テーマ:“通常でない”高校進学者をどのように計量的にとらえるか
報告者:中西啓喜(桃山学院大学教員)
会場:Zoomによる開催
※参加ご希望の方は、お問い合わせからお申し込みください。
以下、報告者からのコメントです。
※以下は、報告者からのコメントです。
本報告は、日本の通信制高校および定時制高校のような“通常でない”とされる高校進学者の実態を量的データから示すことを目的としている。
2023年度学校基本調査によれば、中学校卒業者に占める高校進学率は約98%であるが、全日制高校は約93%である。この差を「5ポイントもある」なのか「5ポイントしかない」ととらえるのかは認識による。しかし、この差が既存の社会学ないし教育社会学における「教育を通じた社会移動」の研究に対していくつかの課題を残してきた。
SSM調査をはじめ、大規模なサーベイ・データを用いた教育を通じた社会移動にかんする研究では、「出身社会階層→学力→高校ランク・タイプ→大学進学か否か→到達社会階層(初職ないし現職)」という因果モデルを示してきた。このモデル自体に大きな問題はないのだろう。しかし、通信制高校および定時制高校のような“通常でない”とされる高校進学者はこのモデルに含まれにくく、個別事例的研究が蓄積されてきた一方で、計量的にモデル化された研究は管見の限り見当たらない。
本報告で用いるのは、教育委員会による協力のもとで丹念に収集されたデータであり、これにより、(1)“通常でない”とされる高校進学者の実態を計量的にとらえつつ、(2)教室での集合自記式調査による教育調査の課題を検討してみたい。
キーワード:通信制高校および定時制高校、教育を通じた社会移動、集合自記式調査による教育調査
テーマ:児童養護施設からみる子どもの養育・教育問題
報告者:三品拓人
会場:Zoomによる開催
以下、報告者からのコメントです。
本報告では、児童養護施設をとりまく現状や社会的養護という制度について簡略に説明した上で、これまでの報告者の研究の知見を中心に「施設内部の日常生活の詳細について社会学的なフィールドワークによってどのようなことが分かるのか」を紹介する。そして、最後に子どもの「教育」、「養育」というテーマに焦点を当てた場合にどのような問題が存在するのかを提示する。
テーマ:『プラットフォーム資本主義を解読する』(水島一憲・ケイン樹里安・妹尾麻美・山本泰三編著、ナカニシヤ出版、2023)合評会
会場:Zoomによる開催
テーマ:規制緩和以降の日本における新設大学の定員充足状況
報告者:西田亜希子(神戸女学院大学等非常勤講師)
会場:Zoomによる開催
※以下は、報告者からのコメントです。
今の大学ってこんな風なんや~、と感じてもらえる会になればと思っている。固い話のようだが聞いてほしい。
日本の近年の教育改革は、新自由主義的な規制緩和政策が導いていると言える。これは中曽根総理の意向を受けて始まった内閣直属の臨時教育審議会(1984~87年)を契機にはじまったといえよう。その臨教審の中核的な発想は「教育の自由化」であった。その後、官邸主導でさまざまな提言がなされ、「個性重視の原則」と表現を変えながら進められていった。1987年に大学審議会が設置され、逐次答申方式で大学改革がずっと進められていった。1991年の大学設置基準の大綱化で教養教育が解体されたことがこれらの大学改革の中では注目されるが、その後、大学設置基準の一層の弾力化、そして設置認可の簡素化と、事前から事後チェックシステムへの重点の移動は、大学の新設の在り方を大きく変えた(合田 2019)。
2004年以降公開されている、「大学を作ってよろしい」と許可をおろす大学の設置認可にまつわる但し書きを読むと、正直なところこんなぎりぎりのラインでOKされるのか、と驚く。その中には株式会社立大学も含まれる。今回はそうして許可され、作られたここ20年の日本における新設大学の定員充足の状況を、所在する地方や、その沿革、授与される学位の種類や大学の設置に至る過程に着目して、その状況をみたい。
カッチカチのネタに思われそうだが、大学の空気を守りたいと思う者の、素朴な驚きと憤りをお伝えし、一緒に共有したい。
テーマ:学校給食における「包摂と排除」ー食マイノリティの視点から
報告者:山ノ内裕子(関西大学教員)
会場:立命館大学大阪梅田キャンパス(大阪富国生命ビル5階)第6教室
※対面+zoomのハイブリッド形式にて実施します。
◯以下は、報告者からのコメントです。
「食マイノリティ研究」の共同研究を開始してもうすぐ7年目に入ります。患者会での参与観察、ムスリムの保護者へのインタビュー、学校や保育園、行政でのヒアリングによって、食マイノリティの保護者たちの直面している状況や、学校給食の提供の現状について考察を行ってきました。すでに境界研やいくつかの学会で報告してきましたが、調べれば調べるほど、問題が複雑に絡み合っていることを痛感しています。
最終的には「学校給食において誰もが排除されずに多様性が尊重される合理的配慮の提供方法と、共生を可能とする条件」について何らかの答えを出したいと思っていますが、今回の報告では、これまで進めてきた研究の成果を皆さんと共有することによって、今後の研究のあり方について、アドバイスいただけたらと思います。
テーマ:「チーム学校」論議の批判的検討
報告者:土屋尚子(大阪芸術大学教員)
会場:立命館大学大阪梅田キャンパス(大阪富国生命ビル5階)第5教室
※いつもの第6教室ではなく、第5教室となっております。
※対面+zoomのハイブリッド形式にて実施します。zoomでもお気軽にご参加ください。
◯例会に先立って、13:30より、教育の境界研究会2024年総会を開催します。
会員の方は、総会からのご出席をお願いします。
◯以下は、報告者からのコメントです。
2015年12月21日に中央教育審議会より「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」が提出されました。この中では、「多様な専門性を持つ職員」の配置を進め、チームとしての連携・協働を進める学校づくりが提言され、「管理職のリーダーシップや校務の在り方、教職員の働き方」を見直していくとされています。
この「チーム学校」という言葉を初めて耳にした時から、ずっと違和感を覚えてきたのですが、その違和感の正体を未だにつかめないでいます。そもそも、自分が体育会系アレルギーであるため「チーム一丸となって・・」などというフレーズを連想させる言葉に拒絶反応が出てしまうというのが一番の要因であるとは思います。ただ、答申が公表されて以降、様々な「チーム学校」の教育実践が展開されてきている現在においても、関連の政策にどう向き合ってよいのかもわからないまま、良いとも悪いとも何も言えず、言語化できないモヤモヤ感だけをひきずっている状態です。
今回の例会では、そのモヤモヤ感を探るためには何をしたらよいでしょうか、と皆さんにお聞きしたくて、報告担当に立候補させていただきました。「チーム学校」について様々な観点からご意見をお聞かせいただければ幸いです。よろしくお願いします。
テーマ:通信制高校生から大学生になる――教育アスピレーションを維持する当事者の実践――
報告者:大久保遥(京都大学大学院院生)
会場:立命館大学大阪梅田キャンパス(大阪富国生命ビル5階)第6教室
※対面+zoomのハイブリッド形式にて実施します。zoomでもお気軽にご参加ください。
◯以下は、報告者からのコメントです。
本研究の目的は、通信制高校を経由して大学進学を果たした者が、教育アスピレーションを維持したままどのように大学生活に適応しているか、当事者の実践から検討する。通信制高校を経由する大学進学者とは、一度主流の学校から離脱し、その後教育アスピレーションを過熱させ、大学進学を果たした者たちである。この移行過程はオルタナティブトラック(内田 2017)と主張され、通信制高校サポート校が生徒の教育アスピレーションを再加熱させる機能を持つことが見い出されてきた。しかしながら既存研究は、周縁的な高校の生徒がいかにして大学進学を果たすかに意識を向けるあまり、大学進学後の生活には十分に焦点を当ててこなかった。
今回の報告では、当事者への聞き取り調査から得られたデータをもとに、通信制高校を経由してきた者がどのように大学生として過ごしていくか、その実践がいかにしてつくられたかについて生活史全体から再帰的に分析する。以上を踏まえ、今日の若者の移行過程において通信制高校を経由する意味を考察する。
アイディアを練り始めたばかりのものなので、ざっくばらんにご意見・ご感想などいただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。