本稿では、高校生が電卓の導き出した情報に対して認知的葛藤を通して、主体的な選択を迫られる教材の提案と、その実践結 果について報告する(白濱・山岡、2015)。
教材として、四則演算のみで表されるロジスティック写像 ※図1 を用いた。
ここに、αは、0≦ α ≦4、0≦ Xn ≦4、n は非負の整数である。
不安定固定点近傍の振る舞いを電卓で計算させるために、※図2 とした。
あるクラスで 10 桁の表示桁数の電卓を用いた計算結果を示す。13 人の生徒が 7 通りの 計算結果を示している。
このように、同じ計算結果を得ること はできなかった。
その理由は、このパラメータにおけるロジス ティック写像がカオス的な振る舞いをするからであるが、「楽し かった先にある知的好奇心」をくすぐられるような教材であることがわかる。
※図1
※図2
QUILT フレームワークに基づく発問フレームワークに依拠 した授業(理科、技術、数学)を実践している。そこでは、以 下の2つの教授方略("Puzzling picture"及び"Think-Pair- Share")を活用していきた。
(1)認知的葛藤を生起させるための"Puzzling picture" 発散的発問から始め、不可解な絵を活用しながら科学的知識 へと導くための収束的発問に至る教授方略を活用しています。
滝をのぼる水滴
発散的発問:これは何の写真でしょうか。
収束的発問:この現象を説明できますか。
三角フラスコの中の松かさ
発散的発問:これは何の写真でしょうか。
収束的発問:どうやって松かさ(まつぼっくり)を入れたでしょうか。
団子の並べ方に見られる結晶構造
発散的発問:これは何の写真でしょうか。
収束的発問:どちらの並べ方の方が、充填率が高いでしょうか。
(2) 議論を構築させるための"Think-Pair-Share" 認知的葛藤を生起させるための"Puzzling picture"を行った後で、実際に,実験を行います。
実験終了後,下図に示すワークシートを用いて、話合い活動 を進めていきます。
一人“Think”で考えた内容をワークシートに自由記述する ことで現下の発達水準を確認させます。そのうえで、二人 “Pair”、全体“Share”といった話し合い活動をもとにして、 ワークシートを自由記述し、次に続く発展的な理解ができたか どうかを確認させるようにします。この話合い活動を"Think- Pair-Share"と呼びます。
この活動の中でも特に、二人での話合いは重要です。この場 面で確実に話合いができるようにするための工夫として、仮説 を立てるようにします。実際にいくつかの実践を行った結果、 仮説を立てるという指示が無ければ、意見交換で終わってしま う場合が多かったので、その反省を活かして、仮説を立てると いう指示を出すようにしました。こうすることで、科学的な議 論になっていくことが期待できます。さらに最後には、全体で 共有したことを一人でまとめる時間をとれば、完成です。
現在は、STEM 教育で述べられている新たな疑問を次の学習に つなげる点について解明するために、新たな疑問が生じたかを 考えさせる手続きをとる TPSQ“Think-Pair-Share-Question”ワ ークシートを開発し、実践を重ねているところです。
引用文献
① Walsh,J.,& Sattes,B.(2005), “Quality Questioning Research-Based Practice to Engage Every Learner”, pp.v-viii, Corwin Press.
② Styre,S.,& Sound,R.(1975), "All Science Stimulating Creative Thought Through Picture Riddles" , pp.46-47, The Science Teacher.