冬季には全土壌層が凍結する永久凍土帯でも、夏季には地表付近の土壌は融解します(活動層といいます)。活動層中にはそれ以深にある難透水層(永久凍土層)のおかげで、土壌水がトラップされ、降水量が少なくても比較的湿潤な状態が維持されます。年間で数百mmしか降水がないのに、広大な森林地帯が北東シベリアに広がるのは、この湿潤な活動層と難透水層の永久凍土が存在するおかげです。
私は、北海道大雪山やモンゴルにて凍土と水・生態環境に関わる研究を行ってきました。大雪山の永久凍土分布域には湧水が点在しますが、湧水の組成が季節の進行に伴いその組成が変容していくことから、湧水起源(天水・永久凍土融解水)を解明しました。モンゴル北部では北向き斜面のみに選択的に森林が発達していますが、これと地下の永久凍土層との水やエネルギー循環を観測しています。また乾燥気候下にあるモンゴルの草原には湧水が点在し、これらは遊牧民にとっての重要な生態資源となっています。近年、これら湧水の枯渇が顕在化し、これら湧水の過去から現在までの変遷と地下に潜在する永久凍土との対応を調べています。