抗生物質が効かない「薬剤耐性菌」が地球規模で蔓延しています。新たな抗生物質の開発は進まず、たとえ開発できたとしてもすぐに耐性菌が現れる「いたちごっこ」が続いています。そのため、新しい抗菌療法の開発への期待は極めて大きなものがあります。こうした中で、細菌に感染し死滅できるバクテリオファージ(ファージ)を利用した抗菌治療(ファージセラピー)の臨床応用に向けた開発が活発になってきました。
2020年の第93回日本細菌学会総会では、ファージセラピーを主題としたシンポジウムが開催され、参加者らはファージセラピー実現の方法を模索して参りました。そこで、ファージセラピーの実現と普及を目指した研究グループを独立した研究会とし、本領域をさらに発展させようという構想が生まれました。
「日本ファージセラピー研究会」では、ファージセラピーの実現と普及を目指します。特に、ファージの基礎・応用研究を発展させ、基礎・臨床のさまざまな研究者が情報交換できる場を提供し、国や企業への働きかけを行い、次代を担う若手研究者を育成していきます。具体的には、ファージやその関連領域の基礎研究の活性化、それに関わるさまざまな研究領域の融合、得られた研究成果や知識の確認・共有・意見交換、臨床応用上の問題点の検討、医薬品規制当局や医療関係者への働きかけ、研究者や医療従事者に向けた勉強会などを行います。
さまざまな分野の研究者が一堂に会して、薬剤耐性菌による様々な課題の解決を目指し、ファージセラピーについて議論していくことは、ファージセラピーの実現と同時に、科学技術の発展と人類の幸福に寄与するものと考えます。
以上、ファージセラピー研究会設立の趣旨にご賛同いただき、各方面のご理解とご協力をお願い申し上げます。
2020年(令和2年)2月、第93回日本細菌学会総会でバクテリオファージを利用した抗菌療法である「ファージセラピー」を主題としたシンポジウムが開催されました。抗生物質が効かない「薬剤耐性問題」が顕在化し、新しい抗菌療法が求められているなかで開催されたものです。その会を通じて、ファージセラピーの実現と普及には更なる研究の推進、認可基準の作成、企業との連携、若手研究者の育成などが必要なことが明らかになり、新たな研究会を設立する声が上がりました。そこでシンポジウム参加者の有志が中心となり「日本ファージセラピー研究会」の設立を提案し、2020年(令和2年)8月3日に本会を発足する運びとなりました。