エンディングを開き、読んでください。
「わたくしが、やりましたの……」
ルトナはヨル殺害を自白した。
「急に、殺人衝動に駆られて、エモナルの椅子の下からナイフを見つけて、廊下にいたヨルを殺してしまいましたの」
それを聞いたナツセとルーチャは何も言えなかった。ナツセとルーチャも同じように殺人衝動に駆られていた。もしヨルが殺されなければ、私が誰かを殺めていたかもしれないと、そう思っていた。だれもルトナを責めることはできなかった。
ルーチャが静かにあることを提案する。
「あの、ここで起きたことは秘密はしませんか? 館で起きた出来事は全て秘匿されると招待状に書いてありました。私たちが口外しなければ、誰も知ることはありません。ルトナが罰せられることもないでしょう」
「そうだね……」
ナツセもそれに同意した。3人は暗い気持ちのまま、時間がだけが過ぎていった。
~~~~~~~~~
館に設置されている隠しカメラの向こう側、国際宇宙ステーションの個人部屋に潜める主催者のU.N.Owenは今回も大成功だと笑みを浮かべた。
「全人類が理性的になれば、この世界がより良くなる。人々はいつだって感情を買わされているんだ。ギャンブルも違法薬物も。それで堕ちていく人がいなくなれば、それらの供給も終わる。ゆえに、感情に釣られる人間を集め、自ら殺し合いをさせよう。強烈なサブリミナル効果を用いればそれも可能だろう。我は我が理想を叶えるのだ」
Owenは窓から見える地球をまるで掌握するかのように手を翳す。
「はは、これこそが全能感。このシステムが全世界に普及すれば、この世界も我が理想に近づくっ!」
「ふーははははっ!」
「……勝利の笑いは、勝利が確定してから笑うものですよ」
「なにっ!?」
突然の声に、部屋は静まり返った。ルーチャがOwenの前に仁王立っている。あ、有り得ない。
「I’m Rucha. As you know? (私はルーチャです。あなたも知っているでしょう?)」
「Why are you here? Tell me! (な、なぜ貴様がここに!)」
「あなたを捕まえに来たんです。古い血痕のダイイングメッセージから真犯人は主催者だとわかりました」
「なんだと? それになぜここにいるんだっ! ここは地球から400km上空の宇宙空間だぞ!」
「妄想したんですよ」
「は?」
「エモナルは凄いですね。妄想が現実に沿って体験できる。非常に便利です。だから、あなたを捕まえる方法をエモナルで妄想してみました。そしたら、エモナルが見せてくれましたよ。あなたの居場所も。たどり着く方法も。そして、捕まえる方法も。まぁ教えませんがね」
「はは、まじかよ……。だが、私は捕まるわけにはいかない。宇宙ステーションを爆破し、私だけが脱出する!」
私は、宇宙飛行士。どんなハプニングにも慌てず対応ができる。宇宙ステーションを爆破し、個人的に脱出できる機構を秘密裏に作っておいた。こんなこと予測できまい。
「今、脱出できないようにしましたわ」
「レ、レン君、かわいかったです///」
「お、おまえらっ!」
ナツセとルトナが姿を現した。そして、ルーチャが締めの一言を放つ。
「——すべては、妄想通りッ!」
3人は笑う。勝鬨の声をあげながら。
「ふーはははは!」
——Fin.限界化の館——
下記の事柄を推論できていれば、括弧内の得点を獲得できます。
ヨル殺害の犯人はルトナである(+5p)
冷凍食品が毒物であると推論する(+3p)
犯人以外から犯人だと疑われる度に(-3p)
ヨル殺害の犯人はルトナである(+5p)
ナイフをエモナルに隠したことを推測されれない(+3p)
犯人以外から犯人だと疑われる度に(-3p)
ルーチャがナイフをエモナルに隠した(+3p)
冷凍食品が毒物であると推論する(+3p)
ナツセがG系のレコードを借り、ヨルがS系のレコードを借りた(+3p)
犯人だと疑われる度に(-2p)
館の目的は殺し合いをさせること(+5p)
ヨル殺害のカギとなるのは、凶器であるナイフの場所です。
ナツセ視点、14:00頃にナイフがキッチンに無いことがわかります。ナイフをキッチンから盗んだのはルーチャであり、隠されたナイフを見つけたのはルトナであるため、この見解は一致するでしょう。とすると、犯人を特定するために、まずはナイフをキッチンから盗むめる人物を探します。
それぞれのエモナルの扉の開閉状況とヨルが搭乗していないことから、ナツセとルーチャが客観的に怪しまれるでしょう。さらに、ナツセが13:30頃にキッチンのあるN系に入ってきた時、ポケットが膨らんでいます。ここに入っているのはレコードかナイフでしょう。ナツセは13:30頃の終わりに席を立ちます。ナツセはその理由を「レコードを返却しに行ったため」と証言すれば、ポケットには返却用のレコードがあったと考えられ、N系エリアに来ていなかったことになります。つまり、消去法でルーチャがナイフを盗んだと疑えます。また、ルトナはA館で、手ぶらのルーチャを見ているので、キッチンからナイフを盗みA館に隠した犯人として辻褄が合うでしょう。
確実にA館にナイフがあったとわかるのは「エモナルの椅子の下の一部の埃がなくなっていた」という証拠からです。ここにナイフが置かれていたために、埃がなくなっています。先ほどの考察があれば、この段階でルーチャがナイフを盗み隠したのは確定的でしょう。
続いて、ナイフを見つけることができる人物です。
14:00頃一斉にエモナルの前に立っています。また1機はヨルのレコードの時間(90分)からヨルが使用中であるとわかります。そして、証拠より「誰も使っていないエモナルが1機ある」ことから、誰かがエモナルに搭乗しなかったことになります。ルトナ視点、その人物はナツセであり、彼女がナイフを盗んだと言及し、犯人に仕立てることが可能でしょう。逆に、ナツセは、ヨルのエモナルが終わる前にN系エリアに行き、料理するためにナイフを探していたことを再証言すれば、疑いは晴れるでしょう。
つまり以下のように整理できます。
ルーチャはナイフの場所を確実に知っているが、扉の開閉状況が偽造されない限り、犯行が不可能に違い。
ナツセはナイフを見つけた可能性があり、犯行が可能。ナイフを探していたことをゲーム開始に証言していれば、後に優位となる。
ルトナはナイフを見つけた可能性があり、犯行が可能。
ルトナは以下のようにして他の人を犯人にできるでしょう。
「ヨルがA館の本棚でしばらく本を読んでいたので、その後に搭乗したと思う」。これにより、ヨルのエモナルの使用時間を遅らせることができ、自分がエモナルを終えたときにヨルがまだ使用中だったと言及(扉の開閉状況の偽造を)すれば、ルーチャが殺した可能性を提示できます。また、本が読まれた形跡があるので、自分が読んだと証言していなければ、有効に働くでしょう。
「ナイフの場所を知れるのはナツセとルーチャのみ」。午後のエモナル使用直後にS系に行ったとすれば、2人を審査する立ち位置を確保できるかもしれません。ナツセに関しては自分で殺しておいてナイフを探すふりをしている等の言及が有効でしょう。ルーチャに関しては、殺害後に、誰もいないことが確実なA館へ戻るのが最善であると言及すれば、その言及の正当性も確保されるでしょう。
誰も使用していないエモナルの扉を開けたことを証言しない。また、開けたことで得られる情報を開示しないことが必須要件です。
館の真相を紐解いていきます。
館にはところどころ古い血痕が残っています。つまり、過去にも同じような殺害事件があったということです。真っ先に浮かぶのは、参加し続けている殺人鬼がいることでしょう。ですが、全員が殺人衝動に駆られているため、これは薄いです。そして、その殺人衝動は、エモナル使用後に起こっていること、エモナル使用中に一瞬何かが挟まれていたこと、強烈なサブリミナル効果の実践法から、エモナルが原因の可能性を考えることができます。
エモナルが原因だとすると、この館は殺人衝動を起こし、他人を殺させてきた施設であると推論できるでしょう。つまり、真の犯人は主催者Owenということになります。
補足として、館内のナイフの幾何学模様もサブリミナル効果を暗示し、毒物であるトウトシが冷蔵庫にあるのもそれが理由です。
館の目的は少々難しいかと思いますが、たどり着けたでしょうか?
本作を遊んで頂き、ありがとうございました。とても嬉しく思います。
このシナリオは限界化の談笑とエンディングの盛り上がりを意識した作品になります。笑いながら遊んで頂けていれば、作者冥利に尽きます。感想はこちらのGoogleフォームからおねがいしますわ。ログイン不要ですの。
遊んで頂き、本当に、本当にありがとうございました!!