活動報告

30回定期交流会  [Regular]

講演:顔に関する交流会~3年ぶりにお会いしましょう!~

日時:2023年64日(日)10:00-12:00

開催方法:ハイブリッド(東京大学本郷キャンパス+Zoom ミーティング)

第30回定期交流会は、久しぶりに現地会場を設けつつ、コロナ禍でお手の物となったオンライン会場も併設したハイブリッド形式での開催となりました。

今回は顔に関する交流会~3年ぶりにお会いしましょう!~ということで、メンバーがそれぞれ気になっていた展覧会や美術展、博物館に行って展示内容や感想を共有し合う機会としました。

まず、劉さんから「ピカソとその時代」と「エゴンシーレン展」について共有していただきました。ピカソやエゴシーレンが活躍した時代は人々が「自我」や「自意識」を探求した時代であり、自画像を含む人物像の表現(特に顔の表現)に画家による自我や自己意識の探究過程が読み取れるという話が興味深かったです。

次に、高橋さんから東京大学総合研究博物館のモバイルミュージアム「遭遇」展についてご紹介しました。「遭遇」展は、小さな部屋に東大が収蔵している様々な哺乳動物の頭蓋骨が部屋の中心に向かって所狭しと陳列されているだけの、至ってシンプルな展覧会でした。しかし、部屋の中心部に立ってみると、普段動物園や動画で目にする動物たち(だったモノ)の頭部が一斉に自分を見ているような気がして、展覧会の題名通り、在りし日の動物たちに「遭遇」する形となりました。

その次に、牛山さんから「クリスチャン・ディオール夢のクチュリエ」展について共有していただきました。展覧会では単に洋服が展示されているだけでなく、洋服に合わせたプロジェクションマッピングなども展開されており、とても豪華な構成だったそうです。洋服の展覧会だったため「顔」は終始不在でしたが、洋服に合わせた顔を想像しながら会場を回ってみると、また違った楽しみ方ができたそうです。

その後、安藤さんから「マティス」展についてご紹介いただきました。マティスはどちらかと言うと彼の作品の中では顔をしっかりと描かないのが特徴で、展覧会でもはっきりと表情を描いた絵、表情を細かく書き込んだ絵はほぼなかったそうです。見る者の想像力を掻き立てるためにむしろ顔をしっかりと描写しないのだそうです。参加者は安藤さんが紹介してくださったマティスによる人物画と、その前に劉さんから紹介していただいたピカソやエゴシーレンによる人物画も比較しながら発表を聞いていました。

安藤さんの発表の後は、オンラインに発表会場を移して、徐さんに弘前レンガ倉庫美術館で開催している「大巻伸嗣—地平線のゆくえ」展をご紹介いただきました。こちらも顔が登場しない、空間美術に関する展覧会でしたが、参加型の空間美術を経験する中で、むしろ作品を眺める自分の存在が再帰的に経験され、とても刺激的だったそうです。オンライン会場の発表2人目は瀬尾さんで、瀬尾さんからは「ジブリパークとジブリ展」についてご紹介いただきました。展覧会では、2次元のイラストとして表現されていたキャラクター達が自然な形で3Dのオブジェになっていて感動したそうです。また、展覧会ではジブリ初のフルCGアニメーションであるアーヤと魔女の制作過程に関する展示もあり、瀬尾さんのご専門分野に引き付けて、セル画では当たり前のように登場する顔表現(びっくりした時に目の大きさが極端に変化する)をフルCGで表現することの難しさについて解説していただきました。

最後の発表者は福富さんでした。福富さんからは、美術作品から見る「似ている」ということ~ポップアートを中心に~というタイトルで、複数の美術展の内容を対比してみるプレゼンをしていただきました。具体的には、まず「合田佐和子展 帰る途もつもりもない」展と「マリー・ローランサンとモード」展を比較し、顔の表現における写実性と抽象性・作家性、「江口寿史イラストレーション展 彼女-世界の誰にも描けない君の絵を描いている-」展・「東京彼女」展と「中村佑介20周年展」でイラストにおける人物表現と似せる・似せない/作家らしさの表現について、「PORTRAIT STUDIES HOKUTO NARIKIYO」(成清北斗さん)における似顔絵と小河原智子先生の似顔絵を比較して、似顔絵表現における引き算や誇張について議論しました。

今回はその道の専門家ではないメンバーが各々美術展や展覧会に行って情報共有をするという初の試みでしたが、意外にも議論が盛り上がると共に、それまで知らなかった様々な顔の表現や捉え方について知る大変有意義な機会となりました。