第2回目

[2020年12月12日(土) 10:30~12:30]

講師:山本裕子氏 / 廣野美子

外国籍女性の妊娠相談支援

今回のオンラインセミナーには、全国から約70名にご参加いただきました。

講師には(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会の山本裕子氏と廣野富美子氏をお招きし、外国籍女性の妊娠相談をテーマに、相談時の留意点や活用できる制度等についてお話いただきました。

ISSJからはスタッフの重藤が事例紹介を行い、日本に住む外国籍の母子が直面した具体的な課題を共有しました。


セミナー後の参加者アンケートでは、前回と同様、高い満足度を得られました(約90%が満足/やや満足を選択)。            今回のセミナーで紹介された、相談支援現場で役立つ通訳派遣機関や「やさしい日本語」に関する情報も、以下の講義ポイントに合わせて掲載しております。ぜひご活用ください。


廣野先生の講義ポイント】

『外国籍女性の妊娠相談支援

    ~NGO/NPO活動を通じて知る外国人の母子保健(妊娠・出産)をめぐる課題と支援~』

 外国人母子の課題=支援者の課題でもある

  -言葉の壁:妊娠・出産にかかわる正確な情報が得られない

       (夫のフィルターを通じた情報、文字情報の多さ)

  -在留資格による社会保障の制限

  -(元)技能実習生、(元)留学生のシングルでの妊娠・出産

 支援のポイント

  - 訓練された通訳者の導入(親族、知人が入るリスク)

  - 信頼関係の構築

  - 通訳活用時の留意点

  - 情報は伝わる方法で(読む、聞く、SNS、イラスト)

    ●全国医療通訳者協議会 *全国の通訳団体リストあり

     https://national-association-mi.jimdofree.com/

    ●やさしい日本語 (かながわ国際交流財団)

      http://www.kifjp.org/kcns/yasashii/

大切にしていること

- 在留資格<健康は人権  治療より予防

- 生まれた時から不利益を背負わせない

- 必要なサービスについては、自治体、保健医療機関に予算化への働きかけ

→社会の仕組み

- 当事者コミュニティとの連携とStrength perspective

- 私はすべてを知っているわけではない

山本先生の講義ポイント】

『外国人母子が適切な保健医療サービスにアクセスできるために

                       (ネパール人妊産婦を対象とした保健活動)』

プロジェクト例:適切な母子保健サービスへのアクセス改善プロジェクト

        (杉並区とその周辺地域を対象)


母子保健活動で見えてきたこと

  - 外国人母と子の健康は、誰が担当したかで大きく変わってしまう。躊躇せずもう一歩踏み出して真摯に向き合うこと

  - 言葉の壁を取り除かないと相互理解は深まらない=対象外国人の特性に合ったサービスは提供できない

  - 医療通訳活用の方法を学ぶと活動がスムーズに

  - 保健医療機関、行政や自治体、外国人コミュニティ、外国人支援団体、様々な職種、関係者とのネットワークを作り、情報収集や連携ができる体制をつくること

  - 相談を受ける人、NPOなどの役割=接着剤。一歩を踏み出す手助けをする

【事例紹介】

妊娠中に在留資格と安定した住まいを失ったシングルの女性(難民申請者)

相談にいたるまでのハードルと、支援のなかで聞き取った当事者の想いを中心に振り返りました

【参加者アンケート結果 一部記載(29件の回答)】

※ご協力頂いた皆様ありがとうございました

1. 外国籍の方からの相談で、介入したことのある内容(複数回答可)

2. 相談・介入を行う上での困難な点(複数回答可)

3. 外国籍の方への相談現場の実践力を向上させるために必要なもの(複数回答可)

4. 回答者の所属機関


参加した方々からアンケートで以下のようなコメントいただきました。

「廣野さんの『私はすべてを知っているわけではない。自分が出会ってきた人をもとにステレオタイプをつくらないことを意識している』という言葉が印象に残りました。また、多くの課題がある中で、今自分がいる立場から何ができるかという視点で行動していくことが、重要なのだと感じました。」

「母子保健事業は各市町村でされていたり、また地域による特性も大きく個別性が高いため、課題解決はなかなか難しいということがよくわかりました。一方で、最後の質問にあったように、取り残される方がいなくなるような取り組みも必要だと改めて感じました。」


ご参加頂いた皆様ありがとうございました。