兵庫県の丹波市と丹波篠山市に分布する下部白亜系篠山層群大山下層(約1億1千万年前)からは、恐竜類やトカゲ類、カエル類、また貝類など多種多様な動物化石群が産出しています。また、地理的に近接し時代的にも近い下部白亜系手取層群(約1億2~3千万年前)からも、古くより多くの動植物化石が見つかっています。そこで本シンポジウムでは、篠山層群と手取層群の化石群集に関するこれまでの知見に、中国東北部に位置し同じく下部白亜系に属する熱河層群(約1億2~3千万年前)などのものも加えて比較・検討し、東アジアにおける当時の生物相や環境の特性、地域間や時代間での関係について議論を試みます。
主催:日本爬中両生類学会第63回姫路大会実行員会、共催:兵庫県立大学
開催日:2024年11月2日(土)15:00~17:30
開催場所:兵庫県立大学姫路環境人間学キャンパス A401(メイン)、A407(サブ)
参加申込:参加費無料・事前申込 及び当日受付(事前申込の人数次第)
注:大会参加者は申込不要です。
・席に限りがありますので、当日申込が出来ない場合がございます。なるべく事前に申込をお願いします。
・本シンポジウムは日本爬虫両棲類学会第63回姫路大会の一部として開催いたします。シンポジウムの一般参加者の方が学会の発表をお聞きになられたい場合は、別途大会参加費(5,000円)が必要となります。
申込フォーム:こちらをクリック
開会・趣旨説明 太田英利(兵庫県立大学 自然・環境科学研究所)
演題1:下部白亜系手取層群の生物相と古環境-熱河層群や篠山層群の脊椎動物相との比較に向けて-
佐野 晋一(富山大学学術研究部)
演題2:篠山層群大山下層の恐竜相 -東アジアや北米との比較-
田中 公教(兵庫県立大学 自然・環境科学研究所)
演題3:下部白亜系篠山層群大山下層の小型両生爬虫類相-特性と東アジアとの比較-
池田 忠広(兵庫県立大学 自然・環境科学研究所)
演題4:白亜系篠山層群大山下層の堆積環境復元へ向けた地質学的研究
實吉 玄貴・辻 光彦・澤田順弘 (岡山理科大学)
総合討論
演題1:下部白亜系手取層群の生物相と古環境-熱河層群や篠山層群の脊椎動物相との比較に向けて-
佐野 晋一(富山大学学術研究部都市デザイン学系 )
手取層群は,福井県,石川県,岐阜県,富山県,新潟県,長野県に分布する,主に陸源砕屑岩からなる,海成〜陸成の下部白亜系であり,恐竜や哺乳類,トカゲや両生類などの脊椎動物化石,貝化石,植物化石など,多様な化石の産出で知られる.本シンポジウムのメインテーマである篠山層群とは時代や堆積環境,古気候が,多様な羽毛恐竜や鳥類,哺乳類,最古の被子植物大型化石などの産出で著名な,中国東北部に分布する熱河層群とは堆積環境や古地理,古気候が異なることで,それぞれの動物相の違いを説明できるかもしれない.各層群の生物相のデータを統合することで,東アジアの前期白亜紀の陸上生態系をよりよく理解できるものと考えられる.
演題2:篠山層群大山下層の恐竜相 -東アジアや北米との比較-
田中 公教(兵庫県立大学 自然・環境科学研究所)
兵庫県丹波市・丹波篠山市の両市にまたがって分布する前期白亜紀の地層・篠山層群大山下層(約1億万1000年前)は脊椎動物化石を多産する国内有数の地層として知られている.恐竜類では,竜脚類ティタノサウルス形類Tambatitanis amicitiae,獣脚類トロオドン亜科Hypnovenator matsubaraetoheorum,角竜類ネオケラトプス類Sasayamagnomus saegusaiなどが記載報告され,近年急速に恐竜類の種多様性が明らかにされている.特に,大山下層から産出する骨格化石は保存状態が良好であり,形態学に基づいた系統解析を行うことで他地域の恐竜類との系統関係を議論することが可能である.本講演では,大山下層の恐竜類について,主に古生物地理学的な研究意義や今後の展望について紹介する.
演題3:下部白亜系篠山層群大山下層の小型両生爬虫類相-特性と東アジアとの比較-
池田 忠広(兵庫県立大学 自然・環境科学研究所)
兵庫県丹波市・丹波篠山市に分布する下部白亜系篠山層群大山下層(約1億1千万年前)からは、Tambatitanisを代表とする複数の恐竜化石に加え、小型脊椎動物の化石が多数産出している。特に、カエル類やトカゲ類の化石が複数確認されており、これまでにHyogobatrachus、Tambabatrachus、Pachygenys、Morohasaurusなどが記載報告されている。さらに、トカゲ類の未記載種や絶滅した両生類の化石も新たに確認され、小型爬虫両生類相の構成が徐々に明らかになってきている。本講演ではこれまでの研究成果を概説し、同時代の手取層群や熱河層群との比較を通じて、大山下層の小型爬虫両生類相の特性を紹介する。
演題4:白亜系篠山層群大山下層の堆積環境復元へ向けた地質学的研究
〇實吉 玄貴(岡山理科大学生物地球学部 生物地球学科)・辻 光彦(岡山理科大学大学院理工学研究科自然科学専攻 )・澤田順弘 (岡山理科大学古生物学・年代学研究センター)
兵庫県丹波市及び丹波篠山市に分布する下部白亜系篠山層群は、恐竜種を含む豊富な脊椎動物化石種を産出することで極めて重要な地層である。篠山層群は、下部の大山下層と上部の沢田層からなり、大山下層より多様な脊椎動物化石を産出する。これら化石動物の生息環境は、いくつかの地質学的背景を理解した上で、産出する地層の特徴から復元することが可能である。本発表では、大山下層の地質学的背景を概観した上で、現在取り組む地質学的調査の概要や、今後解決すべき問題点、それらの展望について紹介する。