研究内容

超解像テラヘルツ波計測アンテナ

プラズモニクスアンテナ構造体

プラズモンと呼ばれる金属内部電子の集団運動に着目しています.金属・誘電体積層構造へのテラヘルツ(Terahertz: THz)波照射により界面での表面プラズモン伝搬を誘発し,入射光の集光や強度増強等の効果が得られます.当研究室では,金属・誘電体積層構造に同心円形状の微細加工を施したブルズアイアンテナを作製し,同心円周期によりアンテナ効果を任意に設計可能です.アンテナ中央の開口部より,集光・増強されたTHz波が得られます.

サブ波長領域イメージング計測

画像計測の解像度は照射電磁波の波長(周波数と反比例)により律速され,回折限界と呼びます.THz波は可視光と比べ波長が長く,低解像な画質が課題でした.当研究室のアンテナは回折限界を超えたTHz波計測を可能とし,システムに組み込むことで超解像画像が得られます.同じく透過性を持つX線と比べTHz波は生体への負担が無い非侵襲性が特徴であり,照射波長より小さなネズミの肺胞に対する非破壊・非侵襲な超解像計測を実証しました.

テラヘルツ波時間領域分光計測

THz波イメージングを行うにあたり,テラヘルツ時間領域分光装置(THz Time Domain Spectroscopy: THz-TDS)を積極的に活用しています.薄膜材料のTHz帯域での透過率分布計測,及びそれらのデータベース化が可能です.高い周波数分解能での広帯域計測にも特化し,薄膜製品の非破壊品質検査に効果を発揮します.当研究室ではTHz-TDSにより,人の目には識別不能な医薬品同定やプラスチック製品の欠陥・異物検知等を実証してきました.

 この他にもCNTフィルム型フレキシブルブロードバンドカメラとの一体化結合を精力的に進めています.フレキシブルイメージングの高解像度化に加えて,高速動作化といった機能性の付与が期待されます.更には波長選択性の獲得も視野に入っており,広帯域計測とは別に,対象物材質に合わせた特定領域での高感度イメージングという用途が考えられます.

 またプラズモン現象を活かした新規の小型赤外光源の開発に取り組んでいます.従来の赤外光源は一部の高価な素子材料が主に用いられ,加えて周囲の温度環境により意図しない性能劣化を生じる等,より使い易い素子開発が求められていました.当研究室での取り組みでは,安価な材料でのプラズモン現象による赤外線発光,及び素子加熱による照射強度の増幅といった特徴が挙げられます.