知られざる神楽とカパハカの共通点
知られざる神楽とカパハカの共通点
神楽とカパハカは、個々の演舞の形式は違いますがそれぞれの神話から成り立っているところや、近代社会において祭りごとやお祝、儀式に舞うというところが似ています。ニュージーランドの地鎮祭や入学 式、訪問者の歓迎式には、公私を問わずポーフィリというカパハカグループによる歓迎の舞踊が行わ れます。現代のカパハカの活動は、そのような儀礼的な用途として尊重されているところが 現代の神楽に似ているように思います。
歴史的には、イギリス人による植民地化により1907年にマーオリ神職者による土着の信 仰が一旦弾圧され、その際にカパハカ起源の楽器演奏や舞踊などの表現も禁止されました が、その後、観光客のための興行として生計を立てていた時代を経て、マーオリの伝統芸 能・文化としてニュージーランド政府支援の下、地域の文化継承活動の中で子供たちもカパ ハカを気軽に学べる環境ができてきました。かつて備中神楽の農業を営む神楽師たちが収穫 後から春までの間、観光興行としていた時期があり、現代では社会形態の変化から都心で働 く若手大夫たちが週末に儀式やお祝事で演舞するということと似ています。また、備中神楽 のような里神楽になる前の明治から昭和にかけて、雅楽の廃止令があり、日本でも文化継承 として決してまっすぐな活動状態ではなかったということがあります。
神楽・カパハカ共に、起源になっているのは神話にでてくる女神さまです。神楽では、巫女 の象徴となったあめのうずめのみこと、カパハカではヒネ・テ・イワイワとヒネ・ラウカタ ウリがそれぞれ女性であったことがあります。
また、神話の中でひと際ダイナミックな見どころとして出演する、武神・スサノオノミコ ト、そして、ツー・マタウエンガ(通称ツー)が、それぞれの武器、剣やタイアハを用いて 勇敢な演舞を披露します。皮肉にも、両神様はその勢いが非常に強く、神話の中でも常に正 義あふれるイメージがあるわけではありません。その反面、人間味あふれるパーソナリ ティーが、逆に人々が長きに渡って親しんでこれた理由かもしれません。古事記やマーオリ 神話は神様像を決してパーフェクトだという風に描いてはないところが特徴だと思います。 つまり、神様は御先祖様であり、さまざまな神話のストーリーが教訓を教えてくれるという ことがあります。
最後に、神楽とカパハカの伝統的価値として、口承であるということがあります。神楽やカ パハカに限らず、日本やマーオリの他の伝統芸能や道も同様です。お話を聞いて繰り返す、 その内に自然とその形が身に付き、末には自然体でその動きが習得でき、心と体の動きが一 致して自然と一体になるということがまさに日本人とマーオリの伝統芸能の真髄ではないか と思います。そして、それぞれの舞は観客とも一体とならなければ成り立ちません。つまり
観客がその舞の一部になるということになります。マーオリの表現で、「イヒ」「ウェヒ」 「ワナ」と言い、カパハカには無くてはならない「合気」の要素の一つです。それぞれが、 異なる起源で発祥し継承されていても、そのコアーの部分はそれぞれの人々しか実感できな い呼吸や所作があり、無意識にそれが本物だと感じるのだと思います。また、その誇り高き 芸能は決して品評会の目的ではなく、その土地に根付いた代々受け継がれていく語りの精神 にその真髄があるのだと思います。(カンタベリー大学マーオリ先住民学研究生・藤川佳美)*マーオリの神話(起源)は動画の下にあります。
ハカが日本人にウケた理由
2019年にラグビーワールドカップが日本で開催され、ひと際目立って話題になったのがNZナショナルチーム・オールブラックスの『ハカ人気』です。千葉県の柏少年サッカークラブの少年たちがハカを練習して、オールブラックスの来日を歓迎したというのは、まだ記憶に新しいことです。
泣く子も黙る『ハカ』ブーム。その奥底には、日本人が未だ気が付いていない、本能的な『気』・『間』そして『呼吸』など『命』を繋ぐ感覚が類似しているかもしれません。また、それは、ラグビーハカ人気について日本で顕著に現れた現象であることもただの偶然ではないような気がします。(カンタベリー大学マーオリ先住民学研究生 藤川佳美)Photo: POOL / Photosport NZ Cited in RNZ. 2019
マーオリ神話(起源)
主要な神様アツアAtua
マーオリの起源の基の夫婦-ランギ・ヌイ(空の神・父親)&パパ・ツー・アー・ヌク(大地の神・母親)
息子 ツー・マタ・ウエンガ(武神&人間の象徴の神)
息子 ターネ・マフタ(森と鳥の神)
息子 ターフィリ・マーテア(風と気象の神)
息子 タンガロア(魚と爬虫類の神)
息子 ロンゴ・マー・ターネ(別名ロンゴ・マラエロア)(さつまいもと平和の象徴の神)
息子 ハウミア・ティケティケ(食用シダの根っこの神)
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はじめは、ずっと闇の世界でした。なぜなら、父親のランギと母親のパパはずっと体をぴったり寄せて、その間には隙間もなく息子たちが身動きとれずにいたからです。
息子たちは、ずっと闇、つまり、無の中に押し込められていました。
息子のツーが言いました。「こんな真っ暗なところはうんざりだ。両親を殺してここから出よう!」
息子のターネが、背伸びをして力一杯押してみたらようやく両親を別れさせることができました。
そして、子どもたちは、ようやく、光をあびてこの世ができました。
父、ランギは大空になり、母、パパはアオテアロア(NZ)の大地となり、子どもたちはその間の世界にいることができるようになりました。
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息子の一人、風と気象の神、ターフィリは父との関係が強く、両親を別れさせたターネを攻撃し、ターネの森を破壊しました。
次に、ターフィリは、タンガロアの2つの子孫、魚と爬虫類の神を攻撃したため、魚の神は海へ逃げ、爬虫類の神は山手に逃げました。
そしてやがて彼らは食用の役目を果たす運命になりました。
母親のパパは、それらの2つの神やロンゴ(さつまいもの神)、そして、シダの根っこの神を保護し、隠しました。
そのあと、ターフィリは、ツーを攻撃しました。
ツーは目立って勢力が旺盛な息子で、ターフィリとランギの興奮が収まるまで戦いました。
多くのトフンガ(神主)や語り部が語るそれらの息子たちは、
ツーは、武神の神になって人間のありさまがそうであるように、戦をしかけては失敗を繰り返したりするという人の象徴に、
ターネは、森や鳥の神様として、人間によって管理される生命を誕生させ育むという創成の象徴に、
ロンゴやハウミアは、さつまいもやシダの根っこの象徴として、開拓や野生の象徴として、
タンガロアは、海の神様として、海や海の生物の象徴として、
そして、ターフィリは、ツーのごとく、荒々しい風や気象をつかさどる神の象徴として、
それぞれの役割がある保護神ということになります。
また、その兄弟の中でツーは一番人間らしく、その荒々しく強靭な気性から武神とされています。
人の象徴といわれるだけあり、人々に尊敬され親しまれてきました。
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