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パーキンソン病はドパミン神経細胞から分泌されるドーパミン量が減少することとアセチルコリンとのバランスが崩れることによって発症する。ドーパミン量の減少はタンパク質「αシヌクレイン」の脳内への異常蓄積によってドパミン神経細胞が死に至ることまでは確認されていた。ただ、蓄積される要因は長年不明だったという。川畑特任准教授らは何らかのタンパク質が関わっているとみて研究を進めた。長年の実験などの結果、同じく脳内にある脂肪酸の輸送に関わるタンパク質FABP3との付着による可能性が高いことを新たに突き止めた。あわせてFABP3との付着を解消する効果のある薬の開発にも成功した。パーキンソン病を発症させたマウスに新薬を投与したところFABP3とαシヌクレインが付く動きが弱まる効果を確認した。αシヌクレインが神経細胞内へ取り込まれる現象が改善された。脳内蓄積が解消された結果、運動障害が出ていたマウスが健常レベルまで回復した。これを受け、2026年度から3年間、人体への治験を行い、2029年度以降の薬事承認を目指す。
以下、このニュースのキーとなる用語とパーキンソン病のプロセスフロー図等で、今回の発見のポイントを整理した。
4つのキーワード
αシヌクレイン
神経細胞で働くタンパク質。非常に変形すると有害化し病気の原因になる。
レビー小体
異常化したαシヌクレインが集まってできるタンパク質の塊。神経細胞を壊す原因となる。
ミトコンドリア
細胞のエネルギーをつくる物質。
ドパミン神経細胞
ドパミンをつくる神経細胞。
パーキンソン病のプロセス
(1) αシヌクレインが神経細胞内に侵入
↓
(2) レビー小体を形成
↓
(3) ミトコンドリアが障害
↓
(4) ドパミン神経細胞が減少
↓
(5) パーキンソン病の発症
新たな2つのキーワード
FABP3 (Fatty-acid binding protein 3)
αシヌクレインを神経細胞に“運び入れ”、さらに“凝集”しやすくする働きをもつタンパク質
FABP3阻害薬
αシヌクレインを神経細胞に入るのを防ぎ、異常な凝集や細胞障害を抑えるための薬
福島医大川端先生研究チームの実験①
FABP3を遺伝的にもっていないマウスの実験
【方法】
FABP3欠陥マウスにαシヌクレインとMPP(神経毒になるもの)を投与して、その後のプロセスを観察する。
【結果】
パーキンソン病発症までのプロセスに現れるはずの状態が見られなかった。
・αシヌクレインが神経細胞に入らなかった。
・凝集体(レビー小体)にならなかった。
・ミトコンドリアが壊れなかった。
・神経細胞が減らなかった。
FABP3がαシヌクレインが神経細胞に運び入れる「鍵」となっているんじゃないだろうか。それならそのプロセス自体をブロックするFABP3阻害薬を作ってその効果を確認しよう!
福島医大川端先生研究チームの実験②
FABP3阻害薬を投与したマウスの実験
【方法】
PDモデルマウスにFABP3阻害薬を投与して、その後のプロセスを観察する。
【結果】
実験①で見られた4つの状態に加えて、運動機能と認知機能の改善が見られた。
パーキンソン病のプロセス (今回の発見)
(1) FABP3がαシヌクレインを神経細胞内に運ぶ
↓
(2) レビー小体を形成
↓
(3) ミトコンドリアが障害
↓
(4) ドパミン神経細胞が減少
↓
(5) パーキンソン病の発症
☞ 薬物治療なので高齢者への適応も期待できる。今後の治験の経過報告に注視。
【情報元】
(1) 福島民報 2025年12月3日
(2) YouTube「パーキンソン病専門コントロールPD」【朗報】パーキンソン病の根本治療薬が治験開始
2025年12月1日社会保障審議会(厚労省の諮問機関)の介護保険部会で、介護保険サービス利用時の自己負担(原則1割)が2割となる人の拡大に向け新たな所得基準として、260万円、250万円、240万円、230万円の4案を示しました。この基準を最も低い230万円まで引き下げた場合、35万人に影響すると試算しています。
☞ 自己負担2割対象拡大の審議の行方に注視。
【情報元】
(1) 厚生労働省ホームページ
🏠ホーム>政策について>審議会・研究会等>社会保障審議会(介護保険部会)>第130回社会保障審 議会介護保険部会の資料について>資料1 持続可能性の確保 → 001603423.pdf
(2) 京都新聞(2025年12月2日)1面「介護負担増 月7000円上限案」
2025年6月、アメリカの病院でiPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞がパーキンソン病患者の脳に移植され、アメリカでも再生医療の治験が始まりました。今回の治験は計7例を2年間経過観察される計画です。
☞ 治験結果が日本での実用化に与える影響に注目
【情報元】
(1) NHKニュース(2025年7月7日報道):「iPS細胞でパーキンソン病治療 アメリカで日本初の細胞移植」
(2) 読売新聞オンライン(2025年7月7日配信):再生医療の進展としてiPS細胞移植に関する記事
2025年6月20日、第217回国会において「パーキンソン病治療研究支援及び医療費助成制度の改善に関する請願」が採択され内閣府に送付されることになりました。請願書への署名および署名活動にご協力くださった多くの会員・関係者の皆様に改めて感謝申しあげます。ありがとうございました。これにより、再生医療・遺伝子治療などへの研究・開発をより一層推進するための支援、特定医療費(指定難病)受給者証の交付申請手続の簡素化など、進展が期待されます → リンク
2025年4月17日、京都大学医学部附属病院から、パーキンソン病患者にiPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を移植する治験で、有効性と安全性が示唆され、この治療の国による承認申請に向けて製薬会社が準備を進めている旨のプレス発表がありまし他 → リンク