シンポジウム1
50人未満事業所へのストレスチェック制度拡大に向けての課題と期待
企画:日本ストレスマネジメント学会産業・労働実践領域部会
司会:岡島 義(東京家政大学)
田上明日香(SOMPOヘルスサポート株式会社)
話題提供者:島津 美由紀(ソニーピープルソリューションズ株式会社)
星野 宏(キャリアサポートオフィス process /公財)日本公認心理師協会)
田渕 順 (ルーセントメンタルヘルスマネジメント)
指定討論者:古井 景(ルーセントメンタルヘルスマネジメント顧問)
企画主旨:
2024年11月に厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」による中間とりまとめが公表された。その後、2025年1月27日に「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案要綱」の諮問及び答申が行われ、今まで50人以上の事業場とされてきたストレスチェック実施の義務をすべての事業場へ拡大する旨の法律案を作成し、今通常国会に提出する予定である旨が示された。
これまで、産業・労働分野の心理職は、高ストレス者の面談やストレスマネジメント教育などの取組みに参画し、職場のメンタルヘルスケアに関わってきたが、今後一層その取組みのニーズや重要性が高まると考えられる。ストレスチェックを通して関わることができる専門人材はまだまだ少ないことや、50人未満の事業場を対象とする活動は産業保健体制が不十分な場合も想定され、そうした中で柔軟に対応するための知識や技術なども浸透してきているとは言えない。そこで、本シンポジウムではストレスマネジメントの専門家である我々がどのような課題を乗り越え、この社会的ニーズに応えるために準備しておかねばならないかについて、これまでのストレスチェック制度を振り返りつつ国の検討会で議論された内容を把握し、国内で先駆的に取り組まれている専門家から実際の活動状況など学ぶ機会としたい。
シンポジウム2
ストレスマネジメント実践のエビデンス
司会:岡村 尚昌(久留米大学)
話題提供者:堀内 聡(比治山大学)
土屋 さとみ(アース・キッズ株式会社)
田中 佑樹(和洋女子大学)
前田 駿太(東北大学)
指定討論者:村上 久美子 (東大寺学園中学高等学校)
企画主旨:
日本ストレスマネジメント学会が設立された当時と比較すると、「ストレスマネジメント」という用語は広く利用されるようになった。それとともに、教育・特殊教育、災害支援、産業・労働、基礎・医療、そしてライフスタイル等の各領域において、ストレスマネジメントの実践が盛んに行われている。このシンポジウムでは、ストレスマネジメントの実践のエビデンスという普遍的なテーマに取り上げたい。
近年、医学や心理療法などの近接領域の影響を受け、ストレスマネジメント実践において、エビデンスにもとづく実践の重要性が一層認識されるようになっている。エビデンスに基づく実践とは、「エビデンス(根拠)」を念頭におきつつ、「支援者の経験」、「活用できる資源」や「対象者自身の価値観」などを統合して、支援や治療の意思決定を行うことを意味する概念である。そのため、ストレスマネジメントの実践家には、介入の効果に関するエビデンス、実践家自身が有する専門性や資源、そして対象者の価値観を踏まえながら、どのような介入を行うのかを決めていく姿勢が求められているといえる。
エビデンスに基づく実践は、理念的には誰もがその重要性を理解できるが、実際に実行することは簡単ではない。それにはたくさんの理由が予想できる。例えば、「エビデンス(根拠)」、「支援者の経験」、「活用できる資源」、そして「対象者自身の価値観」の統合が難しいかもしれない。また、念頭に置くべきエビデンスの蓄積が乏しく、エビデンスに基づく実践自体が難しいということも想定される。
各領域において、エビデンスに基づくストレスマネジメントが実践され、普及してゆくためには何が必要なのであろうか。本シンポジウムでは、まず3名の話題提供者が発達支援におけるエビデンス(土屋)、嗜癖問題に対するエビデンス(田中)、基礎・医療領域におけるエビデンス(前田)に関する話題提供を行う。各領域における実践や研究に言及しながら、エビデンスに基づく実践について話題提供を頂く。これを受けて指定討論を行う(村上)。その後、全体討論として、エビデンスに基づくストレスマネジメントが実践され、普及してゆくためには何が必要なのかをフロアの皆様と議論したい。