2020年2月8日更新
1.MPHプログラム
1-1. カリキュラムの概要
Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health(BSPH)のカリキュラムの概観についてはこちらに詳しく書かれています。
アメリカの公衆衛生学修士(Master of Public Health: MPH)プログラムの場合、2年間の大学院が多いと思いますが、BSPHのフルタイムMPHは6月末~翌年5月までの11ヶ月間のプログラムです。また、Fall semester、Spring semesterという2学期制ではなく、11ヶ月間で5 term (1termは8週間)を履修する制度になっています。この5つの termはそれぞれSummer, 1st, 2nd, 3rd, 4th termと呼ばれており、termごとに新しいコースを履修します。2ndと3rd termの間に1ヶ月間程度のWinter breakがありますが、その他の期間の休みは最長でも1週間で11ヶ月間を走り抜けるカリキュラムになっています。
一般的にMPHは実務者向けの学位(professional degree)です。しかし後述するようにBSPHでは研究者向けの学位(research degree)プログラムは別に存在するものの、当該MPHプログラムでは学生の希望次第で研究者向けのコースを多く選択することが可能です。履修している授業は独自のCourseplusというサイトにまとめられ、そこから授業の資料ダウンロードや録画の視聴などができるシステムになっており、オリエンテーション期間中にそのサイトの説明もなされます。
1-2.卒業要件
1)通常の授業(Course)
卒業までに必要な単位数は80単位です。このうち、必修(Core Courses)は全てのコースを履修する必要があり、残りは選択(Elective Courses)から履修できます。Core Coursesについてはこちらのページに詳しく書かれていますが、下記のとおり多くはSummer termに履修することになります。ただし、Summer termの間に単位を取れなかったとしても、1st term以降にも必修の要件を満たすコースはありますので、5 termの間のどこかで取れば問題ありません。Elective Coursesについては自分が学びたいコースを履修することができます。Hopkinsの場合は入学時には特に専攻を決めずに入学しますので、分野に縛られない履修が可能ですが、専攻については後述の1.5を参照してください。
基本的に、Summer termは全てCoreなのでElectiveは1st termから選択してとることになります。Summer termについては少し特殊なので、タイトルを分けて下に記載します。
2)CapstoneとPracticum
MPHプログラムには通常のcourse workの他に、CapstoneとPracticumがあります。Capstoneとは、研究結果等をレポートにまとめて発表するプロジェクトです。私達が入学時に配布されたMPH program manualには、Capstoneの目標について"The goal is for students to synthesize, integrate and apply the skills and competencies they have acquired during the program."と書かれています。具体的には、literature review、program plan、program evaluation、policy analysis、research proposal、research report、data analysis等です。
Practicumは"実地実習”のような感じでしょうか。MPH program manualには、"The MPH practicum requirement engages students in the application of public health concepts and critical thinking to real world public health problems."と書かれています。授業がそのままPracticumの要件を満たすようなコースもありますし、Winter break中にアメリカ国外に出てPracticumをする学生もいます。Practicumは最低100時間、自分が選択したプロジェクトに参加することが義務付けられています。
卒業のためには、上記の80単位のコースに加えて、CapstoneとPracticumを修了する必要があります。
1-3.Summer term(6月下旬~8月下旬)
6月下旬、2日間の全体のオリエンテーションの後、最初のSummer termはすぐに始まります。Summer termは全ての授業が必修であり、基本的にElective courseは取らずにMPHの学生は皆同じ授業を履修します。2022年度のSummer termのコースはEnvironmental Health(5単位)、Epidemiologic Inference in Public Health I(5単位)、Public Health Policy(4単位)、Population Dynamics and Public Health(2単位)、Introduction to Bioethics in Public Health Practice and Research(1単位)、Introduction to MPH Studies(1単位)、Academic & Research Ethics at BSPHという構成でした。最初から盛りだくさんです。
Summer termは全員で同じ授業を受けることもあり、授業の合間合間にオリエンテーションの続きがあります。
1-4.1st~4th term
1st term以降は、基本的に履修するコースを(Academic Adviser等に相談しつつ)自分で決めていきます。その時点でまだとっていないCore Courseと、自分がとりたいElective Courseを選択していきます。
International Studentの場合、Visaの関係上各termで12単位以上取る必要があります。
各termに履修できる上限は22単位ですが、各学生に個別に付くAcademic Adviserの許可があれば、それを超えて履修可能です。1単位あたり週に1時間の講義+予習復習2時間で合計3時間程度を費やすことが期待されますが、コースによって大きく異なる要求水準や自身の得手不得手で、必要な労力は変化します。履修した各コースの内容をしっかり身に付けたいのであれば、各termで18単位程度に留めておくのが賢明のようです。
1-5.専攻
BSPHのMPHの特徴の1つに、入学時点では自分の専攻は決めずに"School-wide"というプログラムに所属することが挙げられます。Epidemiology, Biostatistics, Health Policy and Management, Behavioral Science, Environmental Health, International Health等の専攻は入学後に各自で決めていきます。もちろん、Core以外のコースは全て同じDepartmentからとることもできますが、様々なDepartmentのコースを満遍なくとることもできます。つまり、Core以外のコース選択に関しては自由に決めることができます。
ただし、授業の決め方としては自分の興味のある分野に集中するconcentrationと、より自由に分野横断的に授業を選ぶcustomizeという2つの履修の進め方があり(program manual参照)、どちらでカリキュラムを組むかによって、どれだけ自由に履修できるかが変わってきます。
concentrationにする場合はそこで求められるコースでいっぱいになることも多く、自由度は低くなるかもしれませんが、concentrationのrequirementを参考にしながらcustomizerとして授業を選ぶということも可能ですので、興味を満たしながらも比較的自由に授業を選ぶということもできます。
1-6.Certificate Program
BSPHには上記のConcentration 以外にCertificate Programもあります。Certificate ProgramはPublic Healthのトピックを集中的に学びたい方向けのプログラムで、Concentrationより範囲を限定した分野について学びます。Certificateにより修了要件は異なりますが、通常はCore(必修科目)+一定単位の選択科目の履修で取得できます。Certificate Programについては、こちらのページをご参照ください。
2.MPH以外のプログラム
BSPHには、MPH以外にも多くの学位プログラムがあります。詳しくはこちらのページに書かれています。
2-1.実務者向けの修士課程
MPH以外の修士のprofessional degreeとして、Master of Science in Public Health(MSPH)やMaster of Bioethics(MBE)があります。
MPHとMSPHの違いは、修了年限(MPHは11か月間、MSPHは2年間)、学生の所属(MPHはschool-wide、MSPHは各Department)、定員(MPHは250人、MSPHは130人)、学費、入学前に求められる経験(MPHは原則2年間の職務経験、MSPHは学部卒業直後に入学可)等です。また、MSPHプログラムの学生は8割以上が米国出身です。
2-2.研究者向けの修士課程
修士のresearch degreeには、Master of Science(ScM)、Master of Health Science(MHS)等があります。修了年限は、ScMは2年間、MHSは1年間のものと2年間のものがあります。
2-3.Dual degree programs
BSPHとJohns Hopkins Carey Business Schoolで2年間学びMPHとMaster of Business Administration(MBA)を取得できるMPH/MBAプログラムや、BSPHとSchool of Nursingで1年半学びMPHとMaster of Science in Nursing-Public Health Nursing (MSN)を取得できるMSN/MPHプログラム等があります。
2-4.博士課程(PhD、DrPH)
博士のresearch degreeとしてDoctor of Philosophy(PhD)、professional degreeとしてDoctor of Public Health(DrPH)があります。数年前までは両者の区別はあまりはっきりしていなかったようですが、現在は明確に分けられており、後者はフルタイムの仕事を持ちながらほぼオンラインで取得可能だそうです。