ファージセラピーについて

ファージセラピーとは?

 ファージセラピー(ファージ療法)とは、細菌が原因の病気を治療する方法です。病原細菌を死滅させられるファージと呼ばれる微生物が、病気を治すと考えられています。ファージセラピーの歴史は古く、1910年代から現在のジョージア・ロシア・ポーランドなどを中心に研究・治療が行われてきました。最近では、ヨーロッパやアメリカでの実施例が目立ちます。


ファージセラピーで薬剤耐性菌に打ち勝つ?

 1928年にペニシリンという薬が細菌を死滅させることがわかり、それから抗菌薬の開発が進みました。しかし、抗菌薬を使い過ぎた結果、抗菌薬が効かない(または効きにくい)細菌が増えてしまいました。これが薬剤耐性菌です。特に近年では、たくさんの抗菌薬がきかない耐性菌が増えており、治療が難しくなってきています。そこで注目されているのがファージセラピーです。ファージは薬剤耐性菌に対しても効果があるので、薬剤耐性菌に対しても有望な治療法として期待されています


ファージの特徴

ファージは自然界に広く存在します。我々の体の中にもたくさんのファージが存在しています。地球上には10の31-32乗ものファージがいると推定されています。ファージは自然の掃除屋のような存在で、細菌を取り除く役割を果たしています。

ファージはある特定の細菌だけに攻撃を仕掛けます。このため、他の細菌や人の細胞には影響を与えないという特徴があります。特定の病原体を引き起こす細菌が体内にいる場合、ファージを使ってその細菌をターゲットにして、効果的に排除できると考えられています

ファージは抗生物質と異なり特定の細菌にだけピンポイントで作用します。抗生物質は広範囲に影響を与えることがありますが、ファージは作用範囲が狭いです。そのため、抗生物質よりも安全で副作用の少ない治療法になることが期待されます。ただし、病気を引き起こす細菌を選ぶ必要があるため、治療の前に調査や検査が必要です。また狭い作用範囲を補うために複数のファージで治療することも多いです。

ファージの大きさは20-200nmほどで極めて小さいですが、それでも抗生物質よりは大きいです。特定の組織ではファージが効果的に届けられたり、働くことが難しいことがあります。また、免疫応答によって、ファージが除去されることがあり、治療の効果が制限されることがあります。

ファージセラピーの社会実装に向けて

 ファージセラピー研究会では、ファージセラピーに関する最新の研究を促進し、研究者同士の情報交換や協力を行います。新しい知見や技術の共有により、ファージセラピーの効果的な利用法を進展させます。今後、医療従事者や研究者に対して、ファージセラピーに関する教育プログラムやトレーニング、治療ガイドラインの策定にも貢献していきます。

ファージによる溶菌テスト

寒天培地上のファージのプラーク