年に2回、夏と秋に採集合宿を行っています。4~10名程度で、数日間、文字通り水生生物漬けの生活を送ります。現地特有の生物探しや、ときどき観光もします。2022年度は、夏に岡山で、秋に沖縄で合宿を行いました。
暖かく湿潤な空気が体を包む。飛行機を降りると、そこは南国だった。たどり着いたのは、京都から遠く離れた南ぬ島、沖縄県八重山諸島は石垣島。石垣島は南西諸島に含まれる島である。しかしながら、南西諸島と十把一絡げにしてはならない。南西諸島はトカラ列島の悪石島と宝島の間にある渡瀬線、沖縄諸島と宮古諸島の間にある蜂須賀線で3つに大別され、この境界を越えると生物相が変わると言われている。石垣島を含む蜂須賀線以南の地域は先島諸島と呼ばれ、南西諸島の中でもそこにしかいない種(固有種)も多く生息している。そんな石垣島に我々淡水生物研究会は採集遠征に訪れたのである。
率直な感想を述べる。すんごい楽しかった。まるっきり阿呆であるが、これに尽きる。何よりもまず、亜熱帯の汽水域の懐の深さに驚かされた。4泊5日で、我々は魚類だけでも(それも認識できただけで)100種類近くも観察することができたのである。陸域にも目を向けて、魚類以外の脊椎動物、さらには無脊椎動物にまで視野を広げると観察できた生物種は200種を超える。本州では見られない、南西諸島特有の顔ぶれに一同の心は躍った。中でも、石垣島を含む先頭諸島の固有種が見られたときの喜びはひとしおであった。また、南国の美味しいものもたらふく食べることができた。良い遠征は良い食事があってこそである。ただ一つ、不満があるとすれば、遠征が全日あいにくの雨であったことである。にもかかわらず、さまざまな生物たちを見ることができたのは石垣島の底力と会員達の昼夜を問わない採集活動の賜物であろう。本州に戻った瞬間から石垣島が恋しい。きっと、すでにもう一度石垣島に行く計画を立てている会員も多いことだろう。
石垣島の豊かな自然と我々の興奮が少しでも伝われば幸いである。
熱帯を感じる植生
ヒメツバメウオ
リュウキュウコノハズク
リュウキュウアカテガニ
初日、石垣空港に着いたのが16:55。この日はレンタカーを手配していないので夜に宿の近くの小規模な川で軽く採集を行う予定だった。前日までの天気予報で覚悟はしていたものの、先行きの不透明さが石垣島上陸の喜びと入り混じって複雑な心境である。はるばる石垣までやってきて、じっとしていても仕方がない。合羽を着て早速近くの公園に偵察に出かけた。公園では、ヤシガニ、オカヤドカリなど南西諸島ならではの生物達が出迎えてくれた。憂鬱な気持ちもいつしか消えていた。
宿に戻って腹ごしらえをしたら、いよいよ魚類の採集である。海側から河口に入っていったのでヨコシマタマガシラなどの海水魚と戯れることもできた。かなり、小さな河川であったにもかかわらず最大サイズのホシマダラハゼをはじめヤクシマイワシやミナミトビハゼなど南西諸島らしい生物をたくさん見ることができた。外来種のティラピアは我々の貴重なタンパク源である。採集が終わると宿に帰ってとった生物の同定作業が始まる。たくさん食用に捕まえた手長海老の中にスベスベテナガエビがいたという嬉しい誤算もあった。
ヤシガニ
アフリカマイマイに居を構えるオカヤドカリの一種
巨大ホシマダラハゼ
ミナミトビハゼ
クロホシマンジュウダイ
スベスベテナガエビ
ティラピア
ティラピアカレー
二日目、レンタカーを借りたので今日はボウズハゼを見に行ってやろうと意気込んだもののなんと昨日より雨がひどい。これでは水が濁ってどうにもならない。今日のところは諦めてJAの直売所で特産品を物色した。特にシマオオタニワタリというシダ植物の一種が野菜として販売されていたのには八重山の食文化を感じた。午後になって雨がマシになったので、各自山や川に向かう。固有種ヤエヤマヤマガニの他、ヤエヤマサソリモドキや多種のシロアリなど八重山らしい節足動物を観察することができた。他にも、タナゴモドキやヤエヤマノコギリハゼなどの淡水魚も採集できた。夜はマングローブに出向いた。恐ろしく汽水魚の多様性が高い。ウチワハゼ、カスミハゼ、タヌキハゼ…とハゼ類は数えると両の手では収まらない。ボラでさえ複数種類とれるのだから驚きである。それに加えてサキシママダラやサキシマアオヘビといった爬虫類も観察することができた。
ヤエヤマ(タイワン)サソリモドキ
タナゴモドキ
ヤエヤマノコギリハゼ
干潮時のマングローブ
ウチワハゼ
サキシママダラ
サキシマアオヘビ
オオタニワタリとヘゴの天ぷら
三日目、この日も雨が降り続いていた。今日は島北部の河川を一つ一つ見て回った。濁りがひどい上に魚類相の貧弱な河川が多かったがネッタイテナガエビ、オニヌマエビといったエビ類やミネイサワガニ、ムラサキサワガニなどの固有サワガニも見ることができた。島内でも地域によって河川の底床の様子が異なっており、石垣島の概観を見たような気がして面白かった。それから、昨日諦めたボウズハゼの川に向かう。思いのほか水は澄んでいてボウズハゼ類の密度は高かった。婚姻色のルリボウズハゼやナンヨウボウズハゼの他、ヨロイボウズハゼやカエルハゼ、アカボウズハゼも観察できた。
夜の採集は徒歩で広い森を含む公園を通り抜けて宿付近の河川で行った。この公園でもヤエヤマヒメアマガエルやヤエヤマセマルハコガメなどの固有種を見ることができた。川に降りると、右足にじわっと冷たい感触がある。どこかで胴長に穴を開けてしまったらしい。幸い干潮で水位はかなり低いので濡れながらも採集できないことはなかった。この日も、やはり多様なハゼが出迎えてくれた。クロサギ類が複数種類捕獲できたことにも驚かされた。この日採集したハゼの中には疲労のため結局同定できずじまいのものも多いのは心残りである。
オニヌマエビ
ルリボウズハゼ
ヨロイボウズハゼ
コナカハグロトンボ
シマヨシノボリ
サツマゴキブリ
ヤエヤマカジカガエル
ヤエヤマセマルハコガメ
四日目、この日が採集に費やせる最後の日である。あいにく、胴長が穴あきで使えないので水辺ではなく山へ出かけることにした。登山道が連日の雨で川のようになっており登頂は諦めたが多くの生物を観察できた。例えば、5種類ものシロアリを見ることができた。一口にシロアリと言っても樹上に営巣するもの、キノコを栽培するもの、腐植土を食べるものと生態は多岐に渡る。さらにクビナガアシナガアリという固有種も採集できた。雨が降っていたことも悪いことばかりではない。両生類の活性は高くなるのである。オオハナサキガエルというウシガエルほどもある大きな固有種も見ることができた。ヤエヤマクチキコオロギをはじめとする本州よりも巨大な直翅類も魅力的であった。その他、アリの巣内で生活する奇妙な生態を持った昆虫も採集できた。他の会員はメタリックブルーの婚姻色輝くナンヨウボウズハゼを採集しており満足の1日だった。
タカサゴシロアリの巣
沖縄の渓流
ナンヨウボウズハゼ
ナントシャチホコ日本亜種(幼虫)
アオミオカタニシ
オキナワウスカワマイマイを捕食するオオシママドボタルの幼虫
スジグロカバマダラ
八重山そば
5日目、最終日のこの日は荷造りやお土産選びに費やされた。まだまだ名残惜しい石垣島。きっと戻ってこよう。その日まで、待ってろよ石垣島。
追記(2023/02/22):京都大学理学研究科の福家悠介様からご指摘をいただき、ヤエヤマヌマガエルとしていた写真の説明をヤエヤマカジカガエルに修正しました。福家様、ご教示ありがとうございました。
セミが鳴き始めた初夏、我々淡水生物研究会の面々は岡山の地に足を踏み入れた。4 月に新たに新入生を迎え、親睦を深める意味合いも込めて四手網小屋での合宿を敢行したのである。総勢 11 名の会員が参加し、2 棟の四手網小屋に分かれて宿泊した。四手網小屋への道すがら採集を行い、さらに四手網漁で夜を明かす合宿である。一同は 3 台の車に分乗し、車ごとに別ルートで、各々期待に胸を膨らませて淡水魚天国と名高い岡山を目指した。
長距離の移動に身構えていたが、気づけば時刻は昼前。 かなり内陸ながら隣に魚屋があるおかげか刺身が新鮮で美味な定食屋で昼食をとり(図1)、オヤニラミの記録がある川に向かった。流れは平坦だが川岸には抽水植物が茂る部分も多く、直径 20〜30cm ほどの石がゴロゴロと転がっている。胴長を履いて川に入って石を転がすと良型のカマツカが入った(図2)。胸鰭外縁の湾曲や口髭の長さなどからナガレカマツカのように思われるが、形態には個体差も大きく、余程顕著な個体でない限り、筆者には判別がなかなか難しい(従来カマツカとされてきた種は現在ではカマツカ、スナゴカマツカ、ナガレカマツカの 3 種に分類されている)。 採集を続けると、ドンコ、ムギツク、カワヨシノボリ、サワガニなど、馴染みの連中が顔を見せてくれたが、目的のオヤニラミは捕獲できなかった。後で聞くと、他の車は別の水系でオヤニラミを捕獲できたらしい(図3)。
本流での採集を終え、その支流に場所を変えてすぐ、水面に漂う緑色のピーナッツ大のものが目に入った。草食動物の落とし物だ。ところどころ土手に穴が開き、崩れかかっている。短くなった植物を注意深く見ると、切り口は何かが食んだ後のようになっていた。ヌートリアである。こんなところまで侵入しているのか。憂鬱な気分で採集を続けるがタモに入るのはカワムツ、ドンコ、小さなヨシノボリのみである。不意に背後で水音がした。振り向くとヤツがスイスイと川を下っていくところだった。タモを上げるとブルーギルが入っている。次の場所へ向かうことにした。
図1
図2
図3
図4
続いて採集を行ったのは河川敷内の本流から別れた流れだった。イチモンジタナゴが移入しているとの情報がある地点だ。膝近くまで埋まるような泥底で歩くのも困難な場所で、少し深いところに大きなコイが泳ぐのも見えた。コイがいるような環境ではほかの魚があまり獲れないことが多いので気分は下がったが、採集を続けると岸際に針のような稚魚が群れていた。大方タイリクバラタナゴであろうが、目的のイチモンジタナゴである一縷の可能性に賭けて飼育することにした(結局、タイリクバラタナゴだった)。来た方へ戻る途中足に何かがぶつかったので、泥を探るとタガイであった。先ほどのタナゴ幼魚が何であれ、この場所で再生産が行われているのは確かである。二枚貝が生息しており(タナゴ類は生きている二枚貝の体内に産卵する)、6月は多くのタナゴの繁殖期にも関わらず、付近で成魚の魚影すら見ることができず、未練を残す結果となってしまった。
気を取り直して移動し、水路を探ることにした。水路に入って驚いたのはその水位の高さである。腰の高さまで水位があり、さらに濁っている(図4)。しかも、その時見た全ての水路が溢れんばかりなのだ。 6 月中旬でも田に水が張られておらず、近日中に田に水を引くために水路に水が並々と満ちていた。仕方なく釣りを始めるとフナ、コイ、タイリクバラタナゴが釣れた。時計を見ると、そろそろ四手網小屋へ移動しなければならない時刻だった。
四手網小屋は、複数の河川が合流した河口域にある。淡水と海水がせめぎ合う、 汽水域だ。堤防沿いに同じような小屋が何棟も並んで建っている。堤防の小屋と反対の水域を上から覗くとオオカナダモが繁茂していた。淡水なのだろうと思い、水草の隙間で平打ちする小魚を釣ろうとするうちに、背後が賑やかになってきた。別の車の会員たちも到着したらしい。全員で小屋の説明を受けて荷物を運び込む。小屋は木造の高床式で、水面に迫り出して建っている(図5)。かなりの年月をここで佇んでいると見え、ギシギシと床が軋んだ。窓から隣を見ると、 かつて四手網小屋であったのであろう朽ちた脚組が見えた。とはいえ、土間の部分から一段上がった床の部分は6人が座ったり寝そべったりするのに十分である。隅には空調設備と冷蔵庫もある。土間は壁一面が調理場になっている(図6)。さて、肝心の四手網はどんな具合だろう。 窓から覗くと、大きな正方形の網が、窓の脇の壁から伸びた鉄パイプの先にぶら下がっている。この網を水中に沈めた上に電灯を灯し、光に集まってきた生物を一気に掬い上げるのである。窓の横の柱にスイッチがあり、これで網の上げ下げや集魚灯の点火ができるらしい。試しにスイッチを押してみると、壁を軋ませながら網は水中に沈んでいった。 土間には3mはあろうかという柄の長いタモが寝かせてあり、これで水揚げした生物を窓から部屋に引き上げるのだ。一通り小屋の様子を把握して、夕飯に必要なものなどをそれぞれ買い出しに出かけた。
図5
図6
図7
図8
小屋の近くでウナギが釣れるということで、筆者は近所の釣具屋に餌を買いに行った。薄暗い店内には、所狭しと商品が並んでいた。店に入るなり足にまとわりついてきた三毛猫をかわしつつ、店の人にウナギの餌が欲しい旨を伝えると「ウナギじゃったらゲンタがええわな。」とのこと。はて、ゲンタとはなんだろうか。見せてもらうとアナジャコである。方言なのか、初めて聞いたので調べてみるとゲンタの名でネット販売もされているようだ。筆者が知らないだけで案外広く使われている名称なのかもしれない。小屋に戻ってゲンタを針にかけて仕掛けを投げ込み、手持ち無沙汰に付近に大量にいるカクベンケイガニを捕まえる遊びに興じた。 暗くなってきた頃に、小物釣りをしていた会員が見慣れないハゼを持ってきた(図7)。調べるとショウキハゼというらしい。晩のおかずとしてバケツにとっておく。しばらく釣りを続けたが、アタリがない。買い出し班はまだ帰ってこないが、四手網漁の準備をしておくことにした。網を沈めて集魚灯をつければ、あとは待つだけである。30分たって隣の小屋の四手網が引き上げられるのが見えた。スズキとヒイラギが網に入っていたので、こちらの小屋の四手網も上げてみることにした。スイッチを押すと濁った水中から徐々に網が浮かび上がってきて、行き場を無くした小さな魚とエビが右往左往している。しかし、網の目が大きく、ところどころ綻びがあるため、あらかたのエビは落下してしまった。結局、引き上げられたのはシラサエビが数匹と10cm大のスズキとヒイラギが2匹ずつ。隣よりも明らかに少ない。隣の小屋が網を上げた時に群れが移動してしまったのかもしれない。エビのかき揚げを作りたかったのだが、四手網では達成は難しそうである。岸近くの水中を見るとスジエビの類が大量にいる。次の網上げを待つ間、かき揚げを目指して一心不乱に掬った。他にもシモフリシマハゼやイダテンギンポ、タケノコメバルなど水際の魚を採集できた。
20時になって買い出し班が帰ってきた。 ドヤドヤと荷物を下ろして本日2度目の網上げである。今度は隣の小屋と同時に網を上げた。スズキの他にマハゼ やスジハゼ、良型のイシガニも入った。それから、15分おきに網を上げながら、夕食の準備を始めた。獲れた魚を天ぷらにするのである。別の車が兵庫の道の駅で買ったズッキーニと春菊も天ぷらにした(図8)。塩のみの味付けだが臭みはなく、実に美味である。買い出し班が買って来てくれたマンゴージュースも空腹に染みた。捌いた魚の内臓は集魚効果を期待して四手網の上に投げ込んだ。21時、徐々に潮が満ちてきた頃、幾度目かの網上げで初めてベイカと呼ばれる小型のイカが獲れた(図9)。隣の小屋ではあまり獲れていないようだった。魚の内臓が功を奏したのかもしれない。イカはもちろん、偶然拾ったユビナガホンヤドカリの天ぷらも想像以上に肉厚で美味かった。その後はイカが続々と獲れるので、一緒に獲れたアカエイも合わせて醤油煮も作ってみた(図10)。 最初の瞬間は、圧倒的な骨の存在感に口に入れたことを後悔するのだが、それを我慢して一度噛むとあれだけ鮮明だった食感が一瞬でどこかに消えてしまうのである。一口目はギョッとするが、勝手がわかってしまえば美味しい魚である。軟骨魚類を初めて食べる筆者には非常に新鮮であった。
図9
図10
図11
図12
23時を回り腹が膨れてきた頃、近くの水路に出かけることにした。近辺にはカワイワシという外来魚が生息している。カワイワシといっても海水魚のイワシの仲間ではなく、 ユーラシア大陸東部原産のコイ科魚類である。全国でここにのみ定着しており、 それを目当てに繰り出したのである。水路の水位は相変わらず高いが、この時間帯なら魚の活動も鈍く、簡単にタモで掬えるのだ。懐中電灯で照らしながら捜索すると、フナ、タイリクバラタナゴ、カネヒラ、モツゴ、ウキゴリ、ナマズ、ミシシッピアカミミガメ、テナガエビなどがすぐに見つかった。ただ、なかなか本命のカワイワシが見つからない。 それでも水路を照らしながら歩き回ると、水面付近をすばやく泳ぐ 20cm程度の魚影が見えた。カワイワシである。寝ぼけているほかの魚と異なりかなり俊敏だが、なかなか潜らず水面から離れないので見失うことはあまりない。皆興奮しながら追いかけ回すがなかなか捕まらない。最終的に、水路の両側から全員で網を構え、魚が近くに来たところで進行方向を予測して即座に網を水中に叩き込む、というやり方で7匹捕獲できた。ワタカとオイカワを融合させたような大陸風情漂う魚体だ。属は違うが、ワタカと同じクセノキプリス亜科に属するのだから似ているのも納得である(図11)。ふと時計を見ると、もう2時であった。明日も早いので、カワイワシとテナガエビを朝食用に確保して水路を後にした。
小屋に戻ると漁を続けていた会員が良型のマハゼとサッパを追加していた。夜も更けてきたので、そろそろ漁も終わりだということになって、 最後の網上げを行った。すると、ゆっくりと浮かび上がる網の上に大きな影が見えた。大きなイカだ。水中をどんどん移動していく。下手すれば網の外に出ていってしまいそうだ。「早くしろ。早くしろ。」会員達は叫ぶが、スイッチ一つで上下する四手網は便利な一方、 速度を操作することができない。マイペースにのんびりとしか上がってこないのである。 全員が窓辺に集まる。イカが少し潜ったので見えなくなる。逃げられたか。固唾を飲んで 網が上がるのを待っていると、ようやく網が上がってきた。「おお」と部屋がどよめく。入っていたのは、あっぱれ、大きなアオリイカだった(図12)。手に持つと、ズシリと重たい。アオリイカの季節にしては遅い上 に、淡水の影響を受ける水域にアオリイカが入り込むことは珍しい。思いがけない収穫だ。アオリイカとサッパやマハゼ、カワイワシを捌いて備え付けの冷蔵庫に入れ、午前4時に床に着いた。
午前6時にもなると辺りも明るくなり、床に転がった会員達がモゾモゾと活動を始めた。 朝食は白米とイカそうめん、昨日準備しておいた魚とアオリイカのゲソの網焼きだった(図13)。新鮮なイカの刺身と魚の焼ける匂いが食欲を刺激する。ねっとりとしたイカそうめんを頬張り白米をかきこむ。まさかこのような食事にありつけるとは。アオリイカに舌鼓を打った後、サッパとカワイワシの食べ比べをしてみた。予想に反してカワイワシはサッパを相手にいい勝負をしていた。臭みとは無縁な味わいで、とても濁った水路からとれたとは思えない。頭を落として腸を取っただけの下処理だが、骨も気にならない。岡山では、サッパは俗にママカリとも呼ばれている。これは、あまりの味の良さに飯を全て平らげてしまい、隣に飯(まま)を借りに行かなければならな いほどだからだという(諸説あり)。そのサッパに遜色がないのだから大したものである。
朝食の後、身支度を済ませると我々は四つ手網小屋に別れを告げ、水田地帯の一角へと向かった。その場所はサンヨウコガタスジシマドジョウの産卵場所になっているとのことだった。昨日もそこを訪れた会員が、農家の方に翌日水田に水を引くので見にくると良いと言っていただいたのである。昨日は水路の水位も低かったらしいが、この日の水路には並々と水が満ちており、地面に埋め込まれた直径 40cm ほどのパイプを通って水田へ勢いよく水が流れ込んでいた。水田に至るまでの水路自体はコンクリートで固められているが、田の中を通 る小さな水路は昔ながらの土を掘ったもので草が茂っている(図14)。サンヨウコガタはパイプの流れに乗って水田へ侵入し水没した植物に卵を産みつけるのであろう。自然河川の氾濫原の役割を水田という人工物が担っているのである。
図13
図14
図15
図16
本当にサンヨウコガタが入って来ているのか、取水パイプにタモを構えて1分待ってみた。タモをあげてみるとフナが 2 匹入っている。さらにもう1 分同じことをすると、またもやフナが獲れた。今度は 3 匹である。もしや、一定のペースで圃場に侵入しているのではないか。面白いことに時間を 2 分、5 分と伸ばすと獲れるフナの数も 5 匹、13 匹と綺麗な結果となった。1 分間に平均 2.5 匹のフナが水路から水田に侵入しているらしい。さらに続けると、目的のサンヨウコガタの姿もみることができた。きめの細かい美しい模様の魚体が網の中でくねっている(図15)。 見渡すと水を湛え始めた水田でサギが小魚を待ち構えている。命懸けの産卵を乗り越えてサンヨウコガタにはこの場所で生き続けてほしいものである。
サンヨウコガタスジシマドジョウの産卵場を観察した後、再び車ごとの行動になり、我々は東へ向かいながらシロヒレタビラを求めて水路を探訪した。先述の通り多くの水路は水位が高く流れもないためシロヒレタビラはもちろん、アブラボテやヤリタナゴも見ることができない。それどころか、地図上で目星をつけていた支流も澱んでいる。この時期の岡山南部では、水田に水を引くためか、支流が本流との合流地点で堰き止められて、流れが滞っているようであった。本流は川幅も広く水深も深いためタモ網での採集には向かないため、本流から水を取っている水路で採集を行うことにした。 覗くと、予想通り水路の水は透明で流れはかなり早い。しばらく歩くと、水路が枝分かれしている部分の流れが少し弱まったところに魚影が見える。 タモを入れるとヤリタナゴとアブラボテの幼魚であった。底に沈んだ砂を掬い上げるとオオシマドジョウとサンヨウコガタスジシマドジョウも獲れた(図16)。移動しつつ似た環境を狙うとさらにカネヒラ、タイリクバラタナゴ、タナゴ類の幼魚、アブラハヤ、ニゴイ、フナ、オイカワ、カワムツなどを追加できた。目的のシロヒレタビラは獲れなかったが、小さくて種の判別が難しいタナゴがシロヒレタビラであることにかけて 2 匹持ち帰ることにした(自宅で飼育し、ヤリタナゴであることが判明した)。
時刻は正午を回り、岡山を後にした。 土産に吉備団子を買って岡山が遠のくにつれ、現実に引き戻されていくのを感じた。家に帰ればやり残した課題という名の鬼が待っている。吉備団子ひとつで共に戦ってくれる戦友もない。 桃太郎は単身鬼ヶ島に乗り込むほかないようである。
※本稿は、会誌『疏水』Vol. 1「岡山四手網小屋合宿備忘録 」を改編したものです。
普段は、放課後や休日に個人~数人で集まって採集を行っています。ホームフィールドは琵琶湖・淀川水系ですが、遠くは東北や九州まで、全国津々浦々に繰り出す会員もいます。
去る9月下旬、4泊5日で沖縄島に遠征に行ってきました。川・汽水をメインに海での採集もおこない、多種多様な南方系魚類に癒されてきました。(執筆中)
初日
2日目
3日目
4日目
5日目
3泊4日の日程で山口県北部と山陽地方にて採集してきました。Z先輩、D先輩、私の3人で、各々が目当てとする魚種のポイントを回りつつ各地の魚類相を堪能しました。本遠征での私の目当てはアカザ(Liobagrus reinii)でした。アカザは一部を除く本州、四国、九州に分布する比較的小型のナマズ目魚類で、主に河川中・上流域の瀬に生息しています。体色は日淡では異端?な赤ベースで、瞳は小さく円らで、中途半端に開いた口の周りからはぴんと張った4対のヒゲが生えています。神秘的で、(特に正面から見ると)可愛らしい見た目をしています。近年の研究でのmtDNAの解析により、種アカザは遺伝的に大きく離れた2つの集団 “クレード1”と“クレード2”(以下C1、C2)を含んでいることが明らかになっています。
アカザ (C2)
山口県北部で採集した個体。C2が分布するとされる地域。体色は黒みがかった濃厚な赤という印象で、体側の脱色斑は目立たないことあり絵具でべったりと塗ったよう。体がしなやかなのか観察ケースの中では尾鰭を寝かせてしまうことが多いようである。普段よく見るC1とはやはり違うなぁと実感。
アカザ (C2?)
広島県中部(水系1)で採集した個体。この水系にはC1とC2の両方が生息するといわれているが、この個体はC2っぽい印象。小河川の比較的上流のほうで採集。
アカザ (C2)
広島県中部(水系2)で採集した個体。扇型に広がった尾鰭は黒く縁どられ、いかにもC2らしい?見た目。かっこいい。アカザにしては流れの緩い場所に潜んでいた。
アカザ (C1)
広島県東部で採集した個体。頭部が盛り上がった雄個体。C1と思われる。体側の脱色斑が目立ち、尾鰭も台形に近い形をしている。
その他にも沢山の魚たちに出会うことができました。
ヤマトシマドジョウA型
ギギ
アブラボテ
カワヒガイ
シロヒレタビラ
サンヨウコガタスジシマドジョウ
ヤマトシマドジョウとズナガニゴイ
ナガレカマツカ
今回は私自身初めての長期遠征でしたが、経験豊富な先輩にお世話になりつつ大変充実したものにすることができました。今回は積雪のため断念した山間部や山陰も含めて、中国地方にまた出向きたいと強く思います。
サンインコガタスジシマドジョウ。その名前を聞いただけでも、私たちの心は踊る。1月末の期末テストから解放された私は、その優美な魚を求めて鳥取県へと向かった。今回の遠征は、鳥取県を西部から東部にかけて移動する傍ら、ひたすらサンインコガタスジシマドジョウを観察するものとなった。観察した個体たちを写真と共にご紹介する。
サンインコガタスジシマドジョウ
採集:鳥取県西部 地点1
L3が筋模様になりかけのオス個体です。思いのほか上流域で採集することができました。水の流れが緩やかな砂だまりに集まって生息しているように感じます。
サンインコガタスジシマドジョウ
採集:鳥取県西部 地点2
うーん。かわいいですね。丸っこい斑紋が点々と入っているのが愛らしいです。本個体を採集したポイントでは、これまでは数分で数個体見ることができたのですが、今回は1個体を見つけるのに少し苦労してしまいました。前回来た時と比べて流れが速くなっており、堆積していた砂も少なくなっていたように感じました。もしかすると地形の変化が、影響しているのかもしれません。心配です。
サンインコガタスジシマドジョウ
採集:鳥取県中部
体側が筋模様になったオス個体です。立派です。
こちらのポイントでは、密度が低かったためか採集するのに苦労しました。どうやら一か所に集まっていたようで、その場所さえ見つけてしまえば、楽に採集できました。これまでのポイントとは違い、泥の中に隠れていました。
サンインコガタスジシマドジョウ
採集:鳥取県東部 地点1
これまでの個体と比べて、L3が若干太く見える個体。河川本流の岸際の流れが緩やかな砂だまりに隠れていました。スナヤツメやニシシマドジョウが同じ砂だまりの中で見られ、流心の瀬にはカジカ中卵型もいました。
サンインコガタスジシマドジョウ
採集:鳥取県東部 地点2
非常に環境の良い水路で採集した個体。
底質は泥であり、泥ごとすくい取るようにして採集しました。このポイントではミナミメダカも見ることもできました。
このような環境がいつまでも存続していると良いですな~。
今回の遠征で見ることができた他の魚たちです。
イトモロコ
カジカ中卵型
ニシシマドジョウ
2024年の暮れ,年末年始を地元九州で過ごすために京都から帰省しました.大晦日と元日はさすがにフィールドはお休みしたのですが,せっかく九州に戻ってきたということで地元の魚を見に行きました.正確には採集納めは12月30日だったのですが,成果が振るわなかったのでここでは2024年12月28日に行った有明海での採集と2025年1月2日に行った自宅付近での採集はじめについて書こうと思います.
2024.12.28 有明海湾奥部干潟・採集納め?
有明海はご存じの通り日本一干満差が大きい海として有名ですが,独自の生物相が見られることでも知られています.特に日本が大陸と繋がっていた時代に渡ってきた生物が有明海のみに取り残されたエツやムツゴロウなどの大陸系遺存種や世界でも有明海にしか分布しない有明海固有種(アリアケヒメシラウオやヤベガワモチなど)などが多く生息しています.今回は有明海特産種ではないのですが,キセルハゼ Gymnogobius cylindricusを狙いに有明海湾奥部の干潟へ家族で赴きました.キセルハゼはウキゴリ属の汽水魚で,干潟でアナジャコの巣穴などに棲んでいるとされるのですが,通常の採集では採集しづらいこともあってかその生態・分布に関する知見は不足しています.有明海でも10年ほど前に記録はあるのですが,それ以降確認できていないため,現状を把握するためにかつてキセルハゼが捕れている干潟で採集を行いました.
さて,干潟に着いたはいいのですが,潮があまりよくない上にミゾレのようなものも降っています.若干やる気をなくしつつも胴長を着て干潟に入ります.有明海の湾奥部は泥干潟が発達しており,深いところでは腰のあたりまで一気に埋まってしまうようなところもありますが,ここはそこまで深くなく,せいぜい膝くらいまででした.早速スコップとタモ網を用いてキセルハゼを探しますが,全く出てきません.アナジャコ(図1)はぽつぽつ捕れますが,そこまで多くはありません.ヒモハゼとアシシロハゼがぽつぽつと捕れます.一匹だけショウキハゼ Tridentiger barbatus(図2)が捕れました.スコップで捕ったのは初めてですが,有明海周辺では割とよく見るハゼの仲間です.有明海特産種というわけではないですが,伊勢湾や瀬戸内海など日本での分布は限られます.口の周りにヒゲがもじゃもじゃ生えているのを古代中国の神様「鍾馗(しょうき」の髭面に見立てた名前ですが,ヌマチチブやシモフリシマハゼと同じチチブ属なのだから驚きです.結局キセルハゼは捕れないので,諦めて干潟の陸側で石をひっくり返し,イドミミズハゼを探します.しかしいくら石をひっくり返しても掘り返してもイドミミズらしきものは出てきません.結局ミミズハゼとトサカギンポ(図3,図4)が捕れたものの,イドミミズハゼは捕れずじまいで残念な結果に終わりました.キセルハゼとイドミミズハゼ,リベンジを果たしたいところです.
図1 アナジャコ Upogebia major
図2 ショウキハゼ Tridentiger barbatus
図3 ミミズハゼ Luciogobius guttatus
図4 トサカギンポ Omobranchus fasciolatoceps
2025.1.2 佐賀県筑後川水系・採集はじめ
正月早々魚が捕りたくなり,実家の周りを自転車で彷徨っていました.1月2日,2025年の採集はじめです.まずは川の上流でカワヨシノボリを狙います.実家周辺のカワヨシノボリは斑紋型と呼ばれるタイプのようで(図5),おそらくこの川は筑後川水系のカワヨシノボリの分布の西限です.京都ではいくらでも捕れるカワヨシノボリですが,この川はやや捕りづらく,あまり捕れませんでした.ほかにはタカハヤ(図6)が捕れました.おなじみのメンツです.上流は早々に撤退し,丘陵地帯で溜池の魚を狙います.溜池から流れ出ている細い流れに網を入れてみます.トウヨシノボリ(図7)とウキゴリ(図8)が捕れました.ウキゴリは婚姻色が若干出ていました.有明海側ではやや珍しい魚です.トウヨシもウキゴリも溜池に陸封しているのでしょう.興味深いです.ほかにはモツゴやスジエビなども捕れました.筑後川水系下流のクリークにはいくらでもいる奴らですが,上流では溜池の周りに少しいるくらいです.あまり九州らしい魚ではない(ぱっとしない?)メンツで迎えた採集はじめですが,久々の顔ぶれに満足し帰宅しました.
図5 カワヨシノボリ斑紋型 Rhinogobius flumineus
第一背鰭に青い斑紋が見える.
図6 タカハヤ Rhynchocypris oxycephala jouyi
図7 トウヨシノボリ Rhinogobius sp. OR
なぜか尾鰭が欠けている.溜池の個体だからか,やけに丸っこい.
図8 ウキゴリ Gymnogobius urotaenia
はじめに
8月の後半に石川県に単身赴任している父親を尋ねるついでに、前々から見たいと思っていた淡水魚2種を富山県に見に行ってきた。3泊4日の遠征でしたが、淡水魚と触れ合ったのは最初の1日だけで、あとの2日は観光をしていた。であるからして、本記事の後半部分は淡水魚と何ら関係のない内容となっておりますがご容赦いただきたい。本記事を楽しんで読んでいただけると幸いである。
1目目
旅の始まりは8月22日、17時半、京都市の伏見区にある実家を愛車のハレハレ号で出発した。前日まで3泊4日で母校の合宿のお手伝いをするアルバイトをしていたため、体力的に不安はあったが気にしない。いつも琵琶湖に行く時と同じように途中を越え、国道171号(湖西道路)を通って福井県は敦賀に向かった。なぜ敦賀に向かったのか、それはぜひとも入手したい書籍があったからである。その書籍とは『福井の淡水魚』、福井県に生息している淡水魚を網羅的に記した図鑑である。敦賀に到着後、無事書店でその書籍を入手した。給油を済ませ、富山県は魚津に向けて敦賀から北陸自動車道を北上した。その道中で、2度もトラックに幅寄せされ早くも遠征の終わりを迎えかけたものの、無事魚津に到着した。時間は0時、この日は遠征の度にお世話になっているK活クラブにて一晩を過ごした。
2日目
朝6時行動開始。手始めに、あらかじめグーグルマップにて目星をつけていた、黒部川扇状地のとあるよさげな用水路に向かった。到着して水路をのぞき込むと、水草が繁茂し、水がとても澄んでいて美しい。湧水が湧き出ていそうであり、今回の遠征のお目当てのうち片方がいかにも生息していそうな環境である。早速、ウェーダーに着替え突入した。ガサガサすると、初めにウグイが網に飛び込んできた。富山では関西のオイカワやカワムツと同じ感覚で採れると聞いていたため、自身が東に来たことを実感させられた。ガサガサを続けるとドジョウやスミウキゴリ、ルリヨシノボリ、カマキリ(アユカケ)などが採れた。特にカマキリ(アユカケ)はまさか用水路にいるとは思わなかったため大変驚いた。そうこうしていると、普段見慣れない異質な形をした魚が捕れた。落ち着いて確認すると今回のお目当てのうちの一種目、トミヨ属淡水型であり、思わず一人で発狂してしまった(うほうほうほうほ)。端からはどんな風に見えていたのだろう?観察ケースに入れてみて見るとやはりカッコイイ。特に背中のトゲトゲがいかついですな。水温が冷たいためか、観察ケースがすぐに曇ってしまいろくな写真が撮れやしない。仕方なく、慣れない手のせスタイルでの撮影となってしまった。2カ所目は先ほどのポイントの近く、こちらのポイントもまた雰囲気が大変良い。こちらのポイントでも先ほど同様、ドジョウやウグイ、スミウキゴリ、スナヤツメなどが確認された。少し水がよどんでいる場所では、多くのトミヨ属淡水型を確認することができた。幸せなり。気温も上がってきたためか観察ケースの曇りもだいぶましになってきたので、ここではトミヨ属淡水型の納得のいく写真を撮ることができた(図1)。お目当てのうちの1種を幸先よく確認することができたため、ここからはもう片方のお目当てを探しに行くことにした。向かったのはそのお目当てが採捕された記録のあるとある川の中流。転石が多く、流れも速い。いかにもお目当てが生息していそうなカンキョウである。岩の下流側に網を構えて、岩をめくり、その下を蹴りこむ”岩ガサ”を無心で行った。徐々に気温が上がり始め、熱中症の警戒を呼び掛けるアナウンスがどこからともなく聞こえてきた。どおりで、暑くてしんどいわけである。水中をのぞき込むとたくさんのシマヨシノボリがぴょんぴょんと飛び跳ねていた。かわいいなーと眺めていると、明らかに大きな魚影が目に飛び込んできた。よく見ると、虫食い模様の大きなカジカ、お目当ての魚である。叫びそうになるのを抑えて慎重に、そいつの下流側に網を構え蹴りこんだ。期待して網の中身を確認するも空。ショックでその場に立ち尽くすほかなかった。生息は確認できたからあとは捕るだけと自分を励まし、岩ガサを続けた。あまりにも暑いので橋の下の影になっている場所で岩ガサを無心で続けていると、なんか入った。ぼーっとした頭で確認すると、虫食い模様のカジカである。その瞬間、思考が回復した。カンキョウカジカ、今回の遠征第二のお目当てである。このあと無茶苦茶発狂した。観察ケースに入れて観察すると、虫食い模様がカッコイイ。裏返して見ると腹びれに縞模様がある。これは関西で見られるカジカでは見られない特徴である。感動に打ちひしがれながらたくさん撮影した(図2)。その後、前々から行きたいと思っていた魚津水族館に向かった(図3)。魚津水族館に入ると、まずは富山に住む淡水魚たちがお出迎えしてくれた。それぞれの淡水魚が生息している環境を再現したとても見ごたえのある水槽であった。手書きだろうと思われる解説パネルがとてもかわいい。国内移入のビワヒガイが展示されていたそうなのだが見つけることができなかった。奥に進むと、日本で最初のアクリルトンネルや、リュウグウノツカイのはく製、水槽のダイバーの紹介文、見学可能なバックヤードなど個性的なものがたくさんあった。全体的に大変見ごたえのある水族館でした。気になる方はぜひ訪れてみては?時間は12時、お腹もすいてきたので富山ブラックと呼ばれるご当地ラーメンを味わうべくお店を探し、向かった。富山ブラックとはとても濃い醤油ラーメンである。とても塩辛かったが、疲れた体に染み渡る、白米と非常に合うラーメンであった。その後、富山を離れ父親の待つ金沢に向かったが、待ち合わせの時間までまだ少しあったのでかつて訪れたことのある金沢のポイントでオオヨシノボリやカジカ中卵型の撮影をして時間をつぶすことにした。水温が大変冷たく体を震わせながら潜ったものの、思ったより魚が少ない。かつてオオヨシノボリが確認されたはずなのだが、見当たらない。結局、ほとんどなんの成果もなくこのポイントを後にし、父親と合流した。晩御飯には私の二十歳の誕生日ということもあり回らないお寿司屋さんに連れて行ってもらい、金沢の新鮮な魚介と日本酒に舌鼓を打った。その後、父親が住むアパートに泊めてもらいこの日は終了した。
3日目
(ここから淡水魚は出てきません。)
父親が前々から行きたいと言っていた白山白川郷ホワイトロードを抜けて、白川郷を見に行った。日本の原風景といった感じで美しかった。その後、私の好きなアニメである『氷菓』の舞台となった飛騨高山に向かった。特に作中に登場した喫茶店は内装もアニメと全く同じで感動した。
4日目
朝6時に父親のアパートを出発し、福井に向かった。目的地は福井県立恐竜博物館である(図4)。最近、恐竜がマイブームなのでこの機会にと訪れたのだが、大変良かった。展示を見ていると古生物学という学問がいかに難しいかがひしひしと伝わってきた。すでに絶滅してしまった生き物の生きた痕跡(化石や足跡など)から、その形態や生態、系統関係までが推測されていて驚かされることばかりであった。その後、勝山から高速に乗り、睡魔と格闘しながらも京都の自宅まで無事帰ってくることができた。
終わりに
全体を通してみると、もう少し採集をしてもよかったとも思うがやはり一人だとどうしてもモチベーションが上がらない。ただ、目的はすべて達成したので非常に満足度の高い遠征となった。最後までお付き合いいただきありがとうございます。
図1 トミヨ属淡水型
図2 カンキョウカジカ
図3 魚津水族館
図4 福井県立恐竜博物館
紀ノ川周辺でチュウガタスジシマドジョウを見に行ってきました。紀ノ川はチュウガタスジシマドジョウの本州での生息地の南限らしいです。
チュウガタスジシマドジョウ
これもチュウガタ。L5が点列っぽくなってますね。
別の個体ですが骨質板はこんな感じ。
ギギ
コウライモロコ
6月24日、淡水研の会員4人は本場(タイプ産地?※)のウドンを採集するため一路香川県へ出発した。この春入会したての筆者にとって初めてのウドン採集である。車で明石海峡大橋、大鳴門橋、小鳴門橋といくつもの橋を経て、高松市に到着したのは昼12時を少し過ぎた頃であった。すでに口の中はうどんの味、高松築港そばの「うどん・そうめん かじかわ」に入店した。もちもちとした讃岐うどんらしい麺は、うどん県香川に来たことを実感させてくれる味であった。一か所目のウドンサンプリングを終え、次に向かったのはもちろん某市内を流れる川である。そう、香川に来た2つ目の目標は、タイプ産地のチュウガタスジシマドジョウ(以下チュウスジ)を見ることなのである。採集を始めると、すぐにかわいいサイズのシマヒレヨシノボリが網に入り期待感が高まった。しかし、その後網に入るのはオオクチバスとシマヒレヨシノボリばかり。結局この川ではチュウスジに出会うことはできなかった。外来種がたくさん捕れたり、護岸工事のせいか水が極端に濁っていたりしたせいで、我々のQOLはかなり低下していた。こんな時はうどんに限る。採集後すぐに空いているうどん屋を探した。
2軒目は「ヨコクラうどん」である。明治期のものという風情ある建物に入ると、バリエーション豊かなうどんのメニューが目に入った。思い思いのうどんを堪能し、鋭気を回復した一行は、次の採集ポイントへ移動した。一か所目とは明らかに異なる雰囲気に胸を高鳴らせ、ガサガサを開始した。岸辺のエコトーンでは、ドジョウ、タモロコなどが捕れ、さらに早速チュウスジの稚魚も網に入った。成魚もいるはず、と採集をつづけること5分、チュウスジのたまり場を発見した。このポイントではチュウスジ以外にも、同じシマドジョウ属のオオシマドジョウも採集することができた。オオシマドジョウは鴨川でも見ることができる種であるが、この川のものは鴨川のものとは少し異なるように思えた。
1軒目のうどん
2軒目のうどん
タイプ産地?のチュウガタスジシマドジョウ
個体ごとに異なるL1斑が美しい
ウドン、チュウスジの採集にひと段落がついたため、最後の目的『ゆゆゆ』聖地巡礼のために観音寺市へ向かった。ご存じの方も多いと思われるが、『ゆゆゆ』とは2014年に放送された『結城友奈は勇者である』の愛称であり、本作は観音寺市をモデルとした讃州市を舞台に、中学生の少女たちが強大な敵と戦う物語である。残念ながら、アニメに疎い筆者は車内で繰り広げられる符牒のような会話に全くついていくことができなかった(『ゆゆゆ』に関するこの記事の記述はすべて筆者の復習に拠るところであり、正確性は担保できない。)が、初めての聖地巡礼はとても興味深いものであった。観音寺名物銭形砂絵を結城友奈の解説とともに眺め、作中に登場する砂浜で記念撮影を行ったのち、この旅最後のうどんを摂取しに「手打ちうどん つるや」へ。もちろんこのお店も作中に登場するのである。勇者たちの気配を感じながらうどんをすする先輩方を見ながら食べるうどんもまた格別であった。うどんと採集、どちらも堪能しようというよくばりな旅は、どちらの目標も達成して終えることができた。
それにしても、讃岐うどんの美味たるや尋常ではない。そのおいしさにはまってしまった筆者が、一週間もせぬうちに学食でうどんを注文してしまったのも、無理からぬことであろう。
※タイプ産地…その種の基準となる標本個体の産地。
チュウスジタイプ産地?のオオシマドジョウ
有明浜
錢形砂絵
3軒目のうどん
去る2月18日に、京の川の恵みを活かす会が主催する、賀茂川上流部での水生動物モニタリング調査に会員4名で参加させていただきました。当日は弱い雨が降るあいにくの天気ではありましたが、淡水研として活動していく上で貴重な経験をすることができました。
午前中からお昼にかけて、スギの人工林の間を流れる賀茂川上流本流部で水生動物を採集しました。過去に枝払いを行った明区と木が茂っている暗区での河川内の生物群集の違いを調べるために、明区と暗区に分けて調査を行いました。今回採集した会員たちは普段魚の採集を行うことが多いため、最初はその感覚で、網に入った落ち葉や砂の中から目に見える水生昆虫を選び出して確保していました。ですがベントスの組成を調べるためには、目で見える生物だけでなく落ち葉や砂に付着する小さな生物の情報も欠かせず、落ち葉や砂ごと回収して付着している生物を効率よく取り出すための手法を教えていただきました。筆者はベントスを採集しながらも、気の早いアジメドジョウが網に入るのではないかと期待していたのですが(アジメドジョウは冬期は礫中に潜って越冬し、春に出てくる)、まだ早かったようです。明区では川の中に光が達することで、藻類や、落ち葉を分解するバクテリアが育つことができ、それらを食べる水生昆虫などの小動物が豊富に存在することができます。一方川の中に光が届かない暗区では生物量が少ないため、渓流魚が大きく成長する(魚が太くなる)には川の中に光が届く明るい場所が必要なのだとのことです。また、当日見ることができた小さなカゲロウ類の多様な生態や、竹門先生が様々な団体と協力して行っている淀川の河口環境の再生など色々なお話を伺うことができ、普段目の前の魚だけに意識を奪われがちな筆者にとっては、とても視野が広がる時間になりました。
お菓子とコーヒーでひと休みした後は、当日新たに伐採してばらばらにしたスギを、河原から林内まで運ぶ作業に精を出しました。生のスギの丸太はとても重く、ぬかるむ坂道を丸太を抱えて登った筆者は、翌日全身筋肉痛に苦しみました。もっと腕力つけようと思いました。
その後は賀茂川漁業協同組合の本部に戻り、ニジマスの生簀にメバリングロッドに結んだトラウト用のスプーンを放り込んでニジマスを釣らせていただきました。筆者は釣りをするのが半年ぶりで、久々に魚の引きを味わえて楽しいひとときになりました。10匹ほど釣りを楽しんだ後に大きな網でごそっと掬っていただき、4人で50匹ほどのニジマスをいただきました。その場で締めて持ち帰り、塩焼きやちゃんちゃん焼き、炊き込みご飯などにしていただきました。臭みが全くなく大変美味で、丸太運びの心地よい疲労と、おいしいニジマスで満ち足りた気分で1日を終えました。
末筆になりますが、色々とご指導下さった竹門康弘先生はじめ京の川の恵みを活かす会の皆様、ニジマスやおやつなど色々いただき、魚の締め方なども教えて下さった澤健次様はじめ賀茂川漁業協同組合の皆様、たいへんお世話になりました。京の川の恵みを活かす会の活動にも、また是非参加させていただきたいと思います。これからも鴨川流域で淡水生物に関する活動を行っていきますので、今後とも宜しくお願い致します。
※川での作業中に写真を撮る余裕がなかったので、漁協の本部で見せていただいた魚たちとおいしいニジマスです。
アマゴ
タカハヤ
ニジマスのちゃんちゃん焼き
ニジマスの炊き込みご飯
1月22日、三重県某所。極寒の中、会員3人が網を振るっていた。ニシシマドジョウの姿を拝みたい。その一念である。シマドジョウ類の魅力に取り憑かれた者は、そう、たとえ試験前であっても構わずフィールドへ赴いてしまう。
最初のポイント。河川中流域の礫と砂の混じる場所である。冷たい流れに足を踏み入れ、砂の堆積する川底の緩い斜面に目を凝らす。砂に潜るカマツカが見えた。が、ニシシマドジョウの姿はない。シマドジョウ類がいかにも好みそうではあるが…。近くの岩場には、カワヨシノボリ、オイカワがわずかに見られた。植生のあるところにはスナヤツメ。結局ニシシマドジョウは見つけられなかった。
次のポイントは少し上流側。冬になって、植生も少なく閑散とした川辺。緩やかな流れの砂底にニシシマの姿はない。川の流量が減ってできたとみられる、流れから離れた礫底のプールにはオイカワとカワムツが群れを成していた。うーん、ここにもニシシマはいないのか…そう思っていたところ、「ニシシマ入った!」と一人の会員が歓喜の声を上げる。一体どこにいたのか。それは、礫底のプールの中にわずかにたまった荒い砂利の領域であった。その後、続いて数個体を発見。石の転がる環境にも低密度ながら生息を確認できた。ニシシマドジョウはやはり素晴らしい。芸術と見紛う見事な点列模様である。大型の雄個体はまさに圧巻。一方、かわいらしい若い個体も透き通るような魚体が美しい。個体によって模様が異なるのもシマドジョウ類の魅力である。
辺りも暗くなってきた頃、中流域のポイントへ。水草の繁茂する砂底の環境。これはニシシマドジョウが居そうである。魚影が濃く、カマツカやカワムツが多く見られた。しかし、期待とは裏腹にニシシマドジョウは確認できなかった。
せっかく三重まで来たので、トウカイコガタスジシマドジョウを見ることにした。向かったのは平野部の泥の堆積するポイントである。何度か網を振ってみると、泥の中から美しい点列模様が。やったぜ!とよく見てみると、なんとニシシマドジョウ。2つ目のポイントとの環境の違いに一同愕然。ドジョウやタモロコなど、同所的に見られた魚類からも生息環境の違いを感じた。
最後はスガキヤでラーメン。東海地方に来ると必ずと言っていいほど食べている。今回もあっさり豚骨で遠征を締めることとした。
以上、乙女心のごとき生息環境の嗜好性を持つニシシマドジョウに、頭を悩ます大学生の遠征記録であった。もちろん、期末試験の結果は知る由もない。
ニシシマドジョウ雄
ニシシマドジョウ
タモロコ
スガキヤ
あけましておめでとうございます。2023年の採集初めとして、1回生中心で湖東を訪れ採集を行いました。アブラボテやドンコ、オヤニラミなど年明け早々様々な魚たちを見ることができ、今年もいい1年になりそうです。オヤニラミは京都府では天然記念物である一方で、滋賀県では人為的な移入であり、滋賀県の在来水生生物を捕食する懸念があります。
アブラボテ Tanakia limbata
オヤニラミ Coreoperca herzi
なぜだか突然、ムギツクが見たい!という気分になったので、夕方にちょっとだけ鴨川に行ってきました。
家を出て自転車で10分の位置で、適当に川に入ります。ムギツクはこぶし大~くらいの大きさの石が多くて岸際に植生があるところに多い印象なので、そういう場所を探すと狙い通り網に入りました。
尖った顔つきに、細長い体の中央を走る黒色縦帯、少し盛り上がった背中、淡いオレンジ色の鰭、見間違えようもなくムギツクです。油色とでも言えばいいのでしょうか、体色が全体にぬめっと黒ずみ、家の水槽にいる若いムギツクとは違った色合いが渋いです。若い個体の黄みが強い鮮やかな色彩もいいのですが、成魚の、これまでの苦労が鱗に沈着したかのような風格ある色合いも魅力的です。
この1匹をなめるように眺め回し、心にムギツク成分が満たされたのでとっとと帰宅して課題に励みました。
後期が始まって間もない10月初旬、ゼニタナゴを追って東北に赴いてきました。タナゴといえば春から夏の婚姻色のイメージが強いかもしれませんが、ゼニタナゴは日本のタナゴでは数少ない秋産卵であるため、独特の桃紫色にはこの時期でないと出会えないのです。3日間、東北の水辺を彷徨して見ることのできた淡水魚をいくつか紹介します。
ゼニタナゴ Acheilognathus typus (Bleeker, 1863)
東日本を代表するタナゴですが、関東地方ではほぼ絶滅状態で、日本で野生の個体が見られる地域は東北地方の一部だけです。
日本産のタナゴの中では大型の部類で、体長7,8㎝くらいまでの個体に出会えました。黒く縁取られた細かい鱗と、鰭条に黒色の模様が散らばる背鰭と臀鰭、淡褐色の地色に鰓蓋から体側にかけてほんのりと桃紫色に染まった色彩が、他のどの日本産タナゴとも違う独特の雰囲気を醸し出しています。日本産タナゴの多くにある、尾鰭の付け根から体側につながる青の縦条が見られないのも特徴です。上が雄、下が雌の写真です。雄の桃紫色の婚姻色もまだ仄かで、雌も産卵管が伸びてきているものの伸びきっている個体はおらず、これから繁殖の最盛期に向かうのだろうという感じでした。
また、昨年秋生まれと思われる体長4㎝弱ほどの個体も見ることができ、今回の地点では再生産されているようです。ですが同じ場所にニシキゴイが放されていて、もしかしたらこのゼニタナゴたちも移入なんじゃ・・・、という疑念も浮かびました。
キタノアカヒレタビラ Acheilognathus tabira tohokuensis Arai, Fujikawa and Nagata, 2007
学名に「東北」の名を冠した唯一の淡水魚です。本当にたくさんいました。今年生まれの小型の個体が大半だった中で、写真の個体は比較的わかりやすく特徴の出た個体です。鰓蓋の後ろにぼんやりとですが、所謂タビラ斑があり、臀鰭の縁が赤く色づき、背鰭鰭条には白の縦条のような模様があります。ゼニタナゴと比較して明らかに鱗が大きく、尾鰭付け根の青の縦条もはっきりしています。近縁のアカヒレタビラと比べて、スリムで吻も少し長いような印象を受けました。婚姻色の時期にまた訪れてみたいです。
トウヨシノボリ Rhinogobius sp. OR
トウヨシノボリは、学名がまだついていないことからも分かるように、分類が決まっていないヨシノボリ属の一群です。トウヨシ類の分類の変遷とかは筆者は全然詳しくないので、その辺はヨシノボリが専門の会員がいつか解説してくれるのをご期待ください。
上下の写真の個体は同じ水系で採集した物ですが、とても同じ種類とは思えないほど顔が違いますね。上の写真の顔が丸っこく第一背鰭が短い個体は溜池で捕れたもの、下の写真の吻が長く第一背鰭と第二背鰭が伸長している個体は河川で捕れた、海から遡上したと思われるものです。写真ではわかりにくいですが、トウヨシノボリの名前の由来である尾鰭付け根の橙色は、上の溜池の個体でははっきりせず、下の河川の個体では明瞭です。
なお、上の写真の個体はタナゴを釣っていたらかかりました。肉食のヨシノボリがタナゴ釣り用のグルテンに食いついたので驚きましたが、上から落ちてきたものに反応しただけでしょう。下の個体は手網で採集しました。大型の個体が多く、入った地点では優占していて、トウヨシ10に対してカジカ大卵型が1くらいの割合でした。同所で他のヨシノボリは、オオヨシノボリが1匹見られただけでした。
オイカワ Opsariichthys platypus (Temminck and Schlegel,1846)
なんだ、オイカワかよと思った方もおられるかもしれません。そう、なんの変哲もないオイカワなのですが、こいつが曲者で、東北では国内外来種にあたります。おそらくアユの種苗に混じって導入されたのだと思いますが、入った川ではたくさんいました。同じ場所ではウグイとアブラハヤも網に入りました。そういった魚種たちと競争が生じているかもしれません。
今回で会うことのできたタナゴは、撮影後、全個体現地に放しました。上で紹介した魚の他にはスナヤツメ、ギンブナ、モツゴ、シナイモツゴ(たぶん)、ドジョウ(在来系統)、カジカ中卵型、ウキゴリ、シマウキゴリ、ヌマチチブを見ることができました。写真の一部はフォトギャラリーのページにあるので、そちらもご覧下さい。
最後に、ゼニタナゴは環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類に、複数県で県の天然記念物に指定され、採集が規制されていない県でも保護区域などが設定されています。規則を遵守すると共に、モラルある採集を行いましょう。
それにしても東北、遠かった・・・。