疫病時代(APCL001)
リリース 2022/09/01
イラスト umiushi
01. 美しい国
02. 海の向こうで戦争がはじまる
03. 曲がり角
04. 分断
05. 君が死んでも
06. 禁断の園
07. レッドスカイ
08. ハッピーライフ
09. ゲットーへ
10. とりあえず戦争
01. 美しい国
美しい国へようこそ
貧しさが美徳の国へようこそ
握った手の中に当たりはありません
右も左も分かりません
ここはどこですか ここはいったいどこですか
汚れた海に浮かぶ泥船に乗り
居場所を探し漂っている
無人の箱の中で平和を歌い
出鱈目な数字に浮かれ踊らされ
ハイエナの荒野で怯えながらメールを打つ
遠く忘れられた部屋の片隅で
捨てられた犬たちの犬小屋で
濁った雲の向こう星を見上げていた
ここはどこですか ここはいったいどこですか
沈みゆく島の路上で
疫病にさらされ老いていく
生贄を吊るし耳をふさぎ何も生まず
一列に並びただ安心していた
群衆に向けられた無言の銃口を
飢えて死ぬほどの救われない孤独を
殺され奪われ続ける未来を
覆い隠し明日のニュースは明るいという
ここはどこですか ここはいったいどこですか
02. 海の向こうで戦争がはじまる
苦しいのか泣いているのか 哀れ哀れ
人が人に入り込んで食い荒らす
ここは大きな釣り堀 釣られないようにね
君が暮らしてる箱庭は黒い雨で水浸し
がらんどうの摩天楼 崩れる崩れる
人が人を殺す 近すぎて見えない
何となく皆同じ顔をしてると生贄にされなくていいね
何となく何となくここは見たことがある空虚な戦場
手探りで君と僕は 違う言葉で彷徨う
目を背け合っていた 海の向こうで戦争がはじまる
液晶越しに僕らは手を繋ぎ抱き合える
足許で行き場のない淋しさが沈んでいく
同じ色の人たちで戦うなんて珍しいね
同じ色の人同士で戦うなんて人殺しの茶番かな
手にした武器を捨てたって 僕らは許し合えない
自分の仕掛けた罠にいつも怯えている
03. 曲がり角
明け方雨が降ったみたいだ
地面は濡れても変わらない朝だ
汚れた病室のような電車に乗って
亡霊に囲まれ息を殺す
晴れても雨でももう何万回も
おはようございますを繰り返してる
公園の隅で齧る菓子パンや
ぬるくなった缶チューハイに真実はあるのか
流れてきたブロックをいくつも積み上げて
壁を作り突っ立っていればいい
時給が10円上がったって喜んで
部屋に帰り鍵をかける
あっちで群らがってる失われた人たち
ネットの中の名前のない人たち
奪われても気にしない
死んでいく明日も関係ない
セミが鳴いてる真夜中
何もおかしくないのに笑う
他人の家の明かりが幸せそうで
いつもより沢山薬を飲んだ
どこにキチガイが潜んでいるかわからない
自分が空気みたいでわからない
でもさっき素性の知れない女に
上手ねって褒められた
幻の中で遊ぶ
推してるメンヘラアイドルがどうしたって
君がそれを評価したところで
誰も君を評価してないよ
昔妹が万引きしたコンビニに
君は迎えに行かなかった
つまずいた道で差し出された
汚れた手を掴めなかった
生きてるだけで恥ずかしいのに
暗がりで恥部を舐め合っている
そんなどうでもいい歌を
いったい誰が聞きたいと思う
セミが鳴いてる真夜中
曲がり角を曲がらないで歩いた
明かりも消えた真夜中
目を閉じて目を閉じて
04. 分断
脱落した人達を轢き潰し
沢山の自殺願望を乗せて電車は走る
テレワークなんて関係ない底辺たちのルサンチマン
距離を保ちマスク越しに愛し合う変態たち
死んでいく春に薬とシャンパンで乾杯
欠落した人生の欠片を探しに
ゴミ集積所を徘徊する老人たち
老人たちの道しるべはどんどん
どんどん遠ざかるばかりだ
死んでいく春に薬とシャンパンで乾杯
誰も来ない誰も来ない誰も来ない
毎日コンビニ弁当ばっか食ってると不倶者になる
漂白剤で血肉を洗い
ストロング缶をジャブジャブと血管に流し込む
分断の先には熟れて腐り落ちた世界
渋谷のスクランブル交差点で
マスクを外し服を脱ぎ捨て
内臓を晒し畸形の骨を晒し
基盤の裏側までも晒したのに
誰も見向きもしなかった
コロナのごった煮の鍋底で
一人また一人溶けては消えていく
ワクチンを打ちワクチンを打ちワクチンを打ち
ワクチン中毒になったまっさらな脳味噌で
見た嘘だらけの時代 オリパラ オリパラ
歌ってもくだらない叫んでも変わらない
優しいSNSでも相手にされない
そこら中人が溢れゴミのようだ
慰めても欲しくてもお金が足りない
今まさに永遠の緊急事態
05. 君が死んでもいいねを押すぐらいしかできない
獣の道をケータイ片手にゆくよ
ぼんやり霞んだ星空をゆくよ
着飾った通りの裏窓を開けて
雨の匂いが忍び込む隙間に空っぽの隙間に
明かりの消えた新宿の街を
舞う花びらになって汚れたせせらぎの果てへ
会いたくて繋がりたくて
いつも違う場所で待っているの傷つくの待っているの
君が死んでもいいねを押すくらいしかできない
君が消えても忘れることしかできない
夜のお姫様 蜘蛛の巣の家で
辿るあみだくじは帝王切開の跡
知らない人と手をつないで歩く
荒野の向こうには見たことのない花が咲くよ咲いている
君が死んでもいいねを押すくらいしかできない
君が死んでも忘れることしかできない
06. 禁断の園
今すぐモザイクをやめろ
真実はもはや寝返っている
金を渡したら武器になった
弱者は罪だと攻撃された
チェルノブイリからネオナチへ
鞭打つ憎しみの呪縛
果てない青い空よ 湧き出す黄金の大地よ
たなびく旗の下 血と肉の雨を降らせる
操られた世界で 突っ立っていた
操られた世界で 安らかに目を閉じていた
禁断の園で蛇が齧る 甘くて曖昧な果実
焦げた装甲車にまたがって
太陽と恍惚と神を見た
まるで憶えられない 多すぎる顔が憶えらない
操られた世界で 革命という遊び場で
差し出す救いの手は 愛なのかAIなのか
操られた世界で 降ってくる餌を待っていた
操られた世界で 踊る風の舞手になる
07. レッドスカイ
亜熱帯の空港の冷房で風邪をひいた
昼前には亡霊の街を歩いている
不確かな靴底のぬるさよ
煮え切らない含み笑いを浮かべていると
いかさまのネタをつかまされた
緩い日差しの向こうにナパームの雲
そこには大きな川があって
流れに映る赤い空を見ていた
微熱に浮かれ祈りの森で
どこかの国が横流ししたマシンガンを
動かぬ標的に向けて放つ
枯葉剤で変形した幼児の物乞いや
キリングフィールドの骸骨の山の前で
立ち尽くす異邦人たちの流す涙のように無意味だ
何度もやり直し過ちを繰り返し
盗み騙し傷つけ合って
敵も味方もまるで見分けがつかない
欲望は純粋 殺戮は正義
避難民たちが消えた残骸の果てで
子供たちの瞳は忘れられた地球のように澄んでいた
そこには大きな川があって
流れる赤い空を見ていた
ありふれた平日の午後 渋谷の駅前に立っていた
アメリカ元大統領の仮面を付けた人たちが
世界は陰謀だらけだって
iphoneを手にしたJKの群れが歩いていく坂道を
バニラバニラと人買いのトラックが
消えていくその先に同じ夕陽を見た
08. ハッピーライフ
家族が減って 気持ちも少なくなる
おうちの中にると安心 知られないはずさ
紙の鎧を身にまとい冒険の旅に出る
陽が登る頃いい人も悪い人もはにかみ消えた
寒い町の母と子の食卓や
城壁に囲まれて病んで眠る王様の夢や
置き去りにした風景を ポケットの中で解き放つ
追いかけた夕焼けを一緒に思い出している
ボクは君に 君はボクに ハッピーライフ
何も知らずにここにいる 何もわからずに ハッピーライフ
ダウンロードした鳥と浮かぶマグリットの空
歩いてきた森の紫陽花は何色
君は都会からやって来て素敵な言葉をおしえてくれた
ボクは今もひとりぼっちの絵を描いている
ボクは君に 君はボクに きっと ハッピーライフ
誰も気づかない 誰もわからない でも ハッピーライフ
何も持たずに生まれてきた今も手ぶらだ ハッピーライフ
ボクはボクに 君は君に みんな ハッピーライフ
09. ゲットーへ
あるちゅうらんぼう 永遠なんてなかった
じっと そこでじっとして
終わった後も動かないで
血が流れる快楽 木漏れ日の抱擁
朝焼けの空に 黒装束の天使
どぶ川のほとりで
怯える処女たちのハーレムへ
曲がったナイフで 世界をくり抜いて
ゲットーから ゲットーへ
細い針の先端 佇み手招きする
乾いた喜びの 刹那をどこまでも
すり抜けていく
この腕をすり抜けていく
ゲットーから ゲットーへ
10. とりあえず戦争
晴れれば晴れるほど無力だ
今は寒いおかまの部屋で待つ
場末の異国で 愛をください
この宇宙で私は一人ぼっち
NYでも三ノ輪でも一人ぼっち
意味不明な戦いに敗れ 意味不明に泣く
とりあえず戦争 真っ黒 太陽
とりあえず戦争 言葉よりも戦争
とりあえず死んだふり
抱きしめて ホモのおまわりさん
脳が痺れ全身麻痺
わたしはバイブレーター
自慰行為と自傷行為の繰り返し
真っ白な道の上 優しい奴隷たち
被爆の森を行け
瓦礫の隙間から刃の青空を見る
とりあえず戦争 寒空の下に並ぶよりも
とりあえず戦争 桜散る頃の灼熱の予感に
とりあえず戦争
死んでんの 生きてんの
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