以下の問題のうち,指示されたものを回答せよ.
1.以下の問に答えよ.
実験室に錯イオン[Cr(H2O)6]3+, [Cr(NH3)6]3+, [CrCl2(H2O)4]+のいずれかの水溶液が入った3つの容器がある.緑色溶液には(A),黄色溶液には(B),紫色溶液には(C)のラベルが貼ってある.これら3つの容器に含まれる錯イオンを区別し,かつ判断理由を述べよ.なお,これらの錯イオンの着色は,CT遷移あるいは配位子内遷移によるものではない.
必要ならば,以下のデータおよび講義資料のカラーサークルを使用すること.
分光化学系列:CO > CN- > NO2- > NH3> H2O > OH- > F - > Cl -
2.以下の文章中の(A), (B)にあてはまる数字を,解法とともに答えよ.また,Bに関しては,すべての異性体を構造式で示せ.
六配位八面体型のコバルト錯体[CoCl2(en)2]+ではキレート配位子として2つのエチレンジアミンが含まれる.それぞれのen配位子に含まれる2つの窒素原子は,炭素原子鎖で結びつけられているので必ず隣合う配位座(シス)を占める.たとえば,下図ではクロリド配位子は互いに金属の向かい側の配位座(トランス)に位置している.この錯体には,下図に示す構造を含めて, (A) 種類の異性体が存在する.また,en配位子の片方の窒素原子上の2つの水素原子をメチル基に置き換えたN,N–ジメチルエチレンジアミン(CH3)2NCH2CH2NH2 (Me2enと略す) の錯体[CoCl2(Me2en)2]+については, (B) 種類の異性体が考えられる.
(ただし,本問では,鏡像異性体は区別しないで1つと数えることとする).
3.金属の果たす役割に関する次の文章を読み,設問に答えよ.
古代から、人類が用いてきた医薬品には自然界に存在する金属化合物が多くあった。現代においても医療における金属の役割は大きく、多くの医薬品や臨床検査薬に用いられている。
金は錬金術時代から、すでに薬物として用いられていたが、本格的に利用され始めたのは、結核菌の発見者であるコッホが1890年、猛毒のシアン化金に結核菌の増殖を抑制する効果があることを発見してからである。その研究の成果はリウマチ性関節炎の治療薬開発に結びついた。また、1910年に化学療法の第一号として用いられた薬は、興味深いことに、無機元素のヒ素を含むものであった。この薬は,ドイツのエーリッヒ博士と,日本から彼のもとに留学中だった秦佐八郎博士によって開発された。これらの化合物は、毒性も高く、副作用の点でもマイナス要因が多くあったものの、現在の安全性の高い金属含有医薬品開発の基礎づくりに大きく貢献してきた。
現在使用されている金属含有医薬品としては、悪性貧血の治療薬としてコバルトを含むビタミンB12、ガン治療薬として白金化合物、胃漬瘍の治療には、アルミニウムや亜鉛製剤が使用されている。抗潰瘍剤として有名なスクラルファートはアルミニウムを含み、1968年に日本で開発された。
また、セレンという半金属を含むエブセレンは、過酸化物を消去する抗酸化作用が注目され、現在は脳梗塞やくも膜下出血の治療に適用しようと、日本では最終臨床試験段階に入っている。
金属薬剤の糖尿病治療薬への応用については、バナジウム製剤の効果が確認されているほか、比較的毒性の低い亜鉛イオンに、経口投与で血糖値を下げる抗糖尿病作用が見いだされたことで経口抗糖尿病治療薬としての亜鉛製剤への関心が高まっている。
問.上記文章中において,各自選択した箇所に関してより詳細な説明を加えよ.選択する場所は1箇所でよい.解答形式は自由である.
4.無機化学受講後の感想と今後の展望
無機化学受講後の感想(期末試験の答案にすでに記述済みの場合は省略可)と,今後への展望について簡単に述べよ.
提出方法
方法:メールでの提出
添付文書として,解答ものを添付して下さい.
wordファイル,pdfなど
期限:指示された日から1週間以内
提出された課題が問題なければ,期末試験の素点を60点に修正する.