これまでの科学論文
主著16報;共著20報
39.Nakakuni, M. et al., 物質循環について.執筆中
38.Nakakuni, M. et al., 瀬戸内海の海ごみについて:レビュー.Under Review
37.Nakakuni, M. et al., 微細藻類について.Under Review
36.Wu Z, Guo X, Shi J, Ding X, Nakakuni M, Tada K (Preprint) Seasonal variations and controlling factors of nitrogen fluxes at the sediment-water interface in a semi-enclosed inland sea. EGUsphere 2025, 1-37.
Pending35.Tong-U-Dom S, Morimoto A, Guo X, Leng Q, Yoshie N, Tada K, Ichimi K, Yamaguchi H, Nakakuni M., 2025. Lower trophic ecosystem dynamics in the eastern part of the Seto Inland Sea and their response to changes in nutrient supply from the rivers. Progress in Oceanography. 239, 103565. [LINK (open access)]
この論文では、川から供給される栄養分の変化に対して、生態系や沿岸の環境がどのように反応するかを理解することを目指しました。この地域の現象を再現するために、複雑な生物地球化学モデルと組み合わせた、包括的な三次元物理モデルを開発しました。調査の結果、大阪湾と播磨灘では、栄養塩の動き、植物プランクトンの群集構造(どんな種類がいるか)、そして植物プランクトンの量に大きな違いがあることがわかりました。大阪湾では栄養塩濃度が高く、植物プランクトンの量も多くなっています。主に大型の微小植物プランクトンが優勢です。一方、播磨灘では栄養塩の濃度が低く、植物プランクトンの量も少なく、ナノ植物プランクトン(より小さいタイプ)が主流です。川からの栄養分の流入を増やす実験を行ったところ、大阪湾と播磨灘の両方で、全域において栄養塩濃度が大幅に上昇しました。しかし、植物プランクトンの量が著しく増加したのは、沿岸近くの地域だけでした。さらに、植物プランクトンの群集構造の反応は、2つの地域で異なっていました。具体的には、播磨灘ではナノ植物プランクトンが主に大型の微小植物プランクトンへと変化しましたが、大阪湾では大型の微小植物プランクトンが引き続き優勢でした。このことは、栄養分の利用可能性が、これらの地域の植物プランクトン群集の構造に影響を与える上で、重要な役割を果たしていることを強調しています。栄養分の利用可能性と植物プランクトンの動態の相互作用は、これらの沿岸生態系を理解し、効果的に管理するための鍵となる要因です。34.Nakakuni, M. Ichimi K., Lirdwitayaprasit T., Meksumpun S., Tada K., 2025. Carbon, nitrogen, and chlorophyll-a content of green Noctiluca scintillans in the Upper Gulf of Thailand. Oceanologia 67, 7308. [LINK (open access)]
ヤコウチュウ Noctiluca scintillans は沿岸域でしばしば大発生(赤潮)し、生態系や漁業、観光に影響を及ぼすことで知られています。本研究は、とくに細胞内に共生藻をもつ“緑色型”に着目し、タイ湾上部西部海域で採取した野外個体を用いて、細胞あたりの炭素・窒素・クロロフィルaの含有量を直接測定しました。その結果、緑色ヤコウチュウは同程度の大きさの赤色型に比べて炭素に富む傾向を有することが明らかとなりました。これは、緑型の中にいる共生藻由来の炭素に起因するものと推察されます。あわせて、表層のクロロフィルaプールに対する緑色ヤコウチュウの寄与が無視できない場面も確認され、一次生産—再鉱化—酸素消費をつなぐ物質循環モデルの精緻化に資する基盤情報となりました。33.裏住 隼矢,中國 正寿,吉田 誠,山口 一岩,一見 和彦,多田 邦尚.受理.降水中の栄養塩濃度とその沿岸海域への負荷.沿岸海洋研究.
32.真嵜 寛太, 石塚 正秀, 齋藤 祥吾, 上村 忍, 西岡 彩美, 中國 正寿, 一見 和彦, 多田 邦尚, 2025.高松市東部の河川・海岸・海域におけるマイクロプラスチックとマクロ漂流ごみの実態調査.土木学会論文集.81.
31.渡邊 翔,中國 正寿,山口 一岩,一見 和彦,Tong-U-Dom Siraporn,森本 昭彦,石塚 正秀,多田 邦尚. Accepted. 瀬戸内海・播磨灘におけるヤコウチュウ赤潮の長期変動と水平分布. 沿岸海洋研究.
瀬戸内海の生態系において、ヤコウチュウは重要な生物です。このプランクトンは、植物プランクトンを餌とする一次消費者で、時として海面を赤く染める「赤潮」を引き起こします。本研究では、播磨灘での43年間(1979-2021年)の赤潮情報をまとめ、ヤコウチュウ赤潮の発生海域の変化を調べました。その結果、ヤコウチュウの赤潮は1980年代から継続的に減少し、特に2014年以降は著しく低下していました。かつては春から初夏(4-6月)と秋(10-11月)の2回ピークがありましたが、1990年代以降は秋のヤコウチュウ赤潮がほぼ消失。さらに近年は春から初夏の発生も減少しています。重要な点として、小豆島東部から香川県東部沿岸にかけての海域が「ホットスポット」として確認され、ここでは海水の流れや水温分布の特徴が、赤潮の発生に影響を与えていることが分かってきました。これらのデータは今も変化し続ける瀬戸内海の環境を示す重要な指標となります。30.Nakakuni M., Nishida M., Nishibata R., Kishimoto K., Yamaguchi H., Ichimi K., Ishizuka M., Suenaga Y., Tada K., 2024. Convergence zones of coastal waters as hotspots for floating microplastic accumulation. Marine Pollution Bulletin. 206, 116691. (IF: 5.3). [LINK (open access)]
これまで十分に行われていなかった高松沖の潮目(収束域)と一般海域(非収束域もしくは非潮目)におけるマイクロプラスチック(MP)密度の比較・定量化に成功しました。その結果、潮目のMP密度は一般海域と比べて40倍から300倍程度高く、最大で18.8個/m³に達することがわかりました。この値は、MPのホットスポットとされる東京湾と同等であり、潮目が局所的なMPホットスポットになり得ることを示しています。潮目と一般海域で最も多く見られたMPは発泡スチロールで、その密度は夏場に高くなる傾向がありました。潮目には流れ藻が集まり、そこには多くの様々な稚魚が2ヶ月から4ヶ月の間、隠れ棲むように生活しています。このように潮目では、生物量が豊富でMPも多く存在するため、今後の沿岸域MPモニタリングでは潮目に着目する必要があると考えられます。[詳細は,大学のプレスリリースにて]29.Nakakuni M., Yamaguchi H., Ichimi, K., Tada., K., 2024. Seasonal variation in pore water nutrients and their fluxes from the bottom sediments in Harima Nada, Seto Inland Sea. Journal of Oceanography. 80, 219–232. (IF: 2.3). [LINK]
栄養塩(溶けている窒素やリンなど)は,植物プランクトンの成長に不可欠。そのため、沿岸海洋における栄養塩の動態を十分に理解することが重要。瀬戸内海には、「陸域からの流入」、「外洋からの移流」、そして「底泥からの溶出」の栄養塩の主要な供給源があると考えられいる。一方で、これらの供給源のうち、底泥からの溶出に関する情報は観測頻度が低いため限られていた。そこで本研究では、播磨灘の観測点(水深43m)で2年間にわたり毎月サンプリングを行い、0〜12cmの間隙水中の栄養塩濃度を測定し、底泥中の栄養塩濃度の変動と溶出フラックス(泥からの栄養塩の供給速度)を明らかにすることを試みた。その結果、水柱への1日あたりの栄養塩供給量は、溶存無機窒素(DIN)が8.7 ± 4.6 mg-N/m2/day、DIPが2.5 ± 3.0 mg-P/m2/day、DSiが65.1 ± 36.7 mg-Si/m2/dayであった。底泥からのDINとDIPの供給量を播磨灘への陸域負荷量と比較したところ、DINについては河川負荷量と同程度かそのおよそ2倍、DIPについては陸域負荷量の10倍以上と推定された。これらのことから、本研究の結果は播磨灘における底泥からの栄養塩動態とその管理に関する重要な基礎情報を提供したといえる。ただし、底質は、DINやDIPの供給源ではあるが、新たなNやPの供給源とはならないことに留意。28.江川 裕基, 小島 友佳, 谷本 早紀, 石山 翔午, 中國 正寿, 2024. 小豆島を舞台とした海洋ごみ問題解決への取り組み:クリーンオーシャンアンサンブル. 総合誌「瀬戸内海」. 87, pp–pp.
27.Nakakuni M., Obo T., Koomklang J., Yamaguchi H., Ichimi K., Tada K., 2024. Impact of previous aquaculture (yellowtail), as persistent phosphorus, remains for decades in deeper sediments. Aquaculture International. 32, 1735–1747. (IF: 2.9). [LINK]
香川県は、日本で初めてハマチ養殖を始めた地である.ハマチなどの魚類養殖では、生餌やモイストペレットなど、小魚を主体とした餌を利用する.しかしながら、投餌された内の半分以上は、魚の成長に寄与せず、環境に負荷を与える.餌の中には、魚の骨や鱗中に主に含まれる難分解性とカルシウム型リンが多い.これらは、他のリン分画に比べると長期的に保存されやすいことから、底質に残りやすい.本研究では、この残りやすい性質を逆に利用して,これらのリンを過去の養殖活動の指標として,堆積物中に含まれる過去から現在にかけてのこれらのリンの動態を追った.すると,確かに,高い難分解性とカルシウム結合態リンは,養殖が実施されいた期間に相当する深度においてのみ確認された.そのため,これらの形態のリンは,過去の底質への養殖場の影響を計る指標として有用だと期待される.26.宮川 昌志, 松岡 聡, 中國 正寿, 末永 慶寛, 多田 邦尚, 2023. 香川方式施肥パイプによるノリ養殖漁場への新施肥技術. 日本水産学会誌. 89 (6), 537-545 [LINK]
近年,瀬戸内海では,海水中の栄養塩の低下によって,ノリが色落ちする現象が問題となっている.ノリの色落ちとは,ノリの成長に必要な栄養素である海水に溶けた窒素やリン濃度が低下することによって,ノリの成長が滞り,ノリ本来の黒々しい色がつかなくなる現象を指す.ノリの色落ちが発生すると,ノリの単価が低くなり,養殖場の経営が厳しくなる.そこで本研究では,ノリの色落ち対策として,施肥を行いノリの成長を促進させることを試みた.ノリへの施肥と一言にいっても単純ではない.ノリの養殖は,沿岸域にノリ網を張って実施されるが,そのような場所に施肥を行っても,速やかに栄養塩が拡散するため,極めて一時的な効果に過ぎない.そこで,栄養塩が流出しないようにノリ養殖場内に,施肥用のパイプを這わせて,徐々栄養塩(窒素源として塩化アンモニウム)が溶出するように工夫をした.その結果,ノリの色調は,対象区よりも黒みを度が高くなった.さらには,便益/コストで見た費用対効果は,便益の方が上回り,採算が見込める技術であることが示された.この技術は,今後,ノリ養殖の新しい手法ととして注目されると期待できる.寒い中でのサンプリング,宮川さんとあったかいお茶を飲んだ.25.Nakakuni M., Kuwahara V., Yamamoto S., 2023. Organic compounds in aquatic sediments analyzed by pyrolysis–GC–MS with tetramethylammonium hydroxide (TMAH) and alkaline CuO oxidation methods. Journal of Analytical and Applied Pyrolysis. 172, 106016 (IF: 6.437). [LINK]
簡便な有機化合物の分析方法として,水酸化テトラメチルアンモニウム試薬(通称,TMAH試薬)を用いた熱化学分解法がある.たくさん分析する必要のある堆積物試料などに応用すれば,従来法に比べ,同時間の労力でよりもたくさんデータをとれる.この方法は,加熱して分析を行うが,堆積物試料に対する加熱温度の影響は,あまり評価されていない.そこで,本研究では,315から670℃で反応させて,その影響を見積もった.その結果,いろんな化合物を分析するには,低温(315,358℃)がよくて,リグニンなどの特定の化合物では,高温で高い収量を得られることがわかった.ただし,高すぎると濃度計算に用いる内部標準試薬も分解される可能性があるため注意が必要だ.アルカリ酸化銅分解法との比較では,基本的に,よい相関関係を得ていたが,リグニンのシンナミル類はTMAH法の方が圧倒的に高濃度の収量が得られ,クチン酸はアルカリ酸化銅分解法の方が高い収量が得られる傾向が見出された.この結果を通して,熱化学分解装置を用いたTMAH法は,315℃のパイロホイルを用いて行うのがおすすめだ.投稿から受理まで,いくつか難所を経験した一報だった.24.中國 正寿,一見 和彦,多田 邦尚,山本修一, 2023. 瀬戸内海で発生した渦鞭毛藻・Cochlodinium polykrikoidesによる赤潮中4-メチルステロールのGC–MS分析:メチルエーテル誘導体化. Researches in Organic Geochemistry. 39, 35-46. [LINK]
渦鞭毛藻は,他の微細藻類が持たない特殊なステロール類:4メチルステロールを持っている.ステロール類の分析には,ガスクロマトグラフィー質量分析器が有用であるが,同定に用いるスペクトルの解釈は難しい.本稿では,渦鞭毛藻の1種であるCochlodinium polykrikoidesによって形成された赤潮試料に含まれていたX種の4メチルステロールのスペクトル解釈(メチル化)を紹介した.同定の際の参考に.23.中國 正寿,山口 一岩,一見 和彦,多田 邦尚, 2023. 播磨灘における海底泥からの栄養塩溶出の四季変動:栄養塩供給源として何割を占めるのか?. 総合誌「瀬戸内海」.85, 34-37. [LINK]
2022年8月に開催された特定非営利活動法人・瀬戸内海研究会議主催の瀬戸内海研究フォーラム in 和歌山において「播磨灘における海底泥からの栄養塩溶出の四季変動:栄養塩供給源として何割を占めるのか?」との題のもと発表した.この時の発表は,嬉しくも,最優秀賞として表彰していただいた.それを受け,総合誌「瀬戸内海」への寄稿の依頼を受けた.本稿は,その時の発表のExtended Abstractとして、研究の要点を述べたものだ.22.Tada K., Nakakuni M., Yamaguchi H., Ichimi K., 2023. Changes in nutrients and their effects on fisheries after the introduction of land-based nutrient loading regulations in the Seto Inland Sea since 1973: A review. La mer. 61, 175-187. [----]
瀬戸内海が経験してきたこれまでの歴史とこれらかの在り方を栄養塩をキーワードにまとめられたショートレビュー論文.豊かな海を目指すためには,どのような課題があるのか...21.Tada K., Nakakuni M., Koomklang J., Yamaguchi H., Ichimi K., 2023. The impact of fish farming on phosphorus loading of surface sediment in coastal complex aquaculture. Fisheries Science. 89, 375–386 (IF: 2.148). [LINK]
香川県の志度湾では,ハマチ,雑魚,カキなど様々な養殖が行われている.養殖場の直下には,餌の食べ残しや糞などが溜まりやすい.ハマチなどの養殖に用いられる餌は,小魚のミンチから作られており,餌には,多くのリンが含まれている.特に,骨やうろこに多く含まれるカルシウム態リンや難分解性リンは,生物利用されづらいため,底質に残りやすい性質を持つ.本研究では,志度湾の表層堆積物中に含まれる分画リンの分布から,湾内の海域の利用形態に応じて,どのようなリン組成の特徴があるのかを調べた.その結果,ハマチなどの大型魚類の養殖場直下では,そうではない場所と比べて,カルシウム型と難分解性リンの割合が高い傾向が見られた.一方で,カキ養殖直下では,それらのリンの割合は,高くはなかった.これらの結果から,確かに小魚を餌とする養殖場直下の底質には,これらのリンが溜まりやすいことが明らかとなり,同時に,堆積物中の分画態のリン分析がハマチ養殖などの魚類を餌とした養殖の底質への影響をたどるトレーサーとなることを示しとた.20.Nakakuni M., Yamamoto S., Yamaguchi H., Ichimi K., Tada K., 2022.Molecular composition of particulate organic matter in surface waters of the Harima-Nada, Seto Inland Sea, Japan. Regional Studies in Marine Science (IF: 2.166). [LINK]
沿岸海域には,現場で生産(内部生産)されたり,河川を介して陸から運ばれてきたり,と様々な有機物が入り混じる.有機化合物は,生物によって,その構造に違いがあるため,どのような起源の有機物が,対象の海域を漂っているかを把握するための指標として,とても有用だ.本研究では,瀬戸内海の播磨灘の表層海水の懸濁粒子中の有機物の化合物組成を調べ,播磨灘の有機物の組成と分布特徴を捉えることを試みた.その結果,多くの有機物組成は,微細藻類に由来するもので構成されていた.さらに,微細藻類間で異なるステロール組成を利用して,各表層水における渦鞭毛藻と珪藻の割合を求めてみた.この推定結果は,渦鞭毛藻による赤潮が発生していた試料採取時の海域の特徴をしっかりととらえていた.本研究は,播磨灘における脂質組成を調べた初めての研究となる(おそらく,瀬戸内海でも初の知見).今後,有機物組成を利用した炭素起源の解釈に役立つものと期待される.19.中國 正寿,山本 修一,山口 一岩,一見 和彦,多田 邦尚, 2022.瀬戸内海・屋島湾における表層海水中の脂質組成の分布と特徴: ステロール組成から推察された微細藻類の群集組成.沿岸海洋研究.60(1), 1–16. [LINK]
源平合戦は,”屋島の戦い”.あの那須与一が,平家の立てた扇の的を矢で打ち抜いた場所.瀬戸内海は,屋島湾.本研究では,屋島湾の湾奥から湾口部にかけての合計6地点の表層海水中の懸濁態有機物組成を熱化学分解法を用いて調べた.その結果,この日の屋島湾の粒子組成は,ほとんどが植物プランクトン由来で,湾奥部であっても陸起源の有機物は,マイナーであることが明らかとなった.さらには,潮汐流の影響を受けやすい海域(湾口部)と受けづらい海域(湾奥)では,ステロール組成が異なり,湾奥では渦鞭毛層に由来するジノステロールが,湾口部では底生珪藻に多くみられるブラシカステロールが多く見出された.これは,水塊構造の違いによる植物プランクトン組成の違いを反映している.さらに,本論では,主に用いれらる有機バイオマーカー(ステロール以外にも,脂肪酸,リグニンフェノールを取り扱っている)の利用方法とその注意点についても,できうる限り詳しく述べている.きっと,他の海域へのアプライ時にも参考になると思う.18.Nakakuni M., Loassachan N., Ichimi K., Nagao S., Tada K., 2022. Sedimentary biophilic elements in core sediment as records of coastal eutrophication in the Seto Inland Sea, Japan. Regional Studies in Marine Science (IF: 2.166). 50, 102093. [LINK]
瀬戸内海は,1970年代に歴史的な富栄養化を経験し,一時は,”死の海”と呼ばれるまでとなった.その後,いわゆる「瀬戸内法」によって陸域から排出される全リンと全窒素の規制がなされた.それにより,瀬戸内は”美しい海”へと戻った.一方で,近年は,栄養塩低下が低下し,漁獲が下がってきている.では,その基礎を担う植物プランクトンの変動はどうだったのか?本研究では,瀬戸内海の2か所の堆積物中の炭素,窒素,リン,生物起源ケイ素の深度プロファイルから,過去から現在にかけての植物プランクトンの変動を推察した.結果,これらの堆積物は,有機物と生物起源ケイ素の相関がとても高く(決定係数で~0.9),これらの海域の主要な一次生産者は珪藻であることが示唆された.また,沖合の堆積物からは,富栄養化した時代であっても,一次生産者の量は,現在と比べて大きく変わっていないことが示唆され,瀬戸内海一様に富栄養化した時代に一次生産が高くなったわけではないことが考えられた.このような結果は,西嶋のモデルでも見られていた.一方で,養殖場の近い他の採泥地点では,富栄養化した時代に20%程度の一次生産者の増加が確認され,富栄養化した時代は確かに植物プランクトンがリッチな海域もあったことも堆積物からわかった.これらの結果は,富栄養化した時代であっても,その影響は大きく偏りがあったことを示唆する.問題点としては,年代は他の堆積速度とシストの検出層でフィットされていることと,水柱の分解度の違いは考慮していない点が挙げられるが,他の研究で得られたモデルによる過去からの変動の推定結果とは,コンセンサスがとれる.17.多田 邦尚,中國 正寿,山口 一岩,岸本 浩二,一見和彦, 2021.魚類養殖場における堆積物中への有機物負荷の評価.日本水産学会誌.87(6), 672–678 [LINK]
養殖(ハマチ養殖など)は,海洋環境にどのような変化をもたらすのか?本研究では,①現在も養殖が行われている海域,②過去に養殖が行われていた海域,③これまで養殖が行われていなかった海域の3つの地点からコア試料を得て,堆積物に含まれる炭素,窒素,リンの含有率を調べた.その結果,現在養殖が行われている底質中のリン濃度は,養殖が行われなかった海域の底質よりも高い傾向が見られた.さらには,過去養殖が行われていた底質は,養殖が行われた時代に相当する深度でのみ高い濃度を示した.これは,養殖に用いられる餌(モイストペレット)に含まれるリンが,魚類の成長に貢献せずに,底質へ蓄積した結果である.過去の堆積物にも,養殖場直下特有の高いリン濃度の層が見られたことは,新しい発見だった.どんな形態のリンが多いかが気になるところ.16.Nakakuni, M., Watanabe, K., Kaminaka, K., Mizuno, Y., Takehara, K., Kuwae, T., Yamamoto, S., 2021. Seagrass contributes substantially to the sedimentary lignin pool in an estuarine seagrass meadow. Science of the Total Environment (IF: 10.753 ) [LINK].
レビュアー人数最多.藻場や植物プランクトンなどによって吸収され海洋に蓄積される炭素を”ブルーカーボン”と呼ぶ.沿岸生態系では,陸からの流入・植物プランクトン・アマモなどの自生性植物など様々な炭素ソースが存在する.アマモは,ブルーカーボンの蓄積に大きな役割を果たしていると考えられているが,どれだけ寄与しているのかの正確な見積もりが欲しい.特に,植物の細胞壁を構成する化合物の1つであるリグニンは,難分解で長期的に保存され得ることから,実質的なブルーカーボンのソースではないかと推測されている.本研究では,リグニンを中心とした有機化合物を使って,アマモの堆積物への有機化合物の寄与率を求めてみた.結果,最大で約60%のリグニンがアマモに由来しており,藻場は,実質的なブルーカーボンの貢献者であることを示すことができた.これまでブルーカーボンの推定には,安定同位体比やeDNAでの推定が主であったが,本研究は,”マルチな有機バイオマーカーによる推定”という新たなフロンティアを提供している.ただし,メソドロジーをより確実にしていくには,より多くの知見が必要だろう.15.Farahin, A.W., Natrah, I., Nagao, N., Yusoff, F.M., Shariff, M., Banerjee, S., Katayama, T., Nakakuni, M., Koyama, M., Nakasaki, K., Toda, T., 2021. Tolerance of Tetraselmis tetrathele to High Ammonium Nitrogen and Its Effect on Growth Rate, Carotenoid, and Fatty Acids Productivity. Frontiers in Bioengineering and Biotechnology 9 [LINK].
14.Pantami, H.A., Bustamam, M.S.A., Lee, S.Y., Ismail, I.S., Faudzi, S.M.M., Nakakuni, M., Shaari, K., 2020. Comprehensive GCMS and LCMS/MS metabolite profiling of Chlorella vulgaris. Marine Drugs 18(7), 367 [LINK].
13.Nakakuni, M., Takehara, K., Swart, P.K., Yamamoto, S., 2020. The contribution of prokaryotes and terrestrial plants to Maldives inter-atoll sapropels: evidence from organic biomarkers. Organic Geochemistry 104039. [LINK]
モルディブ沖で見つかった超高濃度な高有機炭素量を持った海洋堆積物.この有機物は,一体何で構成されているのか?この研究では,その有機物の構成を熱化学分解法を用いて調べた.結果,とても高い濃度のホパノイドを検出.ホパノイドというのは,バクテリアなどの原核生物がもつ特徴的な化合物.したがって,この超高有機物層は,原核生物によって作られたことが示された.植物由来の化合物から,超高有機物層が形成された当時の周辺の植生にも着目している.12.Nakakuni, M., Yamasaki, Y., Yoshitake, N., Takehara, K., Yamamoto, S., 2019. Methyl ether-derivatized sterols and coprostanol produced via thermochemolysis using tetramethylammonium hydroxide (TMAH). Molecules 24, 4040. [LINK]
11.Lanci, L., Zanella, E., Jovane, L., Galeotti, S., Alonso-García, M., Alvarez-Zarikian, C.A., Bejugam, N.N., Betzler, C., Bialik, O.M., Blättler, C.L., Eberli, G.P., Guo, J.A., Haffen, S., Horozal, S., Inoue, M., Kroon, D., Laya, J.C., Hui Mee, A.L., Lüdmann, T., Nakakuni, M., Niino, K., Petruny, L.M., Pratiwi, S.D., Reijmer, J.J.G., Reolid, J., Slagle, A.L., Sloss, C.R., Su, X., Swart, P.K., Wright, J.D., Yao, Z., Young, J.R., 2019. Dataset of characteristic remanent magnetization and magnetic properties of early Pliocene sediments from IODP Site U1467 (Maldives platform). Data in Brief, 104666. [LINK]
10.Swart, P.K., Blättler, C.L., Nakakuni, M., Mackenzie, G.J., Betzler, C., Eberli, G.P., Reolid, J., Alonso-García, M., Slagle, A.L., Wright, J.D., Kroon, D., Reijmer, J.J.G., Hui Mee, A.L., Young, J.R., Alvarez-Zarikian, C.A., Bialik, O.M., Guo, J.A., Haffen, S., Horozal, S., Inoue, M., Jovane, L., Lanci, L., Laya, J.C., Lüdmann, T., Nagender Nath, B., Niino, K., Petruny, L.M., Pratiwi, S.D., Su, X., Sloss, C.R., Yao, Z., 2019. Cyclic anoxia and organic rich carbonate sediments within a drowned carbonate platform linked to Antarctic ice volume changes: Late Oligocene-early Miocene Maldives. Earth and Planetary Science Letters 521, 1–13. [LINK]
国際海洋掘削 第359次航海にて規格外の高有機炭素量をもった海底堆積物が見出された.通常の海洋堆積物の有機炭素量は,1%程度なのに,この超高有機物層は,なんと30%近く.色は真っ黒.なぜこのような堆積物が形成されたのか?この論文では,その謎に迫った.9.Lanci, L., Zanella, E., Jovane, L., Galeotti, S., Alonso-García, M., Alvarez-Zarikian, C.A., Betzler, C., Bialik, O.M., Blättler, C.L., Eberli, G.P., Guo, J.A., Haffen, S., Horozal, S., Inoue, M., Kroon, D., Laya, J.C., Mee, A.L.H., Lüdmann, T., Nakakuni, M., Bejugam, N.N., Niino, K., Petruny, L.M., Pratiwi, S.D., Reijmer, J.J.G., Reolid, J., Slagle, A.L., Sloss, C.R., Su, X., Swart, P.K., Wright, J.D., Yao, Z., Young, J.R., 2019. Magnetic properties of early Pliocene sediments from IODP Site U1467 (Maldives platform) reveal changes in the monsoon system. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology 533, 109283. [LINK]
8.Nakakuni, M., Kitano, J., Uemura, H., Yamamoto, S., 2018. Modern sediment records of stanol to sterol ratios in Lake Suigetsu, Japan: An indicator of variable lacustrine redox conditions. Organic Geochemistry 119, 59–71. [LINK]
7.Lüdmann, T., Betzler, C., Eberli, G.P., Reolid, J., Reijmer, J.J.G., Sloss, C.R., Bialik, O.M., Alvarez-Zarikian, C.A., Alonso-García, M., Blättler, C.L., Guo, J.A., Haffen, S., Horozal, S., Inoue, M., Jovane, L., Kroon, D., Lanci, L., Laya, J.C., Mee, A.L.H., Nakakuni, M., Nath, B.N., Niino, K., Petruny, L.M., Pratiwi, S.D., Slagle, A.L., Su, X., Swart, P.K., Wright, J.D., Yao, Z., Young, J.R., 2018. Carbonate delta drift: A new sediment drift type. Marine Geology 401, 98–111. [LINK]
6.Kunkelova, T., Jung, S.J.A., de Leau, E.S., Odling, N., Thomas, A.L., Betzler, C., Eberli, G.P., Alvarez-Zarikian, C.A., Alonso-García, M., Bialik, O.M., Blättler, C.L., Guo, J.A., Haffen, S., Horozal, S., Mee, A.L.H., Inoue, M., Jovane, L., Lanci, L., Laya, J.C., Lüdmann, T., Bejugam, N.N., Nakakuni, M., Niino, K., Petruny, L.M., Pratiwi, S.D., Reijmer, J.J.G., Reolid, J., Slagle, A.L., Sloss, C.R., Su, X., Swart, P.K., Wright, J.D., Yao, Z., Young, J.R., Lindhorst, S., Stainbank, S., Rueggeberg, A., Spezzaferri, S., Carrasqueira, I., Hu, S., Kroon, D., 2018. A two million year record of low-latitude aridity linked to continental weathering from the Maldives. Progress in Earth and Planetary Science 5, 86. [LINK]
5.Betzler, C., Eberli, G.P., Lüdmann, T., Reolid, J., Kroon, D., Reijmer, J.J.G., Swart, P.K., Wright, J., Young, J.R., Alvarez-Zarikian, C., Alonso-García, M., Bialik, O.M., Blättler, C.L., Guo, J.A., Haffen, S., Horozal, S., Inoue, M., Jovane, L., Lanci, L., Laya, J.C., Hui Mee, A.L., Nakakuni, M., Nath, B.N., Niino, K., Petruny, L.M., Pratiwi, S.D., Slagle, A.L., Sloss, C.R., Su, X., Yao, Z., 2018. Refinement of Miocene sea level and monsoon events from the sedimentary archive of the Maldives (Indian Ocean). Progress in Earth and Planetary Science 5, 5. [LINK]
4.Nakakuni, M., Takehara, K., Nakatomi, N., Higuchi, J., Yamane, M., Yamamoto, S., 2017. Sterol and stanol compositions in sediments from the Bungaku-no-ike pond, Tokyo, Japan: Examination of stanol sources. Researches in Organic Geochemistry 33, 15–24. [LINK]
3.Nakakuni, M., Dairiki, C., Kaur, G., Yamamoto, S., 2017. Stanol to sterol ratios in late Quaternary sediments from southern California: An indicator for continuous variability of the oxygen minimum zone. Organic Geochemistry 111, 126–135. [LINK]
2.Betzler, C., Eberli, G.P., Kroon, D., Wright, J.D., Swart, P.K., Nath, B.N., Alvarez-Zarikian, C.A., Alonso-García, M., Bialik, O.M., Blättler, C.L., Guo, J.A., Haffen, S., Horozal, S., Inoue, M., Jovane, L., Lanci, L., Laya, J.C., Mee, A.L.H., Lüdmann, T., Nakakuni, M., Niino, K., Petruny, L.M., Pratiwi, S.D., Reijmer, J.J.G., Reolid, J., Slagle, A.L., Sloss, C.R., Su, X., Yao, Z., Young, J.R., 2016. The abrupt onset of the modern South Asian Monsoon winds. Scientific Reports 6, 29838. [LINK]
1.山本 修一, 大力 千恵子, 島田 学, 中國 正寿 (2015). 海洋堆積物中ステロールのGC/MS 分析:メチルエーテル誘導体化. Researches in Organic Geochemistry 31, 69–86. [LINK]
これまでの研究費
○簡易型プランクトン画像撮影装置を用いた瀬戸内海のマイクロプランクトン分析 (2025年4月-2028年3月)
令和7年度 瀬戸内海の環境保全・創造に係る研究助成(代表:山本 昌幸)
☆季節変化を伴う牡蠣と微細藻類間における必須脂肪酸組成の関係性 (2022年4月-2023年3月)
2022 年度 国際エメックスセンター若手研究者活動支援制度助成金(代表:中國 正寿)
☆堆積物から読み取る播磨灘南部の富栄養化史 (2022年4月-2023年3月)
2022 年度 環日本海域環境研究センター共同研究(代表:中國 正寿)
☆有機地球化学的アプローチからみたカキ養殖場の物質循環(2021年4月-2022年3月)
2021年度 国際エメックスセンター若手研究者活動支援制度助成金(代表:中國 正寿)
☆堆積物記録から読み取る瀬戸内海の富栄養化史(2021年4月-2022年3月)
2021年度 愛媛大学沿岸環境科学研究センター共同研究(代表:中國 正寿)
○播磨灘を例とした瀬戸内海の栄養塩管理のための物理―底質―低次生態系モデルの開発 (2020年4月-2023年3月)
環境省総合推進費(代表:森本昭彦)
○微細藻類-硝化菌固定化遮光ゲルによる窒素含有排水の低コスト処理:メキシコを例に(2020年4月-2024年3月)
国際共同研究強化(B)(代表:井田 旬一)
○窒素・リンドープ炭素量子ドット/ZnO複合光触媒の開発とフルオロキノロン類分解への応用(2020年4月-2022年3月)
創価大学国際共同研究(代表:井田 旬一)
☆マイクロプラスチックの熱分解-GC/MSによる分析法の確立 (2019年4月-2021年3月)
日本学術振興会 科学研究費補助金 若手研究 (代表:中國 正寿)
○ゲル担体を用いた微細藻類-硝化共生プロセスによる窒素含有廃水処理技術の開発(2019年4月-2021年3月)
創価大学次世代共同研究プロジェクト(代表:井田 旬一)
☆古環境解析のためのより簡便なステロール分析方法の確立と応用: TMAH熱化学分解法 (2019年4月-2020年3月)
日本科学協会 笹川科学研究助成 (代表:中國 正寿)
○モルジブ堆積物から読み解く新第三紀におけるモンスーンおよび環境変動(Exp. 359)
国立研究開発法人海洋研究開発機構 IODP乗船後研究委託業務 (代表:井上 麻夕里)