アメリカシロヒトリ(以下アメシロ)は、蛾の一種です。
幼虫のときは、もっとも大きくて体長3㎝ほどの白い毛虫で、成虫になると1.6㎝ほどになります。成虫の羽は白く、黒点が見られることもあります。
羽を食べる幼虫
蛹化場所を探して壁を這う幼虫
樹皮についた蛹
成虫
本来の分布域は北米ですが、外来生物として、日本をはじめヨーロッパ、中国、韓国に侵入しています。
日本には、終戦直後に運び込まれた軍用資材に紛れて京浜地区から侵入したと考えられています。
北海道は寒すぎるので分布しないと言われていましたが、2000年ごろに函館で初めて生息が確認され、現在では道南で普通に見られます。
以下は、年に2回発生する場合であり(主に東北以北)、それより南では気温が高いので、年に3回発生します。詳細は次の「2-4 発生回数と積算温度」を見てください。
5月 蛹で越冬し、羽化する。
6月 成虫となり、葉に卵を産む。卵の数は500ほど。
7月 孵化した幼虫が、葉を食べて、木々に害を与える(1回目の被害)
8月 蛹となり、2~3週間で羽化し、再び産卵する。
9月 孵化した幼虫が、葉を食べて、木々に害を与える(2回目の被害)。しかも数が多い。
10月 蛹になるための場所を探して、徘徊し、蛹となる。その際、家屋の壁面などを昇る。
発生には、2化制(年2回発生)と3化制(年3回発生)があります。
私たちが活動している函館市では2化制です。一方、年平均気温が約12℃以上の地域では3化制になると言われています。
この違いには積算温度が関係しています。積算温度とは「毎日の平均気温を合計したもの」です。
ただし平均気温から基準となる気温を引いて使うことが多く、アメシロの場合は基準となる気温は10℃です。
たとえば、ある日の平均気温が12℃で、翌日の平均気温が13℃であれば、この2日間の単純な積算温度は25度になります。
しかし、アメシロの場合は、それぞれから10℃を引くので、積算温度は5度となります。
2化制の場合、目安として次のように計算できます。
第一世代のさなぎの発生:800度
第二世代のさなぎの発生:1300度
アメシロの幼虫は、400種以上の植物の葉を食べると言われています。
そのうち函館の北海道教育大周辺で、主に食害が確認されたのは以下の樹種でした。
・クワ
・ヤマザクラ
・ソメイヨシノ
・シダレヤナギ
・プラタナス
・オニグルミ
・イロハカエデ
なおこれは、木の本数が多かったからで、これらを積極的に好むかどうかはわかりません。
他にも数は少ないですが、ガガイモ、サルトリイバラ、キヌヤナギで食害が見つかりました。
アメシロ幼虫に食害された様子
さまざまな植物を食べるため、それが街路樹や公園樹の場合には、葉が食べつくされ、ひどい時に木が枯死することが起こります。
また蛹になる場所を求めて、大量の幼虫が家屋の壁面を這うことがあり、それが不快であったり、室外機の中に入ってしまったりします。
なお、毒はありませんが、肌が弱い人だと荒れることもあります。
2化制の場合、夏と秋の年に2回の被害をもたらしますが、秋は特に被害が大きいことがわかっています。
なぜなら、1回目の発生で増えたものがさらに卵を産んで、それが幼虫になるので、幼虫の個体数が増えるからです。
葉っぱがほとんど食べられてしまっています。
枯死してしまった木もありました。
蛹になる場所を求めて建物の外壁などに大量につくことがあります。
農業技術所昆虫科 長谷川仁 「アメリカシロヒトリの侵入と発生の問題点」
「アメリカシロヒトリの食餌植物」 北尾淳一郎・安藤博夫・向山文雄・神岡四郎