「こも」とは、藁などをシート状に編んだものです。主に農作業に用いられます。(上図)
こも巻きは、江戸時代の大名屋敷で、マツを食害するマツカレハを除去するために開発された、日本独自の害虫駆除方法です。
マツカレハの幼虫は、さなぎになる時に、暗く湿った場所を好む性質があります。
そこで、初秋のころにマツにこもを巻いておきます。
そうすると、こもの中にマツカレハの幼虫が入っていきます。
つまり、人為的に快適な場所(罠)を用意して誘い入れるのです。
初春に、マツカレハの幼虫が活動を始める前に、こもを外し焼却処分することで、マツを守ります。
こも巻きは、アメシロにも有効だと分かっています。
ただし、本来のこも巻きは、晩秋にマツの木に行うものですが、アメシロに対しては、アメシロの発生時期である初夏や初秋に行います。
木は、アメシロが食害する木であればなんでも構いません。
なお、アメシロへのこも巻きは、目の前で起きている食害に対処するものではありません。
次の世代を生み出す前に、駆除することで、次の世代を減らし、以降の食害を抑えるためのものです。
こも巻きは、食害が発生した後に行います。
あまり早く巻くと、こもが風雨によって劣化するので、木についている幼虫が大きくなったり、あるいは地面をアメシロの幼虫が歩き始めてから巻くと良いしょう。
もっとも効果が高いのは、1回目の被害の発生直後です。
なぜなら、アメシロは1年に2から3回発生して、そのたびごとに数を増やすし、最終的に秋に大きな被害をもたらすのですが、こも巻きによる駆除は、1回目に出てきた幼虫が成虫になるのを防ぐので、それ以降の被害を抑えることにつながるからです。
こもは、幼虫が歩いて到達できるところに巻かないと意味がありません。
そのため、食害されている木、あるいはその近く(10m程度)にある木に巻くと良いです。
ただし、1本1本の木について被害があるかを厳密に確かめるよりも、この辺りに被害があるとわかったら、とりあえず巻いてしまっても問題ありません。
こもを巻く高さは、気にしなくて大丈夫です。
作業がしやすい高さに巻いてください。
ただし、複数の木に巻く場合、一番上の高さをそろえておくと、遠目に見たときに美しいです(下の写真参照)。
こもそのものの高さ(幅)は45㎝程度以上の幅があれば、アメシロにとっては十分な避難所になります。それ以上あっても大丈夫です。
木が細いと、こもが二重に巻かれてしまいますが(中央の木)、気にしなくて大丈夫です。
木が太くて、こもが巻ききれなくても、アメシロの幼虫がこもを探して入ってくれるので大丈夫です。
紐は、こもを巻いた上端から10㎝と下端から10㎝ほどのところに巻きます。
紐はなんでも良いですが、見た目に良いのは黒や茶の植物性の紐です。
なお、木に巻いたときに、こもの端はくずれやすいので、少し中に折り込むと良いです。
手前の人物が手で押さえている場所は少し内側に折り込んであります。
アメシロの幼虫はこもに入ると蛹となり、10日から2週間ほどで羽化します。
こもをそのまま放置しておくと、こもが、安全な場所になってアメシロの羽化を助けてしまいます(下のイメージ図参照)。
なので、羽化する前にこもを取り除かなければなりません。
目安としては、こもを外すのは、巻いてから1週間から10日ほどです。
不安であれば、すこしはがして中をみても大丈夫です。
ただし、その年の最後の発生の時には、あまり気にしなくてかまいません。
なぜなら翌年の春まで羽化しないので、それまでにはずせば大丈夫だからです。
ただし、越冬期は、こもの効果があまり高くありません。なぜなら、そもそもの死亡率が高いので、死亡するであろう個体を捕獲しているようなもので、効果が低くなるからです。
こもをはずした際に、
①木についたさなぎを、そぎ取る・つぶすなどして除去する。
➁焼却等の方法でこもを処分する。
の両方をやると効果的ですが、②の作業だけでも十分効果があります。
こもは、ホームセンターなどに売っており、1枚200円程度と比較的安価です。
また特別な準備などは必要なく誰にでもできます。
食害されている木そのものだけでなく、アメシロの行動範囲にある周辺の木にも巻くことで、さらに高い効果が得られます。
何度か書きましたが、こもの役割は、蛹から成虫になるところ駆除することで、次世代の卵を産む前のメスを減らすことです。
下の図は函館の状況を説明しており、8月に、10匹の蛹を捕まえれば、秋に出てくる大量の幼虫を事前に駆除することになります。
剪定したり薬剤を撒くのは大変ですが、「こもを巻く」だけで良いので、楽なのです。
ただし、こも巻きだけで、アメシロの発生をすべて抑えるわけではありません。
効果的な方法ですが、他の方法と組み合わせたりするとさらに効果が上がります。
では、実際にこも巻きの様子を見てみましょう。
こもの外し方の動画はこちらになります。
アメリカシロヒトリ 種の歴史の断面 中公新書 p101 (1972)
アメリカシロヒトリの生命表(西ヶ原,1967年第世代)