活動報告

第27回定期交流会 [Regular][Psychology]

講演1:モニターを通して悲しみ・喜び表情を観察した場合の感情状態の変化

講師:大橋佳奈さん(立命館大学)

講演2:笑顔の表情フィードバックに影響を及ぼす要因の検討

〜表情形成の強度・形状・自然さに着目して〜

講師:安藤圭佑さん(東洋大学)

日時:2022年5月15日(日)13:00-15:00

開催方法:オンライン会議(Zoom ミーティング)

2022年5月15日(日),コロナ禍の影響を受け,前回に引き続き第27回定期交流会をオンラインで開催いたしました.参加者数は21名でした.

今回の定期交流会では立命館大学の大橋佳奈さんと東洋大学の安藤圭佑さんを講師にお招きし,講演と話題提供をしていただきました.


まず立命館大学の大橋さんから,パソコンディスプレイ上の自分自身の顔を操作した顔を見ることによる感情状態の変化について紹介いただきました.大橋さんは、顔面フィードバック仮説に関する先行研究における実験手法を使った場合,自分で表情を変化させているという操作感(Sense-of-Agency)が感情に影響を与えてしまうと考えたそうです.先行研究での実験手法をそのまま使用すると,操作感と顔面筋肉の動きを分けることが困難であるため,今回,大橋さんは操作感だけ独立して操作するため表情変形システムを利用してこれを分離することにしたそうです.

実験として,(1)自己顔画像が中立から感情に変化する映像を観察することで感情が変化するかどうか(2)実験1より強い喜び表情弱い悲しみ表情を刺激とした用いた場合の感情の状態変化を行い参加者が単に表情を見た場合と(参加者・実験者が)マウス操作を伴った場合での感情状態を測定されていました.測定としてPANASの日本語翻訳版からランダムに質問を行い,(1)の結果として,喜び表情を提示した場合は感情は変化せず,悲しみ状態を提示した場合は感情状態は変化し,自分で操作したことにより感情の変化量が増えることを,(2)の結果として,悲しみ表情は強度を弱めてネガティブに働く,喜び表情を強めた場合にも感情状態は変化しないということを確認されたそうです.日常生活の中で喜びの表情に触れる機会は少なく,日常的な慣れの違いから表情の感度に違いがあるかもしれないとのことでした.今後の展望として,他の表情を使用した場合,微表情(筋電図を実験に使用し筋肉の動きを確認),マウスを動かす速度と知覚可能な表情変化量の対応関係,顔面フィードバック効果に関する操作感の影響を上げておられました.

実験として,(1)自己顔画像が中立から感情に変化する映像を観察することで感情が変化するかどうか,(2)実験1より強い喜び表情,弱い悲しみ表情を刺激とした用いた場合の感情の状態変化を行い,参加者が単に表情変化を見た場合とマウス操作を伴った表情変化の場合での感情状態を測定されていました.測定としてPANASの日本語翻訳版を使用されていました.(1)の結果として,喜び表情を提示した場合には感情は変化せず,悲しみ状態を提示した場合には感情状態は表情に対応して変化し,また自分で表情を操作したことにより感情の変化量が増えることを,(2)の結果として,悲しみ表情は強度を弱めても対応した感情状態に変化する,喜び表情を強めた場合にも感情状態は変化しないということを確認されたそうです.日常生活の中で喜び表情と比較して悲しみ表情に触れる機会は少なく,日常的な慣れの違いから表情の感度に違いがあるかもしれないとのことでした.今後の展望として,他の表情を使用した場合,微表情(筋電図を実験に使用し筋肉の動きを確認),マウスを動かす速度と知覚可能な表情変化量の対応関係,顔面フィードバック効果に関する操作感の影響を上げておられました.

質疑応答では,実験デザインの違いの妥当性(実験2で参加者内で計画したのは喜び表情を実際に撮影する必要があったため),コロナ禍の中,実験参加者をどのように集められたのか?,表情変化が自然で驚いた,個人差,が挙げられ闊達な議論がなされました.

2つ目の発表は,東洋大学の安藤さんによるもので,表情形成の際の要因(強度・形状・意識(自然さ))が表情フィードバックにどのような影響を及ぼすのかを心身の計測を通じて明らかにすることを目的に行われたそうです.

表情として笑顔を採用し,強度はOmron社製の笑顔スキャンで笑顔強度を計測することで弱・中・強強さを,形状はペンテクニック法による再現,自然さについてはいつも作っている表情を作ってもらうようにし,実験として,6種類の表情形成後(真顔+笑顔5種類)の心身の状態を測定(生理指標:唾液アミラーゼ活性値,主観的感情評価:アンケート)し,表情を形成する際の要因が表情フィードバックに及ぼす影響を明らかにしようとされたそうです.

結果として,唾液アミラーゼの活性値の変化については,分散・共分散分析における有意差は見られず,また自律神経系の活動割合についても,分散分析に有意差は見られなかったとのことでした.ただし笑顔形成の得手不得手によって唾液アミラーゼの増減にわずかな傾向がみられ,また,実験では自然に起きた笑いではなく意図的に形成した作り笑いを用いたため,呼吸に及ぼす影響に差があり,変化が見られなかった可能性があるとのことでした.主観的な感情変化については,自然な笑顔を形成した際にはポジティブ,ペンテクニックを使った場合にはネガティブな影響が出ており,笑顔強度を高めるほど,人工的な・浮ついたといった印象が真顔の場合と比較して強くなっていたということです.結論として,強度・形状・自然さの要因では,笑顔を形成する際の違和感の影響が強く,そのため自然な笑顔を形成した際に多くの感情においてポジティブなフィードバックが起こることが確認できたとのことでした.

今後の展望として,笑顔形成に不慣れな人に与える心理的負荷の検討,表情フィードバックにネガティブな影響を及ぼす要因の検討を挙げておられました.質疑応答では,「自然な笑顔」の妥当性,要因間の交互作用,第3者の表情から受ける影響について,が挙げられ闊達な議論がなされました.

講演後は”交流会”ということで,Zoomミーティングのブレイクアウトルームを使ってつのグループに分かれ,それぞれに興味のある話題について情報交換を行いました.グループ1は大橋さんをグループ2では安藤さんを中心に,今回の講演内容についての深堀りと熱い議論が交わされました.グループでは,フリーディスカッションと交流が行われました.いずれのグループも時間いっぱいまで話題が尽きず、あっという間に終了の時間となりました.

オンライン開催も今回で8回目となりますが,盛況に終わったのではないかと思います.次回も皆さんとお会いできることに楽しみにしています.