農地法の一時転用の許可期間についての検討
(一時転用の期間は3年以内に限られるのか検討しました。)
(一時転用の期間は3年以内に限られるのか検討しました。)
P市において、農地の一時転用(農地法5①)は、許可期間を3年以内として運用されている。
これまで、山林である砂採取地(砂利採取法による許可取得済)に通ずる通路を確保するため、既存農道の脇の田を一時転用許可によりに盛土を行い拡幅し使用してきているが、これについても期間を3年として許可を受けている。
しかし、砂採取は3年を超える計画で実施されているものの、通路として使用できる許可期間が3年間であるため、これでは砂販売事業が継続して行えないこととなる。
そのため、既存農道を挟んで、一方片側(左側)の一時転用許可(3年間)を取得し、その許可期間が満了する前に他方片側(右側)の一時転用許可を取得することによって継続して必要な通路幅を確保し、砂販売事業を行ってきている。
この既存農道の左右の一時転用許可を3年ごとに交互に取得する場合、その都度、盛土及び撤去(復田)工事が必要となり、費用の負担も大きい。
このため、一時転用許可を3年を超えて取得できないか、P市及びQ県の担当課にそれぞれ照会(別添ファイル)したが、いずれも3年を超える一時転用は認められないとのことであった。
※検討は、あくまでも既存の根拠法令等を文理解釈することによって行い、主観的主張を述べることはしないで行うこととする。
農地法に関する処分等は、「農地法関係事務に係る処理基準」に基づいて行われる。
このうち、一時転用許可の期間については、下記の条項により定められている。
第7 法第5条関係、1 都道府県知事等の事務処理基準、都道府県知事等は、法第5条第1項及び第4項に係る事務の処理に当たっては、法令の定めによるほか、第6の1、2及び4と同様に行うものとする。
〔参考・農地法〕
第5条第1項 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。
第6 法第4条関係、(1) 法第4条第6項第1号の判断基準、① 法第4条第6項第1号イに掲げる農地を転用する場合に令第4条第1項第1号に掲げる事由に該当するか否かの判断に当たっては、法令の定めによるほか、次によるものとする。
〔参考・農地法施行令〕
第4条第1項 法第四条第六項第一号に掲げる場合の同項ただし書の政令で定める相当の事由は、次の各号に掲げる農地の区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる事由とする。
一 法第四条第六項第一号イに掲げる農地農地を農地以外のものにする行為が次の全てに該当すること。
イ 申請に係る農地を仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するために行うものであつて、当該利用の目的を達成する上で当該農地を供することが必要であると認められるものであること。
ア 令第4条第1項第1号イの「一時的な利用」とは、申請に係る目的を達成することができる必要最小限の期間をいい、農業振興地域の整備に関する法律第8条第1項又は第9条第1項の規定により定められた農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼすことのないことを担保する観点から、3年以内の期間に限定するものとする。
まず、「一時的利用」すなわち一時転用許可期間としては、「目的を達成することができる必要最小限の期間」としており、3年に限ることとしていない。つまり、目的上必要であればその期間が一時転用許可期間として扱われこととしている。
次に、条文では「(許可期間は)農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼすことのないことを担保する観点から、3年以内の期間に限定するものとする。」としている。
しかし、許可権者は単に「(許可期間は)3年以内の期間に限定するものとする。」と理解し、一時転用許可期間を3年以内としているように見受けられる。
条文において「計画達成に支障を及ぼすことのないことを担保する観点から」としているのは、一時転用許可期間が一定期間以上に及ぶと許可対象地及び周辺地への物理的変状や予測できなかった現象が生じた場合に、許可権者が計画未達成の原因を作ってしまうことを避けるための安全側に設定した「期間の担保」であると考えられる。
つまり、一時転用許可申請においては、個々の申請内容を個別に検討し計画達成に支障を及ぼすことのない妥当な期間をもって一時転用許可期間を設定することを原則としつつ、将来の不測の事態等が発生しないことを疎明できないような一般的な申請の場合においては本条項の規定により3年の一時転用許可期間とする旨の規定であると理解することできる。
よって、本条項は、一時転用許可としての期間の必要性を前提としつつ「計画の達成に支障を及ぼすことのないこと」を疎明できる場合においては、3年を超える一時転用許可は妨げられないもの解することが妥当であると判断する。
前述のとおり、一時転用許可期間は3年を超えることも妨げられるものではない、つまり「農地法関係事務に係る処理基準」に基づき3年超の一時転用許可は認められるとした。
しかし、許可後における不測の事態等が発生し計画達成に支障が及ぶことが予測される場合には、許可権者は許可受人に対して適切な措置が取ることができるよう予め備えておかなければならない。
このため、許可権者は、「許可期間内であっても許可対象地及び周辺地に変状が発生する等、耕作に支障となる事象により農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼすことが予測される場合には、許可の内容を制限しあるいは取消すことがある。」旨、許可条件を付すことが適正な農地転用の運用として有効であると考えられる。
本検討は、主たる事業(砂採取)に対して、付随的に必要(通路)となる農地一時転用の事案です。
この検討をきっかけに、許可権者及び申請者の方々にもご検討いただければ幸いです。