追加を希望する人は、 同様の市販薬、ワセリン軟膏、リップクリーム(シンプルなもの)で代用できます。
・サプリメントの開始はいつから?
術翌日から再開可能です。
4. 日常生活の再開時期について
術後2週間をすぎると出血のリスクが下がりますので安静解除の目安になります。ただし抗血栓薬を使用していた方は4週間が目安です。動いている時、興奮している時は出血を起こしにくく、家に帰って落ち着いた時、就寝時などリラックスした時に出血を起こすことが多いです。活動時の状態で出血しないかどうかの判断はできませんので安静期間は守りましょう。術後に出血がおきた人は、止血処置を行ってから追加で2週間安静が必要になります。
・鼻かみはいつから可能でしょうか?
術後最初の処置をうけた日の夕方から可能です。軽めにかんでください。鼻をねじるような動作は避けてください。
・食事について制限はありますか?
特に制限はありません。
・飲酒
アルコールは鼻粘膜の血流が増え、粘膜腫脹を起こします。普段は鼻閉として症状が出ますが術後は出血を起こします。術後2週を過ぎれば少量から飲んで、出血しないことを確認しながら慣らしてください。
・喫煙
不可です。広がった鼻腔・副鼻腔に有害物質が入りますので炎症の原因となり傷の治りに影響します。タバコと呼ばれる他の種類も同様です。
・シャワー、入浴はいつから?
シャワーは術翌日から可能です。入浴(湯船につかる)は術後1週間は避けてください。急激な体温・気温の変化で出血することがあります。
・仕事、家事・運動
最低限の家事や事務的な仕事は、無理のない程度なら可能です。体力維持の運動は不可です。本来の活動内容は、術後2週間過ぎれば再開してください。術後安静のため体が鈍っていますので、少しずつ再開しましょう。
・学業・部活動
術後2週間経過するまでは学校は送り迎えで行きます。座学は問題ないですが運動を伴う活動、大声を出す活動は避けてください。2週間過ぎれば再開して構いませんが、体が鈍っていますので少しずつ再開しましょう。
・飛行機での移動はいつから?
鼻が詰まった状態や副鼻腔炎の状態に気圧の変化が加わると、ひどい頭痛を生じることがあります。できれば4週間、最低でも2週間は空けたほうが無難です。
5.通院について
・術後の処置はどのようにスケジュールになりますか?
手術翌日に初回の処置があります。その後は1週間を目処に受診してもらいます。鼻炎・鼻中隔の手術だけ受けた方はこれで終了になることもあります。副鼻腔炎の手術を受けた方は、さらに1~2週毎に数回受診して、この時点で予定処置は終了です。通院終了の判断は、最終評価の検査(CTや鼻腔通気度)を術後3ヶ月から半年後を行い判断します。継続して投薬や定期通院が必要になる人もいます。
・通院は紹介元に行ってもいいですか?
紹介元で処置を行い、定期的な診察を当科で行う方法もあります。指定難病の方は医療機関が限定されますのでご注意ください。