2023マイクロマウス九州大会が、10月29日に熊本高専で開催されました。
当研究室からは大川担当学生2名、汐田と中村が参加しました。結果は汐田のpi:coろ大魔王が完走し、全国大会への参加資格を取得しました。
今回参加した2名の参加報告記事を掲載します。
私は今回のマイクロマウス九州大会に(株)アールティ(以後RT社)のクラシックマイクロマウス制作キット、Pi:Co Classic3で出場しました。
結果はおよそ7ブロックだけ走行し、壁に衝突したところでリタイアという形になってしまいました。汐田君と同様のキットと制作手順だったのですが私の技量不足により残念な結果となってしまったことを非常に悔しく思います。
今回の報告記事では私のマウスがなぜ動かなかったのかについての報告、またハード面での問題についてまとめていきます。今後のマイクロマウス参加者や後輩たちにとって少しでも役に立てば幸いです。
私の機体、しっとりさきいかはハード面で様々な問題を抱えていました。一つ目ははんだ付けが完了した後、動作チェック時に起きたモータが動かないという問題です。
テスターでの導通チェックを行ったところ、モータドライバICへの給電がされていなかった事がわかりました。そのためこの写真のオレンジ部分に示すように、外付け導線をつけることで動くようになりました。しかし、問題発生当初は自分たちのはんだ付けやサンプルコードを疑ってばかりでハード面での異常を認めることができませんでした。
このことからロボット開発において一つ一つ導通チェックをすること、回路図を正確に読むことの重要性を学ぶことができました。
本番3日前ごろに生じた問題は電源を入れると動作が不安定になるというものです。
3.3Vの電源電圧レギュレータが異常発熱していました。そこでテスターで調べたところセンサ基板(写真)のGND間のショートが発生していた事がわかりました。
この問題は写真左側のコンデンサを取り外すことで解消したかのように見え、電源の不安定性は取り除くことが出来たかと思いました。しかし、本番前夜に再びショートが発生し、動かぬP i:Coとなりました。
3つ目の問題はセンサ値の異常です。画像のオレンジ線で囲んだ部分の数値はセンサ値になります。
これは前方に壁がある場合のセンサの値なのですが、右センサの値である r_sen は 51 であるのに対し、左センサの値である l_sen は 374と約7倍の差があります。また、右前センサの値である fr_sen は 23 、左前センサの値である fl_sen は 349と約15倍の差があります。このことから、右側センサが非常に鈍くなっていることがわかります。
計測した値を10倍するなどパラメータ調整等、ソフト面での対策を施したのですが完走しきるまでの成果は得られませんでした。
そして前日に発生した最大の問題はセンサ基板がショートしてしまったことです。これにより新しいセンサ基板を作成する事が唯一の望みであると判断しました。
回路図に基づいてユニバーサル基板への回路実装を大川先生と汐田君に手伝ってもらい、なんとかすべてのパーツを載せた基板を作成することができました。
しかし、当日朝に何とか作成が終了しただけで4つあるLEDは接触不良により動作時に1つしか点灯せず、受光センサは1つも望む値を返すことはできませんでした。
ここで私はタイムアップとなり、本番ではセンサが機能しないまま出走となりました。
今回の私のマイクロマウス開発は目的を達成することができず、完走できなかったという結果を見ると失敗となります。しかし、本番の会場で先達のマウサーの方々からエントリーして出走しただけでも十分な成果だと言っていただき、私自身も二か月でここまで出来るようになったのだと誇りたいと思います。
また、熊本大学で3年間学んだ知識や基礎をマイクロマウスという実際のロボット開発で結びつけることができたこと、大学に入って自分自身の知識と技術が少しでも成長していたことを実感することができたことは他では得難い経験だったと感じています。
そして今回の私の報告(体験記)が後のマイクロマウス初心者の役に立てればなによりです。
10/29日に行われたマイクロマウスの九州地区大会をふりかえってみると、非常に多くの学びがあったと思います。この記事では、私がマイクロマウス競技会を通して感じたマイクロマウスの魅力を紹介したいと思います。 この記事を読んで、マイクロマウスに興味を持つ方が増えると嬉しいです。
私は、実際に自分で手を動かしてロボットを「つくる」ということの重要性を実感できるのがマイクロマウスの大きな魅力だと思います。9月上旬に、私は初めてマイクロマウスに触れましたが、最初どうやって組み立てて、どうやって動かすのかというイメージを全く持てませんでした。しかし、使用したR Tのキットには説明書や、ロボットを動かすためのサンプルコードがあり、少しずつ学びながら開発を進めることができました。左上の写真は、実際に大会で走行したものです。RT社のPi:Co Classic3という制作キットではありますが、実際に組み立てて、動かして、動作を確認しながら調整を行なったりすることによって、ロボットが動く仕組みをより理解することができたので、とても成長できたと思います。また、その時間が楽しくなってきて、ロボットを動かす楽しさも分かった気がします。そして、九州地区大会では迷路を走破することができました。今では、これまでよく分かってなかった回路図がわかるようになったり、探索アルゴリズムや制御について考えることができるようになったと思います 。この経験ができてとても良かったです。また、大会では右の写真のように様々なロボットが出場します。どれも個性的で、ロボットに自分の色を持たせることができるのも楽しい理由の一つだと感じました。
次に魅力的に感じた点は、大会の雰囲気です。この競技会には、年が近い大学生から何十年も開発に取り組んでいるベテランの方まで、幅広い世代に渡って参加者がいました。大手のメーカーに勤めている方や、他の大学の教授など様々な人がいて、そういった方々が互いに意見交換を行い、技術的なところを議論している雰囲気に非常に驚きました。初めてで緊張している自分たちにも気さくに話しかけてくださり、フレンドリーな方がたくさんいらっしゃいました。実際に、自分の走行が終わった後にも、自分のところまで来て、センサの制御に関してアドバイスして下さった方もいらっしゃいました。マイクロマウスのコミュニティを通して、有益な話をたくさん聞くことができ、貴重な時間を過ごすことができると思います。また、Discord を通して、いつでも質問やマイクロマウスに関するお話をすることができるのも非常に魅力的です。
マイクロマウスでは、分野のある一点に集中して真理を追求する研究とは違い、設計から実装、大会本番での走行まで、一貫して行うとができます。エレキ、メカ、ソフトの3つの面を同時に考えてベストな走行を行うために取り組むという経験は非常に価値があると思います。そこを実際に経験したことがあるのとないのでは社会に出た時に、技術者として大きな差になるという話も実際にありました。そういったことを学べるという点でも、マイクロマウス大会に参加するという経験は今後役に立つと思います。私は、これからも移動ロボットの技術を学んでいきたいという思いが強くなったので、頑張っていきたいと思います。
2023/11/07 記:中村昌稀、汐田優斗