資源昆虫学研究分野・化学生態学グループは、
昆虫の行動生態・生理の理解や
その利用に向けた研究に取り組んでいます。
アリの化学行動生態学
家族で集団社会生活を営む真社会性昆虫では、その社会機構を維持するために多様なコミュニケーションを発達させています。また、ヒト社会とは異なる制御機構によって、社会集団の円滑な活動を推進しています。
研究室では、アリ社会における協調性を保つ集団運営の仕組みや、その社会基盤を支える巣仲間認識の仕組みなどの解明を進めています。
害虫防除
ヒトの生活圏内に意図せぬ形で、適応性に富んだ昆虫種が関わり合ってくると、ヒトはそれを「害虫」と呼び、忌み嫌います。化学農薬は有効な防除手段になりますが、力任せの防除を繰り返せば、大きなしっぺ返しを食らいます。
研究室では、害虫(農業害虫・衛生害虫・不快害虫など)とされる昆虫種の行動特性や化学交信能を利用したり、天然資材を活用したりと、環境に対して低負荷な害虫防除法の開発を目指しています。
蟻客の化学行動生態学
真社会性昆虫には、その社会システムを巧みに盗用しようとする社会寄生者(いわゆる共生者も含む)が存在しますが、多くの場合ホスト種をあざむことでそのような盗用を可能にしています。
研究室では、アリと共生関係にある好蟻性昆虫によるホストアリ種の行動制御機構を含めた社会寄生の機構解明を目指しています。
植物の化学的受粉戦略
植物は、植食性昆虫を含む草食性動物による食害を軽減・回避するための防衛戦略と、効率的な受粉をおこなうために必要な送粉システムを兼ね備えています。
研究室では、特に化学戦術に着目して、植物による昆虫の行動制御の仕組みを研究し、化学的な被食回避や送粉システムの解明を目指します。
昆虫の化学交信
鳴く虫、光る虫、世間一般には物理的シグナルを活用して個体間コミュニケーションを図っていると理解されている種もたくさんいます。そのような昆虫種であっても、実際にはセミオケミカルにもとづく化学交信を行なっていることが明らかになりつつあります。
研究室では、音響等の聴覚刺激や色形などの視覚刺激に頼るとされている昆虫種も対象として、それらの生存戦略や化学交信の実態解明を目指しています。