近年、「半導体」というキーワードを耳にすることが多くなったと思います。振り返ればここ数年見向きも着目もされておらず、過去これほどまでに「半導体」という言葉が新聞やニュースに出てきたことはなかったかと思います。ところが、半導体にかかわる技術はもとより、その意義や波及効果が伝わっているかといえば、必ずしもそうとは言いない面もあり、また発信側の立場や背景によって「半導体」という言葉の意味が異なっており、「半導体」の含意の広さが余計に複雑にしているように感じています。
そこで、まずはさまざまな「半導体」についてざっくり、というか執筆者の主観で説明したいと思います。
「半導体」というキーワードを聞いてまず思いつくのは、「半分、導体」、つまり導体と絶縁体の中間の性質を示す物質、という説明ではないでしょうか。
私はこの説明を聞いたときに「え、じゃあただの抵抗じゃん?」と思い疑問がつきましたが、もう少し突っ込んで説明すると、電圧・電流・光・熱などの条件によって導体と絶縁体の両方の性質を取りうる(導電率が変わる)物質と捉えることもできます。定義から入るのであれば、狭義の半導体とはこのことを指すと思います。
半導体の素材にはシリコンやゲルマニウムなどの4族の元素が使われていますが、半導体として利用するためには材料を均一に結晶成長させる工程や、プラズマを使った化学反応や蒸着・微細な機械加工、リソグラフィによるパターン形成などにより表面を処理したり絶縁層や金属配線層を形成する工程があり、このことを指す場合もあります。これらの工程はLSI製造工程の前工程と呼ばれる部分と同様の加工工程になるため、これらの全体を通じて前工程そのものをプロセスと呼ぶこともあります。
半導体の導体・絶縁体の中間の性質をとることを利用したものをデバイスと呼びます。代表的なものはトランジスタですが、身近なものでは液晶モニタのバックライトに使われるLED(発光ダイオード)や家電のリモコン受信部やスマホカメラのイメージセンサーに利用されるフォトダイオード、太陽電池も半導体デバイスの一種です。
一方、ICやLSI、集積回路といったいわゆる「チップ」は、大量生産に特化したプロセス(前工程)とパッケージング(後工程)を経て、低価格かつ高性能(小型・高精度・低消費電力など)を実現する回路システムを指します。
最近取りざたされるようになった「半導体不足」とはチップの不足を意味しており、半導体材料や単体のトランジスタそのものではない点に注意が必要かと感じます。
技術面以外での「半導体」にも触れましょう。
全般に国内の官公庁が注目しているのは、ざっくりわけると地方の雇用創出と経済安全保障に分けられているように見えます。技術面での開発については上記で述べた「半導体」の理解が浸透するにつれて今後進んでいくものと期待したいと考えます。また諸外国の状況と比較しながら、今後大幅に改善していくものと期待しています。
本コラムでは半導体の一般的な内容に加えて時事ネタを絡ませつつ、執筆者の独断と主観で「半導体」を解説する記事を掲載していきたいと思います。
久保木