公開質問状の内容及び回答

このページには、学内諸団体が公表している、総長候補者への公開質問状を掲載します。また各候補者からの回答・反応が公開されましたらそちらも合わせて掲示します。その他団体の公開質問状について情報をお持ちの方はお問い合わせフォームよりお知らせをお願いいたします。

更新履歴

7/11 「自由の学風にふさわしい京大総長を求める会」の公開質問状(回答期限:7月10日)に対する各候補者からの回答を掲載しました。

7/13 京都大学職員組合の公開質問状(回答期限:7月10日)に対する各候補者からの回答を掲載しました。

7/13 吉田寮自治会の公開質問状(回答期限:7月13日)に対する各候補者からの回答状況を掲載しました。

7/14  「学問と植民地主義について考える会」の公開質問状(回答期限:7月14日)に対する各候補者からの回答状況を掲載しました。

自由の学風にふさわしい京大総長を求める会の公開質問状

質問1:学生との対話のチャネル

 京都大学現執行部は、学生担当副学長による月1回の学生向け情報公開連絡会を廃止し、学生との少人数での話し合いも打ち切るなど、学生との対話のチャネルをせばめているように思われます。その結果、当事者の学生と事前の意見交換を全く行わないまま、学生の大きな利害が関係する事項についての決定を下すことになっています。これは学生の自主性を尊重するという京都大学の教育方針とも整合しないように見えますし、学生側の実情に合わないちぐはぐな判断をしてしまうという弊害も起きているように思われます。

 こうした、京都大学の学生に関する事項の決定のあり方、学生と対話する姿勢についてどのようにお考えでしょうか。


<各候補者の回答>


〇大嶋正裕氏の回答

学生との対話は大事にしたいと思います。ただし、昔のような団交的・圧迫的な話し合いの仕方は好みません。現在、特定の学生との情報公開連絡会は廃止しましたが、キャンパスライフの配信や意見箱などを設置し、学生とのチャンネルは新たに作っているほか、学生担当副学長と学生の対話の窓口はまだ絶たれてはいないと聞いております。

〇北野正雄氏

(回答なし)

〇寶馨氏の回答

過去6年にわたる山極現総長及び執行部の運営に一定の敬意を払いつつも、ご指摘のとおり、教職員や学生との対話が少なくなったのは否めない事実だと思います。この点に関し、大胆な転換が必要です。私は「所信」のなかで、京都大学が世界に開かれた大学として、性、国籍、民族、宗教の違い、障がいの有無に関わらず、すべての構成員にとって多様性が尊重され、生活しやすい環境になるように努めたいと書きました。そのためにも、学生はもちろん、学内の教職員、学外の市民との対話や合意形成を積極的に行います。その一環として、学生との定期的な対話のチャネルを復活させ、信頼関係を築いていくことは、大学として当然であると考えます。

〇時任宣博氏の回答

大学執行部が学生との対話の機会を狭めているとのご指摘ですが、現在の状況を生み出した背景も含めてその要因をしっかりと検討した上で、本学所属の学生全体に平和な雰囲気での情報公開連絡ができる環境や仕組みを再構築できれば良いと思います。学生に関する事項にも色々な内容、規模のものがある上に、対象を限定するものなどもあるかと思いますので、対話のシステムを構築するにしても、フレキシブルで多様な窓口を用意しなければ機能しないように思います。

〇湊長博氏

(回答なし)

〇村中孝史氏

(回答なし)

質問2:吉田寮裁判

 京都大学現執行部は2019年4月26日に吉田寮生20名を選択して建物明渡請求訴訟を京都地方裁判所に起こしました。また、コロナ禍さなかの2020年3月31日に新たに25名を追加提訴しました。まもなく125年周年を迎える京大の歴史で、初めて大学当局が学生を裁判に訴えるという事態が起こりました。

第一次提訴の直前、2019年2月20日に吉田寮自治会は2条件(2015年改修済み食堂棟の利用、清掃・点検のための現棟立ち入り)が認められるならば全寮生が新棟に移転すると表明しました。しかし、現執行部は、新棟移転を受け入れた吉田寮自治会の意向を検討せず、教授会や学内委員会でも審議しないまま提訴を決定しました。

この吉田寮裁判の今後の対応について、どのようにお考えですか? また、裁判を取り下げる選択肢についてのお考えもお聞かせください。


<各候補者の回答>


〇大嶋正裕氏の回答

学生を訴えたことは私にとってもやはり衝撃でした。私が聞いているのは、次のようなことです。⾷堂棟の利⽤、清掃・点検のための現棟立ち入りを認めることは、吉田寮の老朽化に対する寮生の安全性の確保にならない。また、学生以外の者が現棟に居住し続けており、寮生が誰なのかを確認できず、新棟や民間アパートへの移転による合意がどこまで取れているのかが不明であったため、司法の手続きをとったと聞いています。私としては、学生が、自分の命を盾に、吉田寮に立てこもるような状況は、できるだけ速やかに解消すべきと考えます。そのための話し合いのなかで、裁判についても議論されるべきと考えます。

〇北野正雄氏

(回答なし)

〇寶馨氏の回答

吉田寮裁判は、不幸なことに、京都大学における近年の「変化」を象徴する出来事となってしまいました。本裁判によって、告訴の対象とされた方々はもちろん、多くの学生とその家族・関係者、教職員が不安な気持ちを抱かれたことと思います。学内外の信頼を取り戻すためにも、まずは大学が学生を告訴しているという状態を一刻も早く解消し、あらためて当事者との対話を再開する必要があります。そして、これまで様々な形で吉田寮の課題に尽力されてきた学生・教職員の対話の蓄積をふまえて、できるだけ速やかな解決を図りたいと考えています。

〇時任宣博氏の回答

吉田寮問題にかかる裁判に関しては、提訴(追加提訴も含む)に至る過程で、大学執行部と寮生側で問題解決に対する考え方の違いがあって現状に至ったと推察します。私は本件に関する詳細な情報を持ち合わせておりませんので、本提訴事案にかかる本学の今後の対応について現時点でのコメントは差し控えますが、早期の解決が望ましいことは確かです。

〇湊長博氏

(回答なし)

〇村中孝史氏

(回答なし)

質問3:立看板問題

 京都大学現執行部は、2018年12月に「京都大学立看板規程」を制定し、翌年5月にこの規程を根拠として立看板を撤去しました。現執行部は、京都市からの「指導」を受けて、立看板撤去を決めました。これを歓迎する意見もあった一方で、「京都市屋外広告物条例」の主眼が営利目的の広告物の取り締まりである以上、京都市当局と交渉しながら大学の外に向けて置かれる立看を存続させるべきだという意見や、もっと歩行者の安全性と景観に配慮したものにすれば復活しても良いのではないかという意見もメディアで取り上げられました。

「京都大学立看板規程」や立看文化の存続について、どのようにお考えですか?


<各候補者の回答>


〇大嶋正裕氏の回答

立て看板の禁止・撤去が、大学の構成員に閉塞感をもたらす原因の一つになっているのだとすれば、今一度議論してもよいと考えます。歩⾏者の安全性への配慮の方法、近隣住民の理解を如何に得るか、大学が京都市の中に作り出す景観とはなにかということも含めて議論すべきと思います。

〇北野正雄氏

(回答なし)

〇寶馨氏の回答

学部時代から京都大学で過ごしてきた身とすれば、立看板のない風景には、綺麗になった印象はあるものの、一抹の寂しさを覚えます。一方で、本問題は、京都市側との再交渉や学内規程との兼ね合いもあるため、容易に解決しない問題であると捉えています。まずは京都市側との再交渉を求めるなかで、双方の妥協点を見い出しつつ、より現実的な範囲で「京都大学立看板規程」の改正に向けて努力していきたいと思います。その際に、学生、教職員、京都大学職員組合、市民の方々との対話を踏まえて、あるべき立看文化の存続について検討していきたいと考えています。

〇時任宣博氏の回答

立看板問題に関しては、「立看規程」の制定により、条例遵守、景観・安全性の確保の観点から、その規格や設置場所等が定められたこと、また設置責任者や設置許可期間についても大学内の活動として適切なものとなるようにルールが定められたと理解しています。ただ、その後の立看文化等に関する報道等では、本学外構周辺における立看での対外情報発信活動が制限されたのは問題である、という扱いが多かったと思います。立看文化の存続を模索するのであれば、節度を守った形での設置や表現を現規程の下で実行しつつ、不都合な点を解消する意見・提案を大学当局に正当な手段で届けて改善を図る形が良いと思います。

〇湊長博氏

(回答なし)

〇村中孝史氏

(回答なし)

質問4:学生処分

 京都大学現執行部は、2019年9月10日付で、3名の学生を停学(無期)処分としました。その内の2名はオープンキャンパス初日(2018年8月9日)に本部構内のクスノキ東側に設置された立看板を撤去する職員の行為を妨害したことに加えて、厚生課窓口及び廊下で職員の行為を妨害したという理由、もう1名は後者の理由に限られます。

この処分は、重すぎる処罰だという意見が教員の中に多数あります。実際、教授会での長時間におよぶ審議を経て部局から提出された学生の処分案を、学生懲戒委員会が軽すぎるということで二度も突き返しました。

 このような学生処分のあり方や、執行部と学部の自治のあり方について、どのようにお考えですか?


<各候補者の回答>


〇大嶋正裕氏の回答

学⽣懲戒委員会の委員の一人として、私にも判断の責任があると思います。学生らの主義主張および目的と、行った暴力的な行為自体は別なものであると考えます。度重なる同様の行為に対する反省を促し、行為自体の在り方を考えてもらうため、放学ではなく、停学としたものでした。この学生処分の件だけをとって、学生処分の在り方や執行部の自治の在り方を議論するのは短絡的かと考えます。

〇北野正雄氏

(回答なし)

〇寶馨氏の回答

対話を重んじ、話し合いによって問題の解決を図るという基本方針に立てば、暴力的行為はその対極にあるものとして厳しく諫められなければなりません。しかしながら、厳罰が同様の事案の再発を抑止するという過度に懲罰主義的な対応は、学問の府としての大学においてふさわしいものとは言えないと考えます。また、一般論として、学生の教育に直接の当事者として関わっている部局で審議された懲戒処分案は、学部自治の観点からも尊重されるべきではないかと考えます。

ご指摘の事案では、部局(研究所等は除く)の長全員が参加する学生懲戒委員会(議長は総長)が導いた結論と、当該学生の所属する部局の結論が食い違った結果、2度のやりとりを経て最終的に処分案が決定されたものです。学生懲戒委員会は、それに先立つ補導会議(議長は厚生補導担当の副学長、総長はオブザーバーとして出席)において時間をかけて詳しく審議された内容と、過去の処分事例をも勘案して結論します。結果的に、学生懲戒委員会の処分の量定案と、部局の処分の量定案との間で大きな乖離があったわけではありませんでした。

部局、補導会議、学生懲戒委員会それぞれにおいて慎重に審議を重ねるこのような学生処分の進め方や、最終的な決定に至るまでに要する時間の長さなどについて、改善の余地があるとすれば、今後検討を重ねていく必要があると考えます。

〇時任宣博氏の回答

この質問にある学生処分の件については、処分理由に挙げられている妨害行為だけでなく、そこに至る経緯と当事者間の意見の隔たりが処分案に反映されていると推察致します。その結果、学部(部局)と大学執行部との間で処分案の内容に差が生まれたものと思います。学部の自治と大学全体のガバナンス、マネジメントは、時に互いに相容れない場合もあるかと思いますが、互いの立場を理解し双方が許容可能な解を求める不断の努力が必要だと思います。

〇湊長博氏

(回答なし)

〇村中孝史氏

(回答なし)

質問5:修学支援問題

2020年4月施行の「大学等における修学の支援に関する法律」は、修学支援の対象を年収380万円未満の世帯に限定した上で、在学生(大学2~4年生)の採用者に対しては「GPA(平均成績)等が上位1/2以上であること」「修得単位数が標準単位数以上であること」などの条件を課しています。また、支援対象の学生が所属する大学等の機関に対しては、「実務経験のある教員による授業科目が標準単位数の1割以上、配置されていること」「法人の「理事」に産業界等の外部人材を複数任命していること」といった要件を課しました。現時点では京都大学は要件を満たしているとされていますが、今後さらに要件が厳しくされることも考えられます。

修学支援をめぐる政府・文部科学省の方針に対して、京都大学としてどのような方針で対応を進めるべきだとお考えですか?


<各候補者の回答>


〇大嶋正裕氏の回答

この条件を聞いたとき、修学支援の条件に、なぜ実務経験のある教員の条件ならびに、理事の条件が入るのかが理解できなかった記憶があります。今後、修学支援の条件として、ふさわしくないものが加わった場合について、国大協や国立大学の各種の集まりで議論し、政府や文科省に物申す必要があると思います。一方で、大学としては、一部取り組みは始まっていますが、政府からの財源だけに頼らず、困窮する学生にしっかりと修学支援していくさまざまなプログラムを作り運用していくべきと考えます。

〇北野正雄氏

(回答なし)

〇寶馨氏の回答

現時点の本学の財政状況では、修学支援対象となる学生に一定の厚生的条件が課されていることはやむを得ないと考えますが、その条件が、有為の学生が教育を受ける機会を奪われることのないように、できるだけ広く支援をする必要があります。「実務経験のある教員」や「産業界等」出身理事の受け入れを条件とすることは、大学の自治が損なわれる可能性もあり、修学支援とは切り離すべきだと考えます。修学支援をめぐる政府・文科省の方針に対しては、最近の新型コロナウイルスの流行に際しての留学生に対する支援の条件化に山極現総長が反対の意思表示をされたように、是々非々の立場で意見の表明と交渉を行い、京都大学のみならず我が国の学生が等しく教育を受ける権利を行使できるように声をあげていきたいと考えます。

〇時任宣博氏の回答

大学における修学支援の仕組みが、政府・文部科学省の施策として大きく変革される可能性がありますが、本学での支援制度設計は、現状で真に支援を必要としている学生に適切に対応できるように配慮されるべきであり、政府施策に迎合する形にとらわれないことが重要と思います。また、各種の奨学金や授業料免除等の制度も変革が予想されますが、日本人学生と外国人留学生の支援枠と対象者選定の条件など、より公平な制度設計が必要だと感じております。

〇湊長博氏

(回答なし)

〇村中孝史氏

(回答なし)

質問6:いまの京都大学に必要なもの

 いまの京都大学に最も必要なものを一言で表すと何でしょうか。その理由とそれを得るための方策もあわせてお聞かせください。


<各候補者の回答>


〇大嶋正裕氏の回答

京都大学に入学したとき、あるいは京都大学で働き始めたときに思い描いていた大学の未来と何か違う、昔に比べて文科省等の外部から押し付けられたものに従わざるを得ない状況が続いているからだと考えます。昔はよかったと嘆いていても仕方ありません。今の状況を鑑みて、理想を目指して最善を目指し、前に進まないといけないと考えます。何もしないのは退化です。退化でも単なる変化でもなく、進化しないといけないと思います。

大学の進化は、皆の協力が必要です。そのためには対話と理解が必要だと考えます。

〇北野正雄氏

(回答なし)

〇寶馨氏の回答

一言で言えば、「風」が必要です。現執行部のもとでも、「自由」は謳われてきました。しかし、「風」の方はどうでしょうか。京都大学の「自由の学風」は、「風」であることによって真価を発揮すると考えます。近年、この「風」が弱くなり、かつての“京大らしさ”が失われつつあります。私は、「自由の学風」を学内の隅々まで行き届かせて、風通しのよい京都大学を実現したいと考えています。そのための不可欠な方法が「対話」です。対話のない場所で優れた教育・研究・医療は生まれません。対話を通して様々な立場の方々と理解し合うことは、自己と他者の自由や多様性を尊重し、「自由の学風」をより強くすることにつながります。しかし、私一人では対話もできなければ、新たな「風」を起こすこともできません。ぜひ皆さまのご協力・ご支援を得て、“京大らしさ”を取り戻し、世界に貢献できる進取の京都大学を実現していきたいと考えています。

〇時任宣博氏の回答

京都大学は、国内外に誇る総合研究大学として発展しており、その先進性、独創性は、世界的に卓越した知の創造と行動力豊かな有為な人材の輩出につながっています。そして、自由の学風に基づく京都大学独特の雰囲気が、学生、教職員を問わず構成員各自の日々の活動の源になっていると思います。しかし、国立大学法人化後に直面した大学改革、機能強化等の各種政府施策への対応は、ともすれば大学を構成する各部局、教職員、学生の活動を委縮させる状況を生み出し、本学が理想とする大学運営に少なからず負の影響を与えてきたと言わざるを得ません。私は、教職員、学生の皆さんが、本学の一員であることに誇りと自信をもって、その独創性に富んだ活力を最大限発揮できる研究教育環境を整えるべきだと考えています。その結果、多様な学術分野を包含する京都大学が、各部局の特色に配慮しつつ多分野共同体としての教育研究活動を国内外にアピールすることで、世界に冠たる総合大学としてさらに大きく飛躍することができると考えています。

〇湊長博氏

(回答なし)

〇村中孝史氏

(回答なし)

京都大学職員組合の公開質問状

質問1:京都大学の存在意義と進むべき方向について

 我が国有数の学術教育機関である、京都大学の存在意義と今後進むべき方向についてどのようにお考えですか。


<各候補者の回答>

【大 嶋】

 世界トップレベルの研究の継続ならびに世界で活躍できる人材の育成を通して、国内はもとより世界のリーディング大学であり続けられるよう努力します。また、京都という地にある利点を生かして、体制に迎合しないユニークさと多様性を堅持し進むべきと考えます。


【北 野】未回答


【 寶 】

 京都大学の存在意義、今後進むべき方向とは、世界規模で進む分断や対立を直視し、自由と自治の精神の下に、豊かな学知を生み出し、優れた人財を育て世に送り出して、地球社会の調和ある共存と持続的平和の確立に貢献していくことであると考えます。


【時 任】

 京都大学は、国内外に誇る総合研究大学として発展しており、その先進性、独創性は、世界的に卓越した知の創造と行動力豊かな有為な人材の輩出につながっています。そして、自由の学風に基づく京都大学独特の雰囲気が、学生、教職員を問わず構成員各自の日々の活動の源になっていると思います。しかし、国立大学法人化後に直面した大学改革、機能強化等の各種政府施策への対応は、ともすれば大学を構成する各部局、教職員、学生の活動を委縮させる状況を生み出し、本学が理想とする大学運営に少なからず負の影響を与えてきたと言わざるを得ません。私は、教職員、学生の皆さんが、本学の一員であることに誇りと自信をもって、その独創性に富んだ活力を最大限発揮できる研究教育環境を整えるべきだと考えています。その結果、多様な学術分野を包含する京都大学が、各部局の特色に配慮しつつ多分野共同体としての教育研究活動を国内外にアピールすることで、世界に冠たる総合大学としてさらに大きく飛躍することができると考えています。


【 湊 】

 教職員用ポータルサイトのビデオメッセージで申し上げたので、御参照いただければと思います。


【村 中】

 学問の府としての大学と、その基礎理念である学問の自由を尊重し、国立大学法人の枠組みの中で、京都大学を発展させていきたいと思います。



質問2:政府の科学政策について

 現在、国会において科学技術基本法の改正案を審議しています。改正案では、これまで科学技術基本法において支援対象から除外されてきた「人文社会科学」を支援対象に含めると同時に、「イノベーションの創出」という目的を掲げ、「研究開発の成果の実用化によるイノベーションの創出の振興」に務めることに重点を置いています。また、「科学技術・イノベーションの創出の振興に関する方針」にしたがって、国や地方公共団体に加えて、「研究開発法人及び大学等」にも、「振興方針にのっとり」活動を行なう「責務」が課されることになります。

 この科学技術基本法改正案についてどのようにお考えですか?


<各候補者の回答>

【大 嶋】

 ⼈⽂社会科学が含まれたことは、大変よかったと思います。これからのイノベーションは、単に、素材の開発や道具の開発だけでは決して達成できないものになってきています。⼈⽂社会科学と理学・工学・医学などの理系の学理との融合があればこそ果たせるものになってきていると感じています。課題として、大学において、どう文理の融合を促進していくかです。それぞれの分野でしっかりとした基盤をもって学理を進めた上で、融合できる適切な場をどのように提供していくかをしっかり考える必要があります。


【北 野】未回答


【 寶 】

 私は長年防災研究に携わるなかで、基礎研究と応用研究の連動の重要性を痛感してきました。しかるに本法改正案は、「成果」と「実用化」が強調されているため、基礎研究の持つ意義が軽んじられる可能性があります。京都大学は基礎・応用双方の研究に従事する幅広い研究者が揃っていることが強みであり、それは「実用化」という基準では推し量れない財産だと考えています。また、本法改正案では「人文社会科学」が支援対象となりました。これは評価できる側面もある一方で、その「支援」により人文・社会科学が「イノベーションの創出」という目的に向け、選別される可能性を含んでいます。結果的に、人文・社会科学にも「成果」と「実用化」が強調され、長い時間を通して育まれる人文知などが評価の対象となりにくくなる危険性があります。自然科学の基礎研究と同様、短期的で分かりやすい「評価」でのみ人文・社会科学の成果を評価しないことが、京都大学の伝統的な学知を育み、多くの国民から信頼を得てきたことを今一度振り返る必要があります。


【時 任】

 これまで、科学技術基本法の支援対象外とされていた「人文社会科学」が他の学術分野と同等に同法の支援対象に加えられることは、一時報道されていた人文社会科学分野軽視の政府方針から見れば歓迎すべきことかもしれませんが、本来大学等のアカデミアで研究者が自主的、自発的に定めて取り組むべき研究目標・目的を、国主導の政策の一環として具体的な形で誘導されることには抵抗を感じます。「イノベーションの創出」に関しても同様で、学術分野の自発的な発展、学理の確立という本質的な命題を顧みず、「成果の実用化」という表現に代表される出口指向重視の研究を推奨する施策だけでは、長期的な学術の発展は期待できないと思います。もちろん、応用・実用に近い分野での対応は積極的に進めるべきですが、純粋に学問的興味から取り組む基礎的な研究にも十分な理解と支援があるべきだと考えています。


【 湊 】

 科学技術基本法制定後、四半世紀ぶりの改正ですが、これにより新たな五年ごとの科学技術基本計画が策定されるので重要であり、今回ようやく人文社会科学が対象に含まれたことは、京大が唯一指定大学構想の柱に人文社会科学の発信を掲げていることもあり、積極的に受け止めることができると思います。ただ、基本法制定に主に関わっている総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)には、現在アカデミア(大学)に基礎をおく常勤議員が含まれていません。従って、人文社会科学のあり方やイノベーションの創出の考え方が、我々国立大学の特性や使命と一致するかについては、慎重に見極めていく必要があると思いますし、同法9条もそれへの配慮を求めているところです。以上を踏まえ、京都大学の果たすべき役割を見定めつつ、国の政策に貢献できるよう努力したいと考えています。


【村 中】

 法律は国民の意思を反映する国会で決められるものですので、国立大学法人として尊重すべきものであると考えています。また、この法律の趣旨は、今回の改正だけを取り上げて理解すべきでなく、法律全体をみて議論すべきであると考えています。


質問3:教員の年俸制度導入について

 文部科学省は2019年に「国立大学法人等人事給与マネジメント改革に関するガイドライン」を定め、全教員に対する業績評価の実施とその評価結果を給与(昇給)に反映させる仕組みの導入を推奨しています。近年では静岡大学や富山大学が全教員の年俸制に踏み切りました。本学においても、年俸制を導入していないために運営費交付金を減額されていることを理由として、年俸制度の導入を検討していると総務担当理事が組合に対して説明しました。

 教員を対象とした年俸制度導入についてどのようにお考えですか?


<各候補者の回答>

【大 嶋】

 現在、本部の人事制度委員会と業績評価制度等検討会で、業績評価制度のありかた、また、それに関連する年俸制も含めた給与制度の在り方について検討しています。京大らしい制度はいかにあるべきか、構成員がやる気のでる制度にするためにどうあるべきかなど、議論を重ねています。拙速な導入は避け、合意をへて執行するべきと考えています。


【北 野】未回答


【 寶 】

 給与制度は教職員とその家族の人生設計に大きく関わるものであり、その変更には慎重を期すべきであると考えます。他方で、年俸制の導入は運営費交付金の増減と紐付けされている部分があるため、導入への圧力が強まっていることも事実です。しかし、現在のところ、「業績評価」の基準は分野によって差が大きく、不明瞭なままになっています。質問2の回答で述べたように、京都大学の強みは、多様な評価を前提とした、それ自体として認められるさまざまな教育・研究分野が存在することです。その意味で、拙速な「業績評価」及び年俸制の導入は京都大学の研究を弱めていく可能性があります。年俸制の導入に対しては、教員の意向を最優先に考え、それを希望する人、希望しない人の両者が京都大学で安心して働ける環境を維持していきたいと考えています。


【時 任】

 まず、この質問の主題となっている「年俸制」という制度の定義と実態がどのようなものか、という点を明確にしないと適切な回答ができない可能性がありますことをご承知おきください。他大学が導入に踏み切ったという年俸制がどのような制度設計に基づくものか、詳細な情報を持ち合わせておりませんので、それらとの比較についてはコメントを差し控えますが、本学で現在検討されている年俸制度は、一時本学でも60歳以上の教員などに転換が推奨された“年俸制”とは異なる”新年俸制“と言われるものだと理解しています。その実態は、従前の俸給表に基づく月給制と実質的には大差ないものと聞いております。問題点としては、透明性・公平性を確保した業績評価の実施とその給与(昇給)への反映することが求められている点が挙げられます。しかし、これまで京都大学で実施してきた各教員への評価と給与(昇給)の関係が特に問題をはらんでいるものでなければ、新しい業績評価制度においても、各教員の業績が従来の評価システムと同等の基準で評価されるよう工夫されると期待します。


【 湊 】

 京都大学でも従前以上に教員の流動化が進んでいます。その結果、現在のような年功的な賃金制度が必ずしも適切な処遇につながらない場面もあるのではないかと思います。また、教員によって、教育、研究、医療といった本来業務や、入試や管理運営といった業務の負担にばらつきがあるにもかかわらず、それらが適切に処遇に反映できていない場合もあるように思います。国としては、教員の新しい年俸制(従来の退職金制度を残した形での年俸制)に移行することをすでに決定しているので、教員の業績を全体として適切に反映した年俸制のあり方について、全学での充分な議論により検討を進めるべきであると考えます


【村 中】

 「年俸制」が意図するものがはっきりしないように感じます。現在の給与制度は、いわゆる職能資格給制度ですが、年功的な運用がされている結果、「能力」に見合った処遇となっているわけではありません。また、手当の種類や額が限定されている結果、教員の負担を適切に給与額に反映できていない、という面もあるように感じます。そのような問題点を是正することは必要だと感じますので、年俸制を導入するなら、そのような改善が可能となるような内容とすべきでしょう。

質問4:常勤教職員の削減計画について

 本学では2013年に定員削減計画を定め、教員については准教授の人件費を1.0ポイントとして2014年から8年間で282ポイントの削減、職員についてはやはり2014年から8年間で計263人の常勤職員を削減することとして、その後この計画にしたがって常勤教職員削減を進めてきました。常勤教員が退職した場合の対応として、各部局は定年退職した場合にも後任人事の立ち上げを数年間見合わせ、助教を任期付きとするなどの対応を迫られてきました。常勤職員が退職した場合には非常勤職員(派遣職員を含む)で人員を補充する一方、事務の合理化を理由として職場単位の再編(文系共通事務部や理系共通事務部の導入等)を行い、財務会計システム、人事給与システム、教務情報システムの導入を進めてきました。その結果として、常勤職員の仕事量は増大し、休日出勤まで含む膨大な超過勤務を強いられている例も少なくありません。

 常勤教職員の削減計画についてどのようにお考えですか?


<各候補者の回答>

【大 嶋】

 これ以上の教職員の定員削減は、4期においては、可能な限り避けられるよう、努力したいと考えます。定員削減が先にありではなく、仕事の効率化が先にあり、構成員のワークライフバランスを最適に保ったうえで、より大学が活性化するように人員配置を考えていくべきと思います。


【北 野】未回答


【 寶 】

 教職員の削減方針は2013年の策定から7年経過し、雇用状況も変わってきました。若手教員比率を増やすことも実施されています。時間と仕事に追われる現状を改善し、教職員が本来あるべき姿に戻れるようにしたいと考えます。そのため、次期中期(第4期)においては、常勤教職員の削減を停止したいと考えます。


【時 任】

 8年間にわたる常勤教職員の削減計画は、少なからず本学の活力低下を招いたと実感しています。教員については、各部局における新分野開拓への挑戦意欲がそがれ、人事計画の停滞や若手教員ポストの削減により研究教育両面での成果縮小と現員教員の負担増を招いています。職員の定員削減では、各種競争的資金獲得の結果必然的に増加する事務的業務、法人化後に新たに対応を迫られた各種法令順守業務など、多様化と増加の一途をたどる各種用務を処理するために非常勤職員での人員補充が必然の結果となっています。これらの定員削減計画の主な根拠となっているのが、国からの運営交付金定率削減への対応ということですが、それに加えて、全学的な新規人員配置事業への原資拠出も加わっての結果であると認識しています。現在の削減計画終了後は、新たな定員削減は行わない方策を是非検討すべきだと思います。とは言え、運営交付金の削減が継続される中で、人件費に充当すべき財源を確保するためには、全学的資源配分の現状を精査し、経費節減を実現する必要があります。各種制度・事業の見直し、各部局との徹底対話、時代に即した事務的業務の効率化、簡素化が重要だろうと思います。また、国に頼らない安定的な独自財源を確保する努力も必要と考えます。


【 湊 】

 毎年度一定率の運営交付金の削減という現実があった以上、これまでの教職員削減計画はやむを得ないことであったと思います。加えて、定年後の再雇用職員の積極的活用や、各種合理化措置が行われてきたと承知しています。とくに職員については、業務の多様化と複雑化が進んでおり、今後も加重負担が生じないよう、様々な工夫を考えていくことが重要であると思います。また、教員に関しては、とりわけ若手研究者にできるだけチャンスを与えることが重要だと考え、実際にもそのような施策を実施してきたところです。第四期からの運営交付金の交付方針がどうなるかはまだわかりませんが、少なくとも将来構想を明示して指定された我々指定国立大学に対しては、6年間の中期計画期間中は、固定的な運営交付金交付の仕組みにしてくれるよう強く文科省に要求しているところであり、事務組織の安定的な運営のためにも、この点はさらに要求を続けるつもりです。


【村 中】

 技術が進歩していますので、業務の効率化が図れるのであれば、それは積極的に進めるべきですが、削減人数ありきの施策は大学運営にとって有益ではないと思います。ただ、運営交付金の削減や予算のあり方の変化といった国の施策に影響されざるを得ませんから、やむを得なかった面も大きかったと感じます。

 教員ポストの削減は、教育・研究力にダイレクトに影響し、又、有期ポストへの転換は、研究者を志す人たちを減少させたのではないかと思います。また、事務職員については、非常勤の数ばかりが増加し、かえって人件費負担が増す結果となり、効率化に逆行しているのではないかとさえ疑われます。すでに、様々な努力がなされているとは思いますが、今後とも、制約のある中で、できるだけ工夫を続ける必要があると思います。


質問5:時間雇用職員の「5年雇い止め」制度について

 本学では時間雇用職員について「5年雇い止め」という原則にしたがって(一部の例外を除いて)経験と能力と意欲のある方々を雇い止めとする一方、人手不足の埋め合わせを派遣職員に頼ってきたために、派遣会社に膨大なマージンを支払って経費の増大を招いてきました。派遣職員は原則として3年で職場を交代しなくてはならないことを考えるならば、時間雇用職員の継続的な雇用を可能とする制度の導入により、教員―職員の安定した関係を築くようにする方が、よほど理にかなっていると考えられます。

 時間雇用職員の「5年雇い止め」制度についてどのようにお考えですか?


<各候補者の回答>

【大 嶋】

 研究室・学科・専攻・部局あるいは本部で、5年以降の雇用に対して、どのように雇用経費を確保していくかが大きな課題かと考えます。時間雇用職員も、常勤教職員とともにそれぞれの役割において本学の教育研究を支える重要な柱と認識したうえで、議論を進めていきたいと思います。


【北 野】未回答


【 寶 】

 まず、共通事務部、専攻(あるいは教室)事務室における時間雇用職員の「5年雇い止め」は廃止します。有能な人財を継続して雇用することにより、関係する教職員の残業が減少したり、雇用に関わる経費負担を縮減したりできるのではないかと思います。研究室に所属する時間雇用職員の「5年雇い止め」については、研究室(担任教授)と専攻(教室)の合意のもとに、当該担任教授が在籍する期間は(研究室財源の保証があるならば)5年を超えても継続して雇用できるようにするなどの措置ができないかと考えています。


【時 任】

 「雇い止め」制度の弊害として、経験と能力、意欲のある職員を失うことによる実務的な人的資源損失、派遣職員での補充による人件費増という財政的損失は確かに実感する部局も多いと思います。時間雇用職員の継続雇用を可能にする制度は、これらの問題点を解決するものと思いますが、一方で、継続雇用を可とする結果、既定の在職年数で無期転換の権利が発生することへの抵抗があるのも事実です。共通性の高い職種で、配置換え等が比較的容易な場合は、部局あるいは大学としての適切な処遇が可能な場合もあると思いますが、研究室と密接に連動した職員の場合、当該教員の定年退職や転出後の職員処遇が難しい状況が生まれます。有期雇用と無期転換の板挟みで、半年間のクーリングオフをやむなく実施して元職に復帰しておられる例も認識していますが、本質的な解決策とは言えないと思っております。


【 湊 】

 いわゆる「5年雇い止め」については確かに問題が多いと思います。時間雇用職員を雇用する財源は安定的でない場合が多く、経費が多少かかっても派遣職員に頼らざるを得ないのが現状と承知しています。これについては、主要11大学理事懇談会(RU11)でも議論になり、政府に改善に向けて働きかけをしていこうという機運になっています。多様な業務の増大により、時間雇用職員は大学運営の重要な要素となっているのは現実で有り、外部資金の一層の拡大とその基金化を含む財源安定化の工夫も必要であろうと思います。


【村 中】

 本学では、労働契約法が改正され18条による無期転換制度が導入される以前から、5年上限の制度をもっていましたが、実際に、5年に渡って働く人の割合は少ないように感じます。また、どうしても必要な場合には5年を超えて働くことも認められており、上限は柔軟に運用されてきたと思います。さらに、特定業務職員の制度も導入されており、無期への転換も法律ができる前から実施されています。その運用に問題があるようであれば、さらに検討すればよいのではないかと思います。


質問6:組合の掲示ボードについて

 本学では2018年12月に「京都大学立看板規程」を制定し、翌年5月にこの規程を根拠として組合の掲示ボードを撤去しました。組合の掲示ボードは面積や色使いなど京都市の屋外広告物条例にすべて適合しているにもかかわらず、法人は、法人自身の掲げる屋外広告物の合計面積が、条例に定める合計面積を上回るためにこれを認めることはできないとしています。これに対して、組合は、撤去の法的根拠について説明もないままに長年の労使慣行を一方的に反故にしたことに抗議するとともに、その後の不実な交渉により労働組合活動の自由を阻害し、これにかかわる個人の権利を侵害してきたことに異議申し立てをしてきました。

 組合の掲示ボード撤去についてどのようにお考えですか?


<各候補者の回答>

【大 嶋】

 立看板の問題については、歩⾏者の安全性への配慮の方法、近隣住民の理解を如何に得るか、大学が京都市の中に作り出す景観とはなにかということも含めて議論を継続すべきと思います。


【北 野】未回答


【 寶 】

 職員向けの連絡を主目的とするボードであれば、立看板規制と連動する必要はないと考えます。大学内の問題なので、話し合いで解決しましょう。


【時 任】

 立看板問題に関しては、「立看規程」の制定により、条例遵守、景観・安全性の確保の観点から、その規格や設置場所等が定められたこと、また設置責任者や設置許可期間についても大学内の活動として適切なものとなるようにルールが定められたと理解しています。ただ、その後の立看文化等に関する報道等では、本学外構周辺における立看での対外情報発信活動が制限されたのは問題である、という扱いが多かったと思います。組合の掲示ボードに関する従来の労使慣行と「立看規程」の制定後の掲示ボード撤去については、そこに至る背景と詳細を存じ上げませんので、その是非をコメントすることは控えたいと思いますが、関係者間の努力による早期の解決を期待します。


【 湊 】

 条例に適合するため、学生諸君にもご協力いただいているところであり、職員組合におかれましても条例を遵守しつつご協力いただければありがたいと考えています。


【村 中】

 条例の詳細を承知しませんが、条例に違反しているのであれば、たとえ労使慣行が成立していたとしても、それは無効です。条例に違反しない範囲で、何ができるかを議論する必要があるでしょう。


吉田寮自治会の公開質問状

〈大学運営における学生の関わり方について〉

(1)学生への情報公開について

(前提) 従来京都大学では毎月、副学長が公開の場で大学内の会議の議論について報告する「情報公開連絡会」が開かれてきました。これは、1997年に京大に副学長制が導入されたことを発端に、大学の中央集権化や学生に関する意思決定の不透明化への懸念に対し、実施されてきた制度です。当時の井村裕夫総長は、学生との話し合いを通じて情報公開の必要性を認め、1998年に宮崎昭学生部長(当時)が「情報公開の場として、学生部長が参加する連絡会を公開の場で開く(確認事項) 」ことを約束しました。以後も同様に、1998年の三好郁郎副学長(当時)と吉田寮自治会との確約書から、2015年の杉万副学長(当時)と吉田寮自治会の確約書などに至るまで、副学長が参加する連絡会を開き、情報の公開に努めることが約束されてきました。

 こうした確約にも基づいて、2016年2月まで毎月、情報公開連絡会は開かれ続けてきました。これによって学生は、大学内で行われている議論や決定プロセスなどにアクセスすることができ、学内の運営プロセスに一定の透明性が担保されていました。

しかし、現任の学生担当理事が就任後に突然、連絡会を廃止とする意向を示し、学生の反対にもかかわらず、2016年3月より「諸般の事情につき中止」という不正常な状態が4年以上続いています。

(質問1) 大学の決定プロセスの透明化について、またそれらを保障していくために、どのような方策が必要であるとお考えですか?


<各候補者の回答>

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に下記の文書が郵送で届きました。

====

京都大学吉田寮自治会 様

 昨日、7月9日(木)に、貴自治会より公開質問状を受け取りました。 

 しかしながら、現在、総長選考期間中であり、有権者である教職員の方々には、既に第一次総長候補者としての所信をお伝えしておりますので、今回の貴自治会からの公開質問に関しては、回答を差し控えさせていただきます。

令和2年7月10日

京都大学工学研究科 教授 大嶋正裕


北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)。

氏(総合生存学館)

 私は、所信にも述べたように、「自由の学風」を学内の隅々まで行き届かせて、風通しのよい京都大学を実現したいと考えています。そのためには「対話」が不可欠です。対話のない場所で優れた教育・研究・医療は生まれません。対話を通して様々な立場の方々と理解し合うことは、自己と他者の自由や多様性を尊重し、「自由の学風」をより強くすることにつながるでしょう。皆さんとともに京都大学の未来を創造していきたいと思います。準備が整い次第、できるだけ早く情報公開連絡会を再開したいと考えます。

時任宣博氏(化学研究所)

この質問は、大学当局と学生間の問題としてのものと受け止めて回答致します。

「大学の決定プロセスの透明化」という視点は大事だと思いますが、京都大学の規模と構成員の多様性を考慮すると、全て対面型で情報共有を図ることは困難ですので、文書や電子媒体での情報公開という形になるものが多く、双方向での意見交換という面では機能が不足していることは事実です。

大学執行部が学生との対話の機会を狭めているとのご指摘ですが、現在の状況を生み出した背景も含めてその要因をしっかりと検討した上で、本学所属の学生全体に平和な雰囲気での情報公開連絡ができる環境や仕組みを再構築できれば良いと思います。学生に関する事項にも色々な内容、規模のものがある上に、対象を限定するものなどもあるかと思いますので、対話のシステムを構築するにしても、フレキシブルで多様な窓口を用意しなければ機能しないように思います。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

(2)学生との話し合いについて

(前提) 従来京都大学では、学生寮の運営や学生生活に関して、学生など当事者向けの説明会、対話などが行われてきました。ところが現執行部体制になってより、学生など当事者への説明や話し合いなどなく、トップダウンで決定されることが増えました。結果、実状に沿わない方針が策定され、問題の根本的解決が遠退いたり、学内構成員の自主性・主体性が大きく損なわれてきました。立て看板規制やNFの日程短縮など、関わりのある当事者への説明会、話し合いによる合意形成などがなく進められたがために、学生からの反発の声も起こりましたが、一切黙殺されてきたことは記憶に新しいと思います。

吉田寮自治会は長年、関係者・当事者間の話し合いを通じて意思決定を行ってきました。その経験から、大学においても各当事者・団体間で話し合いを行うことで、より実情に即した運営ができ、何らかのトラブルが起こった場合にもより直接的に解決することが可能になると考えています。

(質問2) これからの学生との話し合いについて、どうお考えですか?


<各候補者の回答>

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

氏(総合生存学館)

 質問1への回答と同様に、「対話」の重要性を強く認識しています。学生との話し合いはもちろんのこと、学内の教職員、学外の市民との対話や合意形成を積極的に行っていく所存です。

時任宣博氏(化学研究所)

 この質問の前提に書かれている問題点への対応は、質問1への回答である程度述べましたので、ここでは吉田寮関係の話し合いの現状について回答致します。 

 質問4でも学生寮について質問が挙がっていますが、本来は問題点を解決する手段として当事者間での話し合いの場を持つということは重要と思います。但し、双方が解決に向けて努力する状況にならないと、相互不信を招くだけの場になってしまいます。従来の慣行や経緯があることは理解していますが、大学そのものの位置づけや運営体制も時代に合わせて変化せざるを得ない状況にありますので、当事者がそれぞれの現状を理解し、意見交換できる仕組みを作る必要があるように感じます。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

〈学生の福利厚生について〉

(3)学生への経済支援について

(前提) 京都大学に通う学生の中には、様々な経済的困窮を抱えた人がいます。中には学費や生活費を自ら負担している学生もいます。また実家の経済状況が一定以上の水準にあっても、実家との関係性から仕送りを受けられず困窮している学生もおり、この場合現行の奨学金・授業料免除制度では支援対象外となってしまっています。

(質問3) こうした学生らが万全の状態で学術研究活動に打ち込めるために、京都大学として為すことができる学生支援について、どうお考えですか?


<各候補者の回答>

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

氏(総合生存学館)

 現時点の本学の財政状況では、支援対象となる学生に一定の厚生的条件が課されていることはやむを得ませんが、その条件が、有為の学生が教育を受ける機会を奪われることのないように、可能な限り広く支援をする必要があると考えます。ご指摘の事例についても、できるだけ丁寧に個別の状況に寄り添って支援の判断ができるような仕組みづくりを検討することによって解決をはかりたいと思います。

時任宣博氏(化学研究所)

 学生の修学支援に関しては、今まさに国(政府)の施策も変革されようとしている時期ですが、現行の奨学金や授業料免除制度が良い意味で再整備されることを期待します。また、今回の新型コロナウィルス感染拡大への対応で本学が実施した緊急的な事態に即した学生への支援策に見られるようなフレキシブルな学生支援は常に心がけるべきだと思います。経済的に困窮している学生の支援は大変重要な視点ですが、支援対象学生の支援申請要件の設定に当たっては、日本人学生と外国人留学生の公平性や困窮学生と一般の学生との公平性も念頭に置いて制度設計に当たる必要があると思います。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

(4)学生寮について

(前提) 現京都大学執行部は、本学の学生である吉田寮生の一部を被告とし、訴訟を起こしています。吉田寮自治会としては、一刻も早く訴訟を取り下げ、吉田寮に関わる諸問題を、話し合いによって解決したいと考えています。

(質問4) 吉田寮生に対する訴訟について、吉田寮生との話し合いの再開について、どうお考えですか?


<各候補者の回答>

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

氏(総合生存学館)

同じご質問を「自由の学風にふさわしい京大総長を求める会」からいただいています。それに対する回答を以下に示します。

「吉田寮裁判は、不幸なことに、京都大学における近年の「変化」を象徴する出来事となってしまいました。本裁判によって、告訴の対象とされた方々はもちろん、多くの学生とその家族・関係者、教職員が不安な気持ちを抱かれたことと思います。学内外の信頼を取り戻すためにも、まずは大学が学生を告訴しているという状態を一刻も早く解消し、あらためて当事者との対話を再開する必要があります。そして、これまで様々な形で吉田寮の課題に尽力されてきた学生・教職員の対話の蓄積をふまえて、できるだけ速やかな解決を図りたいと考えています。」

時任宣博氏(化学研究所)

吉田寮生に対する訴訟の問題については、京大の現執行部が訴訟を起こし裁判に至っているという現状を踏まえますと、裁判の当事者ではないものとして軽々に意見を述べることは控えたいと思います。裁判の場を通じて、双方の考え方の違いが明確化される部分もあるかと思いますので、その進捗状況を受けて状況が変化する可能性はあると思いますが。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)


〈学生生活について〉

(5)CAP制について

(前提) 京都大学では、1年間または1学期間に履修できる単位数あるいはコマ数を制限するCAP制を、2004年に法学部学部生に対して導入し、現在に至るまで順次導入範囲を拡げて来ています。CAP制の根拠は、文部科学省省令「大学設置基準」第二十一条の「一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、」といった文言にあると推察されますが、この時間数を算定した根拠については示されていません。学生にはそれぞれに興味関心の領域、得意・不得意分野、学習・研究のスタイルといった個性があり、画一的な時間数においてその教育効果を測ることは不可能です。大学現場における教育・研究の実態に疎い文科省が算定根拠を示すことは不可能であるのかもしれませんが、一方、学生の教育・研究を現に行って来た大学現場では、このような根拠の無い数字に振り回されることなく、学生の多様な現実を踏まえ判断をすることが可能であるはずです。根拠の無い学修時間数に固執することは学問に対する冒涜であり、学生や教員に対する制限を加えることで、本学における教育・研究活動が大幅に阻害されてゆきます。

(質問5) 京都大学における今後のCAP制の運用について、どのようにお考えですか?


<各候補者の回答>

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

氏(総合生存学館)

CAP制度の現状について、多くの学生諸氏から問題点の指摘があることは承知しています。現在の上限を30単位とする制度が定められた根拠について精査し、学生のみなさんの、よりよく学びたいという意欲を削ぐことのないような検討を全学的な対話を通じて行いたいと考えます。

学生全員一律、とする必要はないと考えます。2回生で長期の海外渡航を考えている場合は、1回生でより多く単位を揃えておきたいでしょう。1回生の時に病気や怪我など健康面の理由で履修が十分できなかった人は、2回生の時に取り返したいでしょう。

一方、30単位を標準の上限とする、ということで良いと考えるのであれば、その標準にしたがってさらなる単位取得に奔走せず、趣味や課外活動に時間を使うことも有益だと思います。

多感な学生時代でもあり、読書や芸術やスポーツに取り組むのも有意義です。また、学生だからこそできるチャレンジも大いにやってみてください。

時任宣博氏(化学研究所)

現在導入されているCAP制をどのようにとらえるか、という点で、学生にしても教員にしても立場が異なってくると思います。CAP制の根拠がこの質問の前提に書かれている一単位の学習要件のみかという点では、少し違った意見もあるように聞いております。本学の学生に、多様なカリキュラムの中から進級、卒業に必要な単位の中から自主的・自発的に履修計画を立てさせることは、大学学部教育として理想的なシステムであると思いますが、履修コマ数制限なしに登録と実際の履修を進めた場合に、履修科目の授業進度についてゆけず却って進級要件等を満たせなくなる学生も多くいます。その結果、再履修や留年という状況に陥って学習意欲の低下を招くというケースもあります。CAP制の履修科目数上限等に問題がある場合は、当該学部の制度担当教員等と相談して上限の変更や緩和の提案をすることは可能だと思います。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

(6)ハラスメント相談窓口の改善について

(前提) 現在の京都大学のハラスメント相談窓口は、法務コンプライアンス担当理事がトップに据えられており、理事、副学長、総長らのハラスメントについては、客観的・公平に判断することが難しい構造になっています。

(質問6) このような制度的欠陥を補うために、たとえば執行部や学内諸部局の利害とは独立したハラスメント対応窓口の設置の可能性などについて、どうお考えですか?


<各候補者の回答>

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

氏(総合生存学館)

ご指摘の点については、十分に検討する意義のある問題点だという認識を持ちました。今後の検討課題とさせてください。

なお、総長の解任に関する規程はすでに定められています。

「国立大学法人京都大学総長解任規程」(平成27年1月29日総長選考会議決定)

時任宣博氏(化学研究所)

理事、副学長、総長らのハラスメントについて、現行の法務コンプライアンス担当理事が所掌するハラスメント相談窓口では、客観性、公平性の点で問題があるとの指摘ですが、規程上は、担当理事が独立性を担保して問題解決に当たることになっていると思いますので、独立の対応窓口を常設する必要はないと考えます。また、総長の業務執行状況については、総長選考会議が毎年1月に執行状況を確認し、総長の業務が適切に遂行されているかどうかを確認すること、さらに就任後3年を経過した際に監事監査に基づく総長からのヒアリングを行うことになっています。監事監査においても、京大全体の監査事項の中には総長並びに執行部の業務活動の監査が含まれていると思います。監事は、京大執行部からは独立した存在だと認識しておりますので、公平性は担保されていると思います。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

(7)留学生への言語保障について

(前提) 現在、京都大学にはおよそ2,700人以上の留学生が在籍し、これは京都大学の学生全体のおよそ12%を占めます。留学生の中には日本語を第一言語としない者、日本語の使用が得意でない者も多く存在しますが、現在の京都大学による情報の発信や窓口での対応は、日本語の使用が得意である者を前提としており、日本語を第一言語とする者と日本語を第一言語としない者の間で明確に格差が生じています。

(質問7) 今後、こういった格差を是正するための具体的な方策について、例えば通訳を専門とする職員の雇用・拡充、通訳機会の保障などについて、どうお考えですか?


<各候補者の回答>

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

氏(総合生存学館)

これからの京都大学は、留学生に限らず多様な背景をもつ構成員が「よく学び、よく働き、よく楽しむ」ことのできる環境を整えていかなければならないと考えます。コミュニケーションの障壁によって学生教職員のあいだに情報格差が生まれる事態を避ける努力は「対話」をすすめるうえでも、非常に重要な要素だと考えます。各部局でも事務文書の英語版の作成、メール送信時の英語の追記などかなり努力はなされてきています。少しずつ国際化の波は起こっているのですが、まだ不十分です。ご提案の方法も含めて、具体的な方策を検討したいと思います。

なお、日本語を第一外国語としない人でも、第二あるいは第三の外国語に日本語を位置付けていただき、京都大学にいる間に「日本語通」、「日本通」になってもらうことは、ご本人のためにも良いことだと思います。

時任宣博氏(化学研究所)

 前提で指摘された、京都大学による情報の発信や窓口での対応が外国人留学生等(教員でも同様の不利益を感じている方がおられると思います)に不利ではないかという点ですが、我が国の社会活動のほとんどが日本語という独自の言語で成り立ってきていることに起因して、どうしても外国人の方が不利に感じる機会が多いことは確かです。本学においても、大学の国際化、教育の国際化を目標の一つに掲げており、外国人留学生の受入システム、受入後の相談窓口、英語による教育カリキュラムの充実など、種々の施策を講じています。そして、各部局等の協力も得て、多くの相談窓口、担当委員会も設置されています。しかしながら、全学的な統一した運営体制が未整備であり、色々な国際教育・交流関係の部署間での情報共有が不十分であることは事実です。今後の職員採用にあたり、言語能力等でより高度な知識と能力をもつ職員の採用は積極的に進めるべきだと思いますが、通訳という専門職を配置するとなると全学的な規模ではかなりの人件費負担が生じる点が実現に向けての障害になると思います。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)


〈京都大学の今後のあり方について〉

(8)今後の抱負について

(質問8) 京都大学の今後の理想像、目指すべき方向性について、どのようにお考えですか?


<各候補者の回答>

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

氏(総合生存学館)

このご質問につては、京都大学教職員組合から同様の問いをいただいていますので、それを以下に複写してお答えします。

「世界規模で進む分断や対立を直視し、自由と自治の精神の下に、豊かな学知を生み出し、優れた人財を育て世に送り出して、地球社会の調和ある共存と持続的平和の確立に貢献していくことであると考えます。」

所信の詳細にも京都大学の今後の目指すべき方向性について述べていますので参照してください。

(詳細はこちら:http://www.gsais.kyoto-u.ac.jp/staff/takara/upcoming/)

時任宣博氏(化学研究所)

総長選挙の所信表明書にも書かせて頂いたものと同様の内容を下記に再掲致します。

京都大学は、国内外に誇る総合研究大学として発展しており、その先進性、独創性は、世界的に卓越した知の創造と行動力豊かな有為な人材の輩出につながっています。そして、自由の学風に基づく京都大学独特の雰囲気が、学生、教職員を問わず構成員各自の日々の活動の源になっていると思います。しかし、国立大学法人化後に直面した大学改革、機能強化等の各種政府施策への対応は、ともすれば大学を構成する各部局、教職員、学生の活動を委縮させる状況を生み出し、本学が理想とする大学運営に少なからず負の影響を与えてきたと言わざるを得ません。私は、教職員、学生の皆さんが、本学の一員であることに誇りと自信をもって、その独創性に富んだ活力を最大限発揮できる研究教育環境を整えるべきだと考えています。その結果、多様な学術分野を包含する京都大学が、各部局の特色に配慮しつつ多分野共同体としての教育研究活動を国内外にアピールすることで、世界に冠たる総合大学としてさらに大きく飛躍することができると考えています。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)


学問と植民地主義について考える会の公開質問状

1、先住民族の遺骨の略奪・保管・返還拒否を巡る問題について

 京都大学には、19世紀以降の日本の対外侵略・植民地政策に伴って、京大の研究者達が植民地とされた地域-アイヌモシリ(北海道、サハリン、クリル諸島など)、琉球・沖縄、奄美、台湾、朝鮮半島、中国東北部、東南アジア等-から持ち出した遺骨・副葬品が収蔵されています。その中には、遺族や慰霊を行う地域コミュニティの許可を得ることなく、お墓をあばいて持ち出されたと思われるものが多数含まれます。研究者たちは、優生学や社会進化論的発想のもとに、持ち出した遺骨を標本とする研究を行い、日本の植民地政策や同化政策を後押ししたことも指摘されています。

 2013年以降、アイヌ民族、琉球民族、奄美人の各個人・団体から、京都大学の遺骨の略奪・保管・研究について先住民族の権利や文化・信仰を侵害する問題として抗議し、遺骨や副葬品の返還を求める声が上がっています。これに対し京都大学は、遺骨の返還や謝罪はもとより、先住民族による遺骨の実見や、面会・話し合いの要求も拒否してきました。2018年には、琉球民族の遺骨返還を求める民事訴訟が京都大学を被告として提訴されるにまで至っています。

 以上のような経緯・状況を踏まえた上で、以下2点についてお尋ねします。

1) 大学・研究者による植民地下での先住民族の遺骨の略奪と、現在に至るまでの保管・研究について、どのようにお考えですか。

2) 遺骨の返還やそれに向けた話し合いを求める先住民族の声についてどう考えますか。今後京都大学としてどのような取り組みが必要と考えますか。


<各候補者の回答>

大嶋正裕氏

1) 遺骨の略奪や保有を認めなかった理由や、大学本部が現在の判断に至った経緯については、存じ上げないのでコメントできない。京都大学が、過去にその人骨をもって行った研究が、植民地政策促進や帝国主義礼賛のための歪められたものであるなら、その検証をしっかりと行い、正すべきところは正すべきと考える。

2) 遺骨の正当な所有者との話し合いはすべきと考える。いま、総合博物館において人骨の専門家を雇用し、遺骨の整理を進めて返還に向けて動いていると聞いている。
 その人骨を使って京都大学が行った過去の研究を再検証するための調査研究を実施することの可否や、文化人類学的な純粋な目的のための研究の実施の可否ついても、遺骨の正当な所有者との話し合いの中で、決めていくべきと考える。

北野正雄氏

回答なし(7月13日時点)

寶馨氏

1、2の問いに併せて回答します。

植民地時代にアフリカから不法に持ち去られた遺骨の扱いについて、ドイツや南アフリカの大学が真摯に向き合い、謝罪とともに返還をおこない、研究の対象としての遺骨の扱いについては当事者の要望を最大限組み入れている例があります。例えば、返還を前提として、DNA研究による民族由来の解明を先住民族側が研究者側に希望する例もあると聞いています。また北海道大学は話し合いに応じて遺骨を返還しています。

これらの事例を参考にして、京都大学においても同様の対応ができないか取り組むべきだと考えます。そのために、まず調査委員会を立ち上げて話し合いをすすめたいと思います。

時任宣博氏

回答なし(7月13日時点)

湊長博氏

回答なし(7月13日時点)

村中孝史氏

回答なし(7月13日時点)

2、日本軍満洲731部隊の研究者に対する学位授与問題及び軍学共同について

 日本陸軍が細菌兵器の研究、開発、実践のために設置した関東軍防疫給水部【七三一部隊】において、京都大学出身の多数の研究者が中心となり、占領地で捕虜となった人間を用いた生体実験を行ったとされています。京都大学は2019年、731部隊研究者学位論文の検証を求める「満洲第731部隊軍医将校の学位授与の検証を京大に求める会」からの要請に対し、「本調査は実施しない」と通知しています。

 以上のような学内の状況を背景として、以下の三点をお尋ねします。

1) 731部隊学位論文授与問題の経緯について、十分に検証がなされたといえるでしょうか。今後どのような取り組みが必要であるとお考えですか。
2) 軍学共同という点で、「軍事研究に関する基本方針」についてどうお考えですか。
3) 京都大学の未来に向けて、過去の戦争協力という問題をどう清算していくべきだとお考えでしょうか。


<各候補者の回答>

大嶋正裕氏

1) 京都大学の731部隊学位論文授与問題について、京都大学が、どのような資料をもとに調査したのか、それが十分なものであったか否かについては、私としては、情報がないので、的確なコメントができない。もし、証拠資料が現在意図的に隠されている状況なら、隠されている証拠資料はいつか表にでてくると思われる。そのとき、そのしっかりとした資料に基づいて、公正な検証が行われるべきである。

2) 軍事利用を目的とする研究や兼業、軍事利用される可能性が明らかである研究や兼業などは、研究者として行うべきではないと考える。一方、社会を豊かにすることに役立つ研究開発であるとともに軍事利用にも使える可能性をもつ研究、すなわち、Dual Useができる研究があることが問題を難しくしている。京都大学の研究者が研究開始当初から、殺傷・殺戮を目的とする武器開発の研究に携わることはないと信じるが、Dual Useの問題も含めて軍学共同に関して、大学としてなにかしらの判断基準・ガイドラインを出すべきと思う。

3) 戦争を起こしたという日本の歴史は変えられない。その事実から、我々は何を学ぶかが重要で、その学んだことを活かして、未来において再び戦争に加担することがないように、大学ができること、すなわち学問と教育を進めていくこと、が正しい清算の仕方だと考える。

北野正雄氏

回答なし(7月13日時点)

寶馨氏

1) 満洲第731部隊軍医将校の学位授与の検証を京大に求める会からの学位論文への調査の要請について、2019年2月8日に「学位論文における研究活動上の不正行為に関する調査結果について(通知)(京大研倫安第55号)」として、本学副学長(研究倫理・安全推進担当)が予備調査の結果を回答しています。また、それに対する異議申し立てが同年2月20日におこなわれていることを同会のWebページの記事から知りました。
 残念ながら現時点では、ご質問の内容に十分に回答するだけの情報を持ち合わせていません。今後、この問題に対して更なる検証が求められる場合は、本調査を実施しないと判断するに至った経緯等をよく理解した上で真摯に対応したいと考えます。

2) 京都大学における軍事研究に関する基本方針 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/kihonhoshin/ に記されているように「軍事研究は、これを行わない」という方針を堅持していきます。

3) 京都大学の未来にとって、京都大学の構成員が、戦争協力という過去の事例を深く反省し、同じようなことを決して繰り返さないということを常に意識し続けることが肝要であると考えます。

時任宣博氏

回答なし(7月13日時点)

湊長博氏

回答なし(7月13日時点)

村中孝史氏

回答なし(7月13日時点)