私は望まれずに生まれた。そして、いつか私が望まずとも殺されてしまう。そういう運命なのだと父から聞かされた。それを諦観とともに受け入れた。何をしようとも変わらない。ただこの神社で一生を終える。誰からも存在を認知されず、何も残せずに。
生きているだけで単純に冥界で、幸せの概念すらも複雑に回帰してしまった。
そんな時、父が私にお似合いだと言い、姫小百合の球根をいくつかくれた。私は境内の外でそれを育てた。六月の末、それは艶やかな桃色の花となった。私が感じたことのない色。やがて、その花は私に現実を見せつけるように枯れた。
翌年、姫小百合がまた咲いていた。去年咲かせた姫小百合が自然に受粉し、開花したのだろう。それを見たとき、はっと思い浮かべてしまった。姫小百合の花畑が広がる美しい光景を。
ああ、そうか。花は咲き続ける。その存在を認められながら、ずっと存在し続ける。他人に認知されることが禁忌で短命な私とは正反対。私に欠けているものを姫小百合は持っていた。その魅力にぐっと惹かれた。
そうだ。私が姫小百合の花畑を作れば、その花畑はずっと残り、その始まりをたどれば、私の存在にたどり着く。そうして、私の存在を暗に、未来へ残すことができる。なら、今を生きることを諦め、姫小百合とともに未来に生きることにしよう。
それから私が殺されるまで、私は姫小百合の花畑を作り続けた。私自身の存在証明のために。
花園として立派になった頃、ある少年と出会った。彼は花畑の境界線越しに純粋な瞳で私にこう告げた。
「未来に生きることは分かったけど、今を生きた方が良いんじゃない?」
その夜、私は死んだ。一瞬で死んでしまうかもしれない百合の球根を少しずつ食らいながら、花園の境界線で。