私たちは、環境負荷を大きく減らすことを目指して、新しいプロセス技術の開発に取り組んでいます。特に、微粒子プロセスに焦点をあて、相界面での可逆な動的作用からナノ粒子を含む微粒子のグリーン合成、微粒子を思い通りに接合・集積するための新しい方法論の開拓を進めています。
研究活動の推進にあたり、5大学6研究所連携プロジェクト(DEJI2MAプロジェクト)、接合科学共同利用・共同研究拠点の共同研究員制度、国際協働研究費支援(OUマスタープラン事業)等を活用し、国内外の研究者と連携しながらイノベーションの創出を目指しています。また、私たちの技術シーズや研究成果をもとに民間企業との共同研究も積極的に進めており、社会実装に向けた取り組みを加速しています。
AuやAgなどの貴金属ナノ粒子は、一般的に還元剤を用いた液相還元法によって合成されています。しかし、還元条件に敏感であるため、粒子サイズや形状に不均一性が生じやすく、また一部の還元剤には毒性を有するものもあります。私たちは、固液界面の性質に着目し、界面近傍において貴金属ナノ粒子を還元剤フリーに合成できることを明らかにしました。本手法では、還元剤だけでなく、ナノ粒子の分散安定化を目的として添加される界面活性剤も不要であり、長期間安定に分散した貴金属ナノ粒子の合成が可能です。さらに最近では、さまざまな基材への固定化にも成功しており、その材料応用に向けて取り組んでいます。
直径が50 nm以上の細孔はマクロ孔と呼ばれ、これらが連通した開気孔である場合、気体や液体が容易に流通します。セラミックス分野では、物質にマクロ孔を形成させるために鋳型や気孔形成剤が用いられます。私たちは、炭酸塩を水蒸気中で熱分解することで、迷路状に連通したマクロ開気孔を有する酸化物粒子が自発的に形成されることを見出しました。この構造体は、ナノ粒子の物理的捕集が可能であるため、例えば導電性粒子を内部に複合化することでLiイオン電池の負極材料としての応用が可能です。さらに最近では、磁性マクロ多孔質粒子の合成にも成功しており、環境浄化用途やバイオ・医療分野での応用に向けた研究を加速させています。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、クリーンエネルギーの変換技術や蓄電技術の高度化が求められています。これらの要素技術に用いられる材料には、LiやNiなどの希少元素が含まれており、地政学的リスクの観点から、それらのリサイクル技術の開発は喫緊の課題です。そこで私たちは、使用済み材料(固体)から直接かつ選択的に元素を抽出・分離する新たな循環プロセスの開発に取り組んでいます。さらに、固体の直接変換技術は形状制御にも応用可能であり、蒸気を介した固体から固体への物質変換を通じて、3次元的な階層構造を持つ多孔体の製造が可能です。本手法は、サーキュラーエコノミーにおけるアップコンバージョンに貢献します。
接合科学共同利用・共同研究拠点における「先導的重点課題」(代表:小澤隆弘、研究期間:2025~2027年度)として、微粒子を積み上げて機能構造体を創製する要素技術である“ボトムアップ粒子接合”を、国内の共同研究員とともに推進しています。化石エネルギーからクリーンエネルギー中心の社会システムへと変革するGX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向けて、本技術を活用し、クリーンエネルギー変換技術を支える材料の創製や材料循環に取り組んでいます。