(一財)バイオインダストリー協会提供
2023.9.9 第17回バイオ関連化学シンポジウムにて藤岡助教が口頭発表を行いました。
※2023.6.23.の化学工業日報(朝刊)に、本研究の紹介記事が掲載されました!
【研究概要】ラマン散乱は蛍光と比べてスペクトル幅が狭いため,多重検出に秀でたイメージング手法として注目を集めています。しかし,ラマンイメージングに利用可能なラマンプローブの数は少なく,特に標的分子との反応前後でラマン信号強度が変化するようなactivatable型ラマンプローブの報告は極めて限定的でした。そのような中,我々のグループではこれまでに,標的酵素との反応によってラマン信号がoffからonにactivateされるラマンプローブを世界に先駆けて発表していました(J. Am. Chem. Soc. 142, 20701-20707 (2020))が,このプローブには生体組織において標的細胞のみを選択的に染色できないという課題がありました。本研究では,このような課題を克服した新規activatable型ラマンプローブの開発に成功しました。本プローブは酵素反応後に,吸収波長の長波長化に伴う前期共鳴ラマン効果の増大によってラマン信号がactivateされるのに加え,プローブの凝集体形成能もactivateされる性質があり,酵素反応後に凝集体を形成することで細胞内滞留性が向上し,酵素発現領域と非発現領域の染め分けが可能になることが明らかになりました。本プローブは様々な細胞が混在するヘテロな生体組織でも高い選択性で標的細胞領域を染色することができるため,生体組織における多重酵素活性イメージングへの応用が期待されます。
【研究概要】
光照射で信号がONになるphotoactivatable型蛍光プローブは、特定の細胞や生体分子の動態を高い時空間分解能で追跡するのに有用ですが、蛍光スペクトルは比較的幅が広いため同時に使用できるプローブの数に制限があります。一方でラマン散乱はスペクトル幅が蛍光よりも狭く、ラマンプローブを用いたイメージングにより同時に多種類の標的分子を識別可能です。したがってphotoactivatable型ラマンプローブを開発することができれば、マルチターゲットな生命現象を詳細に追跡可能となると考えられます。
今回我々の研究グループでは、キサンテン10位にテルルを有する9-cyano-10-telluriumpyronin(9CN-TeP)を色素母核とした新規photoactivatable型ラマンプローブの開発に成功しました。9CN-TeP誘導体は酸化されることで吸収波長が長波長化し、前期共鳴ラマン効果によるラマン信号の増強が生じます。さらに構造展開によって安定性が向上した9CN-diMeJTePは赤色光照射によって迅速に光酸化されラマン信号が増大するphotoactivatable型ラマンプロ-ブとして機能することが明らかになりました。
今後、さらに分子を改良することで、photoactivatable型ラマンプロ-ブを用いた細胞イメージング等の生命科学研究への応用が期待されます。
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