2025.8.2 新着
2025.8.2 新着
ヴィアレブと他のデバイス治療の適応の違いについて
今回このアンケートにご協力いただいた方、ありがとうございます。お返事を頂いた方の平均年齢は70台、罹病期間は短い方で12年、長い方でAさんの23年ですから皆さん大体60台で発症されて10年以上経過したころでヴィアレブ導入されている感じでしょうか?現在日本で使用できるデバイス治療はDBS、デュオドパ、ヴィアレブの3つということになります。その中でヴィアレブは患者さんに対する侵襲が最も少ないことが利点の一つといえるでしょう。DBSのように頭の中に電極を入れる必要もなければ、デュオドパのように腸ろうを作る必要もありません。3日に一度自分で差し替える皮下注射用のチューブをポンプにつなぐだけです。このような侵襲の少なさがヴィアレブの長所であり、これまでDBSを受けるなんてとんでもないと思われていた方でも、気軽にCDS(持続的ドーパミン刺激)を経験出来るのが良いところだと思われます。ヴィアレブはデュオドパのように生理的な経路を通って十二指腸から吸収されるわけではありません。ですからDさんも書かれているように飲み薬のように食べ物との相互作用を心配する必要はありませんし、便秘や下痢といったお腹の調子によってL-DOPAの吸収が左右されることもありません。食事との食べ合わせにより極端にL―DOPAの効き目が変動し症状の安定しない方、内服のL-DOPAを服用してから効き目が出てくるまでの時間が遅くなるdelayed ONのある方などは試してみる価値のある治療かなと思います。
ただし、皮下に投与される薬液の中に入っている薬はホスホL-DOPAというプロドラッグですので、体の中でALP(アルカリフォスファターゼ)という酵素で脱リン酸化されてからL-DOPAになります。おひとりヴィアレブを導入した後でかえってOFFが長く、深くなった方がおられましたが何らかの形でこのALPの活性が弱まっている可能性があるのかもしれません。このような予想外の反応や副作用が出た時にもヴィアレブの場合はポンプを取り外してしまえば、やめるのは極めて簡単です。
一方、ヴイアレブの短所としてはやはり皮下に投与するのでチューブを留置したところの周りの皮膚が腫れたり、赤くなったり、硬くなったりする方が少なからずおられることです。写真はその一例ですが、ここまでひどくならなくても硬結といって刺したところが硬くなる方がおられます。糖尿病でインスリンの皮下注射をしている方がずっと同じところに注射をし続けているとインスリンボールといってゴルフ球くらいの大きさの硬結が出来て、注射しても吸収が悪くなってインスリンが効かなくなってしまうことがあります。今後このヴィアレブを長期間使用する方が増えてくればこのような問題が増えてくる可能性はあるかもしれません。薬の吸収が悪くなればもう使えないわけですから、今導入してうまくいっている方も将来的にこの治療が使えなくなる可能性を考えておかなければならないかもしれません。今の所ヴィアレブの次の治療というとDBSしかありませんので、DBSは絶対嫌という方は難しいかしれません。iPS細胞の治療が出来るようになるまで、このヴィアレブで粘るという選択肢はありかもしれませんが。