経路最適化法

このページでは機械学習を利用した経路積分の拡張法である経路最適化法を説明しています。

一般化 Lefschetz thimble 法との類似点はありますが、違いも多く拡張性の高い手法です。

ちなみに、今の所 Fortran と Python(with Pytorch) による計算コードのみが存在しています(非公開)。

  • 符号問題

通常、場の量子論の数値計算では経路積分を実行して物理量の期待値を計算します。

しかし、場の理論の自由度は膨大(原理的には無限大)なため簡単には積分を実行できません。

そこで使われるのが hybrid Monte-Carlo 法です。

しかし、理論のパラメータによっては hybrid Monte-Carlo 法で必要な確率が複素数になってしまい、簡単は計算ができません。

これは「符号問題」と呼ばれています。


  • 再重み付け

一つの方法として、偽物の確率を生成して元の確率との overlap を利用して計算する「再重み付け法」があります。

つまり、

exp(-S) = (exp(-S) / |exp(-S)|) * |exp(-S)| = exp(iθ) * |exp(-S)|

として

<O> = < O exp(iθ)>' / <exp(iθ)>'

を計算するという事です。

ここで <...> は元々の確率での期待値、<...>' は偽物の確率での期待値です。

つまり |exp(-S)| が偽物の確率であり exp() がoverlap を表します。

ここでは絶対を取ることで実の確率を用意しましたが、別の確率を用いてもかまいません。


  • overlap problem

上述の再重み付け法を使うと問題なく計算できそうです。

しかし、<exp(iθ)> が小さくなると期待値計算の誤差が制御できなくなり、期待値の評価が難しくなります。

これを overlap problem といいます。

確率に複素化は防げるわけですが、他の所に影響がでてくるという訳です。

これは量子色力学では有限密度の領域で起こるのですが、未だ解決されていません。

  • 経路最適化法

経路最適化法は、単純に |exp(-S)| で確率を作るのではなく、積分変数を複素化して積分経路を複素空間で変形します。

コーシーの積分定理により、経路の変形で極を跨たがず、無限遠が計算に寄与しなければ、この変形で期待値の値は変わりません。

つまり経路最適化法とは、積分空間まで考慮してできる限り <exp(iθ)> が大きくなるようにしようという手法といえます。


  • 経路最適化法の機械学習の利用

では複素空間の変形された積分経路はどのように見つければよいでしょうか?

その一つの手法が機械学習を用いる手法です。

  機械学習については便利なライブラリも多いので、それらを使うと楽でしょう。

  例えば、PyTorch や Flux.jl が上げられますが、ここでは [サンプルコード] を載げておきます(時期未定)。

  サンプルコードは単純な関数で関係づく (x,y) の、いくつかのペアを学習し x に対する y を予想するものです。

経路最適化法は損失関数にヤコビ行列の行列式が必要なため、意外とコードの作成は面倒です)

最もシンプルには、変形された積分経路をニューラルネットワークで表すことが考えらえます。

というのも、ニューラルネットワークには万能近似定理が成り立つので積分経路の表現に適しているからです。

その上で、符号問題の程度を示す損失関数を構成しそれが小さくなるように学習させるわけです。

経路最適化法の [サンプルコード](使用言語:python)は時期は未定ですが公開予定です。