活動報告

光廣さんから顔の美しさ・好ましさ・魅力評価の違いを明らかにするために今まで行われた研究内容について紹介いただきました.


従来では顔の美しさ・好ましさ・魅力の3つの評価は評定値の相関が高く,また美しい人は良い人というステレオタイプの存在から同じ評価であるとみなされてきました.光廣さんは本当に同じ評価とみなして良いのか?という点に疑問を持たれ,その違いについて,各々の項目で評価に与える顔の形態的な特徴が異なるのではないかという仮説を立てて実験を通じて検証されました.

顔写真に対する美しさについて9段階評価評価に影響を与えたとされる顔の特徴の選択の実験を通じて,評価項目によって目に注目する度合いが異なることを明らかにされました.また,目の属性と美しさ好ましさ魅力評価の評定値の相関関係を調査し,好ましさと魅力潜在的に目の情報の影響を受けており認知的な処理が行われていることを,また美しさを評価するときには目という部分情報に加えて顔の全体情報をより多く利用する視覚的処理が行われていることを示唆されました.

好ましさおよび魅力と美しさは評価プロセスが異なる可能性が示唆されたため,美しさと好ましさについて,好ましさ評価の方が処理水準が深くよく記憶されるだろうという仮説を立て,再認記憶の実験を行いその成績を比較しました.また,美しさ評価では,知覚的処理のため提示時間の影響を受けないが,好ましさと魅力の評価では時間の影響を受けて評価に影響がでるであろうという仮説を立て検証されました.美しさを評価した場合には検定上の差はなく,魅力・好ましさについては鼻の評価が高く,特に魅力については1000ミリ秒にしたときに口の評価が異なることが分かり,仮説が部分的に支持される結果となりました。


結果として顔の美しさ・好ましさ・魅力の評価プロセスに以下の違いがある可能性があることを示唆しました.


美しさ:顔全体の情報に基づいて短時間で評価され,評価結果の個人差が少ない(顔の形態的特徴の影響を受けやすい.知覚的処理)

好ましさ・魅力:部分情報について熟慮され,個人差がある(顔の形態的特徴以外の影響も受ける.認知的処理)


最後に今後の課題として,3つの評定値の相関の高さの理由の解明、知覚・認知という分類に新たな次元を加えて整理する必要性を挙げておられました.質疑応答では,評価項目の言葉の定義づけ,性差(刺激・評価者),刺激の時間方向のバリエーションの考慮,美人の基準の変遷と文化的な側面との関係などについて活発な議論が交わされていました.

講演後は”交流会”ということで,Zoomミーティングのブレイクアウトルームを使って二つのグループに分かれ,それぞれに興味のある話題について情報交換を行いました.グループ1は講師の光廣さんを中心に,今回の講演内容についての深堀り熱い議論が交わされました.グループ2では,9月に開催されるフォーラム顔学2021についての紹介と交流が行われました.どちらも時間いっぱいまで話題が尽きず、あっという間に終了の時間となりました.

オンライン開催も今回で5回目となりますが,ハプニングなくスムーズに,かつ盛況に終わったのではないかと思います.

ワクチン接種が進められておりますが変異株の影響もあり依然として不透明な状況が続いています.定期交流会もまだしばらくの間はオンライン開催になるのではないかと思われますが,オンラインであるがゆえに遠方の方でも気軽に参加できるというメリットがあるようにも思います.対面での開催ができるようになったとしてもオンラインからも参加できるよう今から検討しておく必要がありそうです.次回も皆さんとお会いできることに楽しみにしています.