エンディングを開いて読んでください。
タクト、アキト、イチカで行った現場検証がひとつの真実を導いた。それは後に行われる警察の現場検証の結果と一致していた。
水で壊された花火発射装置に隠されていたアイスピック。これは露店から盗まれ、ここに隠されたものと思われる。アイスピックを使う露店で思いつくのはたこ焼き屋だ。たこ焼きをひっくり返すために使う道具だろう。しばらく話し合った結果、たこ焼き屋がある南方面に向かったのはタクトだけだった。
タクトは犯行を自白し、イチカへの恋慕を赤裸々に語った。
「イチカが好きだ。でも私のような容姿の人をイチカが好きになるはずがない。ヒロトはイチカから告白されていて、憎かった。だから、店主がいないたこ焼き屋で盗んだアイスピックをヒロトに刺した。さらに去年、ユウトを殺したのも私だ。ユウトがイチカに告白するという噂を聞いて、イチカを傍で見られなくなると思ってしまった。だから、ユウトを殺した。」
イチカはそれを聞き終えると、落ちていたアイスピックを手に取り、タクトに振りかざした。
刹那、アキトがそれを止めた。人が殺されることを正当化できなかった。それに、盆祭りに帰ってくるユウトの幽霊にも、ヒロトにもそんなイチカの姿を見せるわけにはいかなかった。
イチカの手からアイスピックが落ちる音とともに、到着した警察の足音が聞こえた。
「後は警察に任せよう」
アキトはそう言うと、イチカの手をしっかりと握った。
—— Fin. 盆祭りと一夜物語 ——
下記の事柄を推論できていれば、括弧内の得点を獲得できます。
タクトがヒロト殺害の犯人である(+3p)
アキトが花火発射装置を壊した犯人である(+3p)
アキトが花火発射装置を壊した犯人である(+8p)
ヒロト殺害犯として疑われる(ひとりにつき-1p)
タクトがヒロト殺害の犯人である(+8p)
花火発射装置を壊した犯人として疑われる(ひとりにつき-1p)
タクトがヒロト殺害の犯人である(+3p)
アキトが花火発射装置を壊した犯人である(+3p)
ヒロトに振られたことを秘匿し、推測されない(+1p)
ヒロトに振られたことが推測される(-1p)
ユウトは盆祭りに来た幽霊である(+4p)
この事件を紐解くには、誰がいつ北方面にいったのかを地道に把握することが鍵です。時系列順に見ていきます。
ヒロトを含む5人は4方向に散開したので、北方面に行った人物をアキトだと特定できます。
タクト視点で、ヒロトとイチカが露店エリアにいることが把握できます。もし、それをタクトが漏らせば、イチカとタクトはこの時間帯のアリバイが立証できます。
ユウト視点で、アキトを北方面の道中で目撃します。ここで20:15頃のタクトとイチカのアリバイが立証されていれば、20:00~20:30までの間にアキトだけが北方面にいたことが分かります。さらにその時間帯にヒロトの生存が確認されているので、アキトがヒロトを殺害した可能性はありません。
詳しく言うと、アキトとユウトが中央から去った後で、ヒロトは東方面の道路から中央を経て、りんご飴の店に向かいました。
その後、ユウトが南方面の道中のたこ焼き屋でタクトを見つけます。この時、タクトはたこ焼き屋から、たこ焼きをひっくり返す為のアイスピックを盗んでいました。現場検証で見つかるアイスピックとたこ焼き屋を関連付けられれば、真相の解明は容易でしょう。ですが、関連付ける難易度は高いです。
中央でアキトとタクトが出会います。その時に、アキトはイチカが東方面にいたことを知りますが、探しても見つかりません。なぜなら、イチカがこの時に限り、狐のお面を被っていたからです。イチカは東方面の奥で休憩していました。もし、イチカ自身が、お面を被っていた為に見つけることができなかった可能性に言及すれば、アキトからの疑惑は少し晴れるでしょう。ですが、お面を被って移動していた可能性もあるので、完璧には晴れません。
イチカ視点では、タクトが「アキトが東方面に行ったこと」を肯定し、ユウトがくじ引き屋で一等賞が当てられていたことを証言すると、タクトだけが行方不詳となり、北方面に行けることになります。アキトはタクトが南方面から中央に来ていることを知っているので、タクトが南方面に引き返す正当の理由を証言しない限り、イチカはタクトを怪しむことができるでしょう。
一度整理します。
ユウト視点
アキトが北方面奥に行ったのは確定的でかつヒロトを殺していない。
イチカ視点
タクトが北方面に行ったのは確定的でかつヒロトを殺した可能性がある。
以上から、アキトの花火装置の破壊とタクトのヒロトを殺害を推測できます。また各犯人視点、次の言い訳が考えられるでしょう。
アキト視点
「袖が濡れているのは金魚すくいをしたからだ」
またタクトかイチカがヒロト殺害と同時に、花火発射装置を壊した可能性に言及すべきでしょう。特にタクトに対しては、花火装置から見つかったアイスピックとたこ焼き屋と関連付けることができれば、花火装置に触れたことを責めることができます。
タクト視点
「アキトと出会ってから南方面に引き返した。それはたこ焼きの店主が戻ってきたからだ」。
またイチカはお面をつけて動向不明だったことから、イチカをヒロト殺害犯に仕立てることもできるでしょう。その時に、ヒロトとイチカの会話も有用できるでしょう。さらに、ぬいぐるみが捨てられていたことから、イチカがヒロトにぬいぐるみを渡したが、それを拒否られ、ゴミ箱に捨てたと主張すれば、イチカがヒロトを殺す動機になるでしょう。
これらの言い訳が考えられますが、どれも難易度が高く、真実性に欠けます。もし疑惑を反らせていたならば、流石でしょう。
共通得点を除くポイントの配分ですが、犯人側は全員から疑われた場合には最下位となり、2人からの場合には同率の可能性が、1人からの場合には1位が確定します。非犯人側はそれぞれの犯人を特定することで1位が確定します。さらにイチカの場合、加点と減点があるので、それも勝負を分けることになるでしょう。
さぁ、このミステリーの本質に迫ります。ユウトが実在するように叙述トリックが仕込まれていますが、下記に気づけは幽霊の可能性を疑うことができるでしょう。
ユウト以外のキャラクターシートで「ユウトとアキトは仲が良かった」と過去形になっている。
ユウト以外は2000年の盆祭りに来ているが、ユウトは時間を気にしていない。
ユウト以外は、去年に殺害事件があったことを知っている。特に、タクトは去年の殺人事件の犯人である。
ユウトとアキトは親友であり、アキトは去年の殺人事件の捜査の打ち切りに異を唱えている。
ユウトはプリティキュアのお面を買っているが、イチカは今年にそのお面が売られていないこと、去年にそのお面が売られていたのを知っている。
ユウトは前日にイチカに告白する予定を伝えたが、アキトはその予定を前日に伝えられたと解釈していない。
ユウトはイチカ告白することで、未練から解放されようとしている。これは、怨霊から成仏したい意志の表れです。
ユウトの存在を誰も目撃してない。
ユウトは人混みをすらすらと歩けている。
ユウトは列に並んでいると割り込まれている。
ユウトとの1年のギャップと去年の殺人事件を関連付ければ、ユウトが殺されていることに気づけます。さらに、盆祭りであることとユウトの浴衣の着方が間違っていることから、幽霊だと推測できます。なぜなら、浴衣の着方の間違いというのは、左前にして着ているということだからです。これは「死に装束」を意味し、ユウトが幽霊であることを暗喩しています。
まとめると、ユウトは1999年の盆祭りに殺され、2000年の盆祭りに、去年できなかった告白をするべく怨霊となり来ています。なので、ユウトの記憶は1999年がベースになっています。ユウトが殺されていることは推測可能かもしれませんが、幽霊であることを推測するには浴衣の知識が必要かもしれません。
ここまでたどり着けたでしょうか!?
本作を遊んで頂き、ありがとうございました。とても嬉しく思います。
このシナリオはまさかの登場人物が幽霊であるという真相です。ずるいかと思われるかもしれません。ごめんなさい! ですが、その伏線はキャラクターシートや証拠に巡らせていました。勘弁してください! そして、幽霊の存在に到達できた方、おめでとうございます!
犯人を特定することは簡単だったのではないでしょうか。そのため、犯人側は全員から疑われないと最下位が確定しない仕様になっています。感想はこちらのGoogleフォームから下さるととても嬉しいです。ログイン不要です。
楽しんで頂けていれば、作者としてこれ以上ない幸せです。冥利につきます。
本当に……本当にありがとうございました!!