最新レポート(2025年度):(正式版)RO相模原レポート2025.pdf
過去レポート(2024年度):(正式版)RO相模原レポート2024改訂ver2.pdf
<ポイント>
・不耕起栽培は、草取り+耕うんの時間が約30%削減される
・不耕起栽培はカバークロップのライ麦の播種などの時間がかかるため、合計の作業時間は耕起栽培に比べて増える
・しかし、不耕起栽培は草取りの作業時間が減る効果とライ麦が土に炭素を貯留する効果がメリットとなる
今なぜ不耕起栽培なのか?
👉土を攪乱しない
土を耕さずに不耕起で作物を栽培すると微生物やミミズなどが活躍できる。また大雨の際に水たまりができにくい。
👉土を覆う
露出する地面を覆うように緑肥などを植える。それによって風や水による土の流出を防ぎ、雑草を抑える。刈ったものは天然の肥料としての役目を果たす。
👉気候危機対策として農業部門の温室効果ガスの排出削減も重要
*1 リジェネラティブ・オーガニックとは パタゴニア
https://www.patagoniaprovisions.jp/pages/regenerative-organic-agriculture
*2「耕さない農業」が土壌炭素を貯留し土壌微生物の多様性を高める 約20年間の調査で実証 分解促進による潜在的な脆弱性にも注目 小松﨑将一ら
https://www.ibaraki.ac.jp/news/2022/10/27011743.html
*3自主研究「RO農法への挑戦」活動報告:不耕起栽培の畑での枝豆収穫お手伝いと那須農場での和綿収穫と計測、ライ麦の種まき 自由学園
👉ライ麦をカバークロップ とした不耕起栽培で環境再生農法を実証する
👉雑草取りなどの手間がそれほど増えず、収量はそれほど減らず、作物を栽培でき、気候変動対策にもなる、生物多様性の確保にもなることを、実証し、自作人の方の関心を高める
神奈川県相模原市緑区中沢969あたり
・品種:ライ太郎 撒く時期が遅かったため極早生を選択
・すじ撒き、すじ間隔は30cm、深さ3cm、0.5kg/ アール( 2024 年度は 1kg/ アールで播種したが、倒した後に厚すぎたため 今年は 半分とした)
・倒す時期:乳熟期(タネを押しつぶして乳汁様物質が出る状態)を確認後倒した
・倒した時の高さは約2m
・つるなしいんげん (前年と播種場所は変えた)
14か所ずつ 3 列× 2 エリア= 84 か所
株間30cm、畔間 50cm、1箇所3粒ずつ深さ2cm 、よく鎮圧
・小松菜
株間はすじ撒き、畔間40cm、覆土は1cm、よく鎮圧、間引きは本葉12枚時に、株間が34cmになるよう、また、34枚時に株間が56cm間隔になるように行う予定だったが、間引きがうまくできず株間3cmにとどまってしまった 。不耕起エリアは、倒したライ麦が発芽や成長を阻害しないよう、播種した箇所が覆われないように注意して手入れをした。
・小かぶ
株間すじ撒き。畔間40cm。覆土は1cm 。よく鎮圧。間引きは本葉1、2枚時2、3cm 間隔に、2、3 枚時4、6cm間隔に、5、6枚時10cm間隔にする予定だったが、間引きがうまくできず株間3cmになってしまった。 不耕起エリアは、倒したライ麦が発芽や成長を阻害しないよう、播種した箇所が覆われないように注意して手入れをした。
・10cm以上伸びた雑草は除去
・発芽しない場合も補う追加播種は、つるなしいんげんで 発芽不良の1箇所だけ追加播種を実施。小松菜と小かぶは追加播種なし
・水管理は自然降雨のみで追加の水やりはなし
・施肥なし
つるなしインゲンは、 厚く 敷き詰められたライ麦 の隙間から 茎を伸ばし 成長している様子がわかる。
昨年2024年のつるなしいんげんの収穫量は、耕起エリア、不耕起エリアともに約5kg弱であった。一方 、今年2025年の収穫量は耕起エリアで7.5kg 、不耕起エリアで12kgとそれぞれ1.6倍、2.6倍に大幅に増加した。この理由は、昨年は、収穫時期に収穫せずに、遅れてしまいその後の生育が抑えられてしまったことや6月の日平均の気温(横浜の 気象庁過去のデータより)が昨年に比べ今年は約1.6℃高かったなどの気象条件によるものが考えられる。
つるなしいんげんはライ麦を使った不耕起栽培に適していると言える。
小松菜は、葉っぱを虫に食べられてしまい、出荷に耐えるものはできなかった。収穫量は耕起エリア約11kg 、不耕起エリア約10kgで両エリアともほぼ同じ。食味に問題はなかった。
小かぶも、葉っぱを虫に食べられてしまった。収穫量は、耕起エリアで約13kg 、不耕起エリアで約11kgで耕起エリアの方が約20%多かった。食味は大きな問題はないが、大味の印象を受けた。
つるなしインゲンにおける作業時間(耕うん、播種、草取り、ライ麦播種、ライ麦倒し、収穫など)
累積作業時間は、耕起エリアで合計約17時間、不耕起エリアで合計約23時間かかった
図13. つるなしインゲン、小松菜、小かぶの日ごとの作業時間と累積作業時間
草取り+耕うんの作業時間は耕起エリア (7.2h/年)に比べ不耕起エリア(5.0h/年)は31%削減できた。一方、不耕起エリアでは 、ライ麦関係の作業、 及び作物の収穫作業に時間がかかった 。昨年に撒いたライ麦が腐らずに残っており、 そ のライ麦をよけ ながら 新しいライ麦 の種 を播種したので、時間がかかった 。また、収穫量が多いと作業時間が増えるので、収穫時間を除いて比較したところ、 耕起エリアに比べて不耕起エリアの作業時間の方が37%多く、不耕起エリアの方が時間的には手間がかかる結果となった。
図14. 耕起、不耕起の違いによる作業時間(ライ麦関係:ライ麦の播種、撒いたライ麦の発芽を阻害しないように前年のライ麦をよける 作業、ライ麦を倒す時間の合計)
まず前提としてグラフの緑色の部分は収穫作業で、収穫が多ければ作業時間も増えるため、緑色部分を除いて考えた方がよい。
草取り+耕うんだけで見ると、不耕起に変えたことによる3品種全体の削減率は31%であったのに対し、つるなしいんげんだけで見ると44%も削減され、つるなしいんげんは草取り+耕うんの作業時間の削減効果が高く不耕起栽培に適している 。
全炭素量(C)、全窒素量 (N)は昨年とほぼ同一の値でした。したがって、土壌中の難分解性有機物の量はほとんど変わっていない 。 今後、土壌表面に蓄積したライムギ組織と地下根残渣の土壌化が進むにつれ、徐々に土壌炭素量が増大していくと推察 。生きた細菌数(一般生菌数)は土1グラムあたりラムあたり3100万個と、一昨年のデータより少ない結果でしたが、一般の有機圃場、自然栽培圃場と、一昨年のデータより少ない結果でしたが、一般の有機圃場、自然栽培圃場、天然森林土壌の場、天然森林土壌のA,B層に匹敵する数のバクテリアが生息しており、豊かな土壌微生物叢が形成されているれている(みんな大地)
まだ2年目であり、今後ライ麦を使った不耕起栽培を続けることで炭素量が増えていくのか注視したい。
夏の日射が厳しい7月20日11:50(気温 34℃、3日前に降雨 )の土の表面温度を測定した。左図を見ると土の表面温度(Bx1)は真夏の日射の影響で約55℃にもなっているが、右図は不耕起エリアのうち 、ライ麦をめくって 土の表面を 測定した場所は約37℃であった( Bx1)。ライ麦で覆われている土の表面は 、露出した部分に比べ約18℃も低く抑えられている。
豪雨後の畑の水はけの様子を調べた。その結果、耕起エリアは水たまりができていたが、不耕起エリアはなかった。不耕起エリアは、今回の観察では水たまりは見られず、表面排水は良好であった 。
👉不耕起エリアで作物 の播種をする際には、ライ麦をよける手間がかかるため時間がかかっていた。来年は、草刈り機でライ麦にすじを入れ 、切れたすじに沿ってライ麦を開き、播種部分を確保
👉つるなしインゲンにおいては ライ麦を使った不耕起栽培に適していることがわかったため継続してデータを取得
👉小松菜と小かぶは葉に対する虫対策
👉引き続き全炭素量および一般生菌数などのデータを取得
自由学園
みんな大地
八一農園
ありがとうございました。
(2025年11月)