アリ・昆虫に関する研究
(行動生態学・群集生態学)
アリ・昆虫に関する研究
(行動生態学・群集生態学)
アリは世界で約1万種がいるとされ、日本でも約280種が記載されています。分類学的にはハチと同じ膜翅目に属し、コロニーとよばれる集団で生活し、コロニーは交 尾、産卵を担う女王カースト(女王アリ)と不妊でコロニー維持の労働を担うワーカーカースト(働きアリ)から構成されています。ワーカーのように自身では 繁殖せず血縁者に対して利他的に尽くす存在を「不妊カースト」といい、不妊カーストをもつ昆虫を真社会性昆虫とよびます。
アリやハチには半倍数性に基づく性決定機構があり二倍体は雌(女王とワーカー)、半数体は雄アリに発生します。この特殊な性決定機構により兄弟姉妹間に血縁性の偏りが生じてしまいますが、それにより雌にとっては理論上血縁度がもっとも高い姉妹を養育することが自身の適応度を最大にする行動となるため、自身では子を産まず姉妹を養育する不妊のワーカーが進化したと考えられています。このような血縁者に対して利他的にふるまう行動が選択され る過程を「血縁選択」といいます。アリはハチの分類群の中の女王が1個体、その交尾回数も1回(単女王制)のもっとも単純な社会を持ったグループから単系統群として発生してきました。しかしハチと比べてアリでは社会の構造や繁殖の方法に著しい多様化が起きています。女王の数や女王の交尾回数は種 類によって異なり、またワーカーの数が数十個体の種もいれば、数百万個体という種もおり、社会の構造は複雑化しています。また種によってはワーカー に兵アリなど、サブカーストとよばれる個体間の形態変異がみられ、それによってコロニー内の労働を効率的にこなす分業化が発達しています。
またアリでは生活様式にも多様な発達した特徴が多くみられます。樹上性から地表、地中性生活の種まで生活空間は幅広く、巣も巨大な構造物を建 築するケースから、石下や木の中の隙間を巣とするシンプルなケース、さらに放浪を繰り返し定住的な巣を持たない種類もいます。また利用する餌資源も肉食性から雑食性、植食性と幅広く、特定 の 節足動物や昆虫のみを餌としたり、種子やキノコ類しか食べない専門食化も起きています。また生活空間や餌資源の確保、利用のため、他の生物と様々な相互関係を構築し、特にアブラ ムシやカイガラムシ、さらに植物と強い共生関係を結ぶ種も多くいます。
このように複雑化したアリの社会構造や繁殖様式の特徴に注目し、下の項目のような研究を行ってきています。
1. ヤドリウメマツアリの社会寄生行動 ー生活史と化学擬態についてー
3. ルリアリによるカートン破損行動と防除について
4. ウロコアリの罠型顎 trap-jaw の個体群変異と構造
5. アリと大型果実・種子との相互関係について
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E-mail: kyohsuke@staff.kanazawa-u.ac.jp