太陽系外惑星を探す
I. 太陽系外惑星とは?
太陽系外惑星は、惑星系の形成・進化過程を理解する上で重要な研究対象です。工夫を凝らした観測手法や、近年の衛星探査によってこれまで多くの惑星が発見されてきました。今後は生命の起源解明の糸口となるような観測成果が期待されています。
古いSF映画にもよく登場する系外惑星ですが、実際に初めて発見されたのは1990年代半ばです。それ以降、ケプラー衛星をはじめとした宇宙望遠鏡の活躍により、およそ5000個もの系外惑星が発見されるようになりました。
これらの観測結果から、さまざまな惑星系進化のシナリオへの理解が進みました。例えば、惑星は形成直後には豊富な大気を持ちますが、中心星からの放射によりそれらを失うため、図に示すように海王星サイズの惑星が欠乏するといった示唆が得られています。
これらの惑星たちが作られる過程や多様性の研究を通して、地球の成り立ちや生命誕生の謎を解明することが期待されています。
II. どうやって探すのか?
惑星と中心星(他の恒星)はお互いの重心を軸に公転運動を行うため、惑星をもつ恒星には“ゆれ”が生じます。 例えば、太陽系が太陽と木星の2つだけでできていると考えた場合、太陽系の外から、太陽は木星の公転周期である約12年の周期で、秒速13mほどの速度で振動しているように観測されます。
質量の大きな惑星を持つ恒星ほど、この”ゆれ”は大きくなりますので、このような”ゆれ”に起因する恒星の光の変化をスペクトル上で観測することで、惑星の重さなどを推定することができます。
この方法により、1995年にマイヨールとケローは、初めて太陽型恒星まわりの太陽系外惑星をペガスス座51番星の周りに発見しました。
惑星と中心星(他の恒星)と観測者が全て同じ平面上に存在しているとき、公転運動に同期した惑星による中心星への“食”(トランジット)を観測することができます。
例えば、太陽の前を木星が通過するようすを太陽系の外から観測すると、太陽の明るさは約1%変化します。太陽の前の地球が通過する場合は、約0.01%の変化になります。このように惑星の大きさ(サイズ)で明るさの変化量が異なります。
この明るさの変動から惑星の大きさ(サイズ)などを推定することができます。
III. JASMINE衛星で系外惑星を発見しよう
位置天文観測衛星「JASMINE」は太陽系外惑星探査の役割も担います。特に、生命存在可能な惑星、褐色矮星、若い惑星系など、惑星科学の鍵となるさまざまなターゲットへの探査を行う予定です。JASMINE独自の強みを活かすことで、先進的な成果の創出が期待されています。
JASMINEミッションでは銀河中心方向の観測ができない期間に、トランジット法による系外惑星の探査を計画しています。 JASMINEに搭載される予定の赤外線センサーや、衛星探査による昼夜を問わない連続観測などが、惑星探査においても世界的に大きな強みとなるためです。
生命存在可能な惑星の探査
生命が存在できる条件の一つに液体の水が存在することが挙げられます。約3000Kほどの温度の低い恒星(M型星)の周りでは、太陽(約6000K)と比べて恒星近傍に液体の水が存在することができます。このことからM型星周りでは、短い公転周期に生命存在可能な惑星が存在し、太陽のような恒星と比べて観測的に有利であると考えられています。またM型星は赤い色をしているため、赤外線波長域で比較的明るく観測することできます。
以上の理由から、JASMINEではM型星をターゲットとしたトランジット惑星探査を計画しています。本計画を通じて、生命居住可能な惑星を発見し、将来の惑星大気の詳しい調査を行うための足がかりとすることを目指します。
若い星団領域の調査
若い惑星系は惑星の形成・進化過程を直接観察することのできる重要なターゲットとなります。一般的に、若い惑星系では活発な中心星の表面活動により、惑星探査が困難ですが、JASMINEによる赤外線観測では、この表面活動の影響を抑えることが期待されています。
また、星が密集する星団領域では、比較的視野の小さなJASMINEでも一度に多くの星像を検出器面上に捉えることができます。
JASMINEでの星団探査によって、これまで困難であった形成直後の惑星の姿の発見を目指します。