研究概要

学問は科学的思考を促進させるものである。

欧米で実績がある STEM“Science、 Technology、 Engineering and Mathematics”教育における理論的支柱である K-12 科学 教育スタンダード(NRC、 2012)によれば,発問は科学的思考を促進させるものであると述べられています。探究活動の中で議論を深めながら,子ども達自身が新たな疑問を生じ,次の学習へとつなげる実践は大変意義深いものだと思います。

子ども達からの新たな疑問を次の学習へとつなげるために は,教師による効果的で質の高い発問が不可欠であり,それを 契機として育成される科学的高次思考が不可欠であると思います。

K-12 科学教育スタンダード(K-12)とは何か。

学習は、次の図に示すような領域コア概念、領域横断概念およびプラクティスの側面を持ちます。


これまで、小学校、中学校、高等学校で、入試や考査などの 刺激によって学習を行ってきました。「楽しかった」という感想 を持つことも多くありますが、それぞれの繋がりを意識した学 習になっていたかどうかは別問題でした。


しかし、K-12 では、断片的な概念を紡ぎながら新しい概念が 生成され、疑問が解決されるとともに、新たな疑問が生起さ れ、高い総合的概念を獲得する教育が述べられています。つまり、教師の立場からは『子ども達の「楽しかった」の先にある 知的好奇心』をどう捉えるかについて、検討する必要がありま す。

【参考】領域コア概念は自然科学に関する現象を説明するため に必要な基本的な概念であり、日常生活や社会生活に密接に関 連し複数学年に渡り緻密に構築されるようなものが望ましいと されている。領域横断概念は生徒が領域や学年を超えてコア概 念の意味を理解し結びつけることによって形成される体系的な 概念であり、それを育成するために数学的な領域が重要な役割 を果たす。「プラクティス」において体系づけられた領域横断概念が新しい疑問を促すように指導することにより、疑問の生 起、解決、新たな疑問の生起という持続的な学習サイクルが形 成されると期待される。

それでは、教師は何を検討すればよいのか。

探究からの新しい言い回しであるプラクティスにおける、STEM 教育の学習過程の文脈は、日本の新学習指導要領で述べられている探究過程を通した主体的・対話的で深い学びに通じ るものがあります。そのため、プラクティスに関する理論的解 明や実践的研究は大変意義深いと考えられます。

質の高い発問は、学習者の意識を学習内容に焦点化させ、表面的知識を乗り越え、高度な思考や深い理解へと向かわせるも のです(Walsh & Sattes、2016)。この観点で、私は、発問研 究を博士課程のテーマとして研究してきましたが、そこでも、 質の高い発問とは何か、という学術的問いに明快に答えらえる まで至らず、依然として不十分であったように思います。

ただ、K-12 のプラクティスにおける学習過程で必要不可欠と 考えられる効果的で質の高い発問という捉え方で研究内容を深 めていけば、質の高い発問とは何か、という研究課題の核心を なす学術的「問い」に答えられると考えています。そこで、次 の研究の問いを立てて、検討を重ねることにしました。


そもそもSTEMとは何か?

STEM とは、Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、 Mathematics(数学)の頭文字をとったものです。この STEM に基づいた教育には、大きくは3つの ステップがあると考えています。

Step1; 日常生活の中で種を見つける。

Step2; 様々なアプローチで種を育てる。

Step3; 花が咲く。(⇔この花は日々の努力による。)

参 考;花の方向をそろえる教育をすべきか、それぞれの方向を持つ花を育てる教育をすべきか。

この部分を詳細に述べると、k-12 では以下の手順を踏み、第 二から第八の段階は矛盾を生じた時点で前の段階に戻り反復的 に行うと述べられています。

第一段階 発問する・問題を定義する 第二段階 モデルを創る、使う

第三段階 調査を計画し実行する

第四段階 データを分析、解釈する

第五段階 数学を使い、数学的に考える

第六段階 説明を創る・解をデザインする

第七段階 証拠に基づいた議論に従事する

第八段階 情報を入手し、評価し、話し合う