活動報告

第16回定期交流会 [Regular] [Psychology]

顔印象を科学する -印象を測る・操作する技術の開発を目指して-

講師:中村航洋(早稲田大学理工学術院)

日時:2018年7月22日(日)10:00-13:00

場所:早稲田大学西早稲田キャンパス 55N号館1階第2会議室


2018年7月22日(日),早稲田大学西早稲田キャンパスにて第16回若手交流会が開催されました.最近の定期交流会ではワークショップなどの体験型講座を多く開催しておりましたが,今回はそれらを行わず,代わりに講演とその後の議論に多くの時間を割り当てる形式で開催しました.

中村先生のご講演ではまず,顔印象に関連する研究について,最近注目を集めている研究テーマを中心に複数の事例をご紹介いただきました.その中の一つに,美の知覚と脳の関係についてのお話がありました.パーツの配置の微妙な差異だけで美しいか否かが変わるのは顔ぐらいのものであるというお話から,顔の見えに対する人間の知覚の鋭さがうかがえる内容でした.また,脳には美しさに反応する領域があることが知られており,微弱な電流を流し脳の活動を操作する,といった驚きの実験が行われているものの,どの様なものが美しいと感じられるのかまでは未だ解明されていないというお話でした.

続いて,講演の後半では中村先生のご研究についてお話しいただきました.

顔の見た目と,そこから受け取られる印象評価の間の因果関係を解明するために,三次元顔のモデリングツールを活用されていました.これまでは平均顔などの一般的な顔が美しいという仮定の下で様々な研究が進められていましたが,三次元顔の生成・可視化ツールを使用することで,モデルパラメータと評価値を定量的に解析されていました. 具体的には,モデリングツールを使用して特徴が類似していない顔を数百個生成したのち,それらに対して複数の評価者から魅力度に関する評価値を取得し,解析に使用されていました.

その結果,女性の場合には目が大きく,肌のトーンが明るく,尾翼が狭い顔が魅力的に感じ取られやすいという,我々が持つ一般的な認識に近い傾向が見られました.男性に対しても女性的な特徴を持つ顔が魅力的に受け取られるということでしたが,これは日本固有の特色であるというお話がありました.

続いて,顔の印象や魅力度の読み取りについて,その種類や読み取りの速さ,個人差についてのお話などもありました.

中村先生による講演後,若手交流会の有志活動報告として,高橋翠さんから日本心理学会若手の会キャンプセミナー「異分野間恊働懇話会」の参加報告,徐キョウテツさんから第3回若手科学者サミットの参加報告がありました.

今回は講演中心の開催ということで,非常に情報量の多い内容でしたが,中村先生のお話は専門分野の異なる方にもわかりやすく,参加された皆さんには非常に高い関心をお持ちいただけた様に感じました.次回の交流会は秋ごろの開催を予定しております.