2026年6月6日に開催した演奏会「Symnapse×miniTua-wind ensemble〜シン・フレックス〜」のために作曲しました。
演奏会当日のプログラムノートは以下の通りです。
〜〜〜〜〜
本作品は、吹奏楽や固定編成の室内楽の下位互換としてではない、フレックス編成でこそ生み出し得る魅力をもつ音楽を模索したものである。
具体的には、Higher / Lower Groupそれぞれの1stパートのラインと打楽器だけで音楽を成立させている。2nd以降のパートに関しては1stパートを彩るように多様な重なりやずれを施している。団体によって楽器の数や組み合わせが変わることで異なる音響や色彩をもつ独自の音楽が発出し、またそのような音楽を探求できるように作曲を行なった。
そのような作品であるため、吹奏楽や管楽アンサンブルはもちろんのこと、金管バンドやサクソフォーンオーケストラのような同属楽器群による大アンサンブルでも演奏可能であり(ちなみに、Higher / Lower Group合わせて20パートを用意しており、本公演では全パートを網羅していない)、ぜひ取り組んでいただけたら幸いである。
作品は以下の4曲によって構成されている。
〈Overture〉ファンファーレ的な音型に始まる短い序曲。
〈Aria / 浮かぶ家の中で〉少し不穏な空気をもつ、「うた」が中心の音楽。じわじわと浮かんでいく家の描写。
〈Scherzo / 骨組みの奇妙なダンス〉Ariaとは打って変わってリズムが中心の諧謔的な音楽。さまざまに音がぶつかっていく。
〈Finale / 空を飛ぶ家〉モードクラスターを中心にしたカラフルな響き。家は完全に地面から解き放たれている。(姫野)
〜〜〜〜〜
それに加え、もう少し詳細な解説や補足を以下に記します。
●作曲のきっかけ
今回の演奏会のコンセプトと共通しますが、本作品は「フレックス編成ならではの音楽を探求する」ことを意図しています。
フレックス編成のための楽譜は近年急増していますが、それらのほとんどには問題が多くあると考えました。例としては「調性音楽であるにもかかわらず、バス声部(=調性音楽において、和声の性格を決定づける最重要声部)を担当するパートがそれに耐えうる音量バランスを保てない可能性がある(作品によっては、なぜか最低声部がoptionalパートになっているものさえあります)」、「メロディが埋もれかねない楽器選択の可能性が存在している」、「楽器選択によっては、指示に従っているにも関わらず音域外の音高が書かれている、あるいは表現にそぐわない音域が指定されている」といった事例が挙げられます。
その原因は、多くのフレックス編成のための作品はもともと吹奏楽や固定編成の室内楽など、すでに楽器が指定されている一般的な編成のために書かれたものを書き換えているからと考えられます。
そこで、それらの問題を解決するどころか、フレックス編成でなければ達成し得ない・フレックス編成だからこそ書き得る音楽表現はないだろうか、と考えた結果作曲されたのが本作品です。
●作品について
概ねプログラムノートに記した通りですが、各曲についてもう少し補足を試みます。
〈Overture〉ヘテロフォニーを部分的に扱ったり、他の曲と比較して2nd以上のパートに1stとは異なるメロディ等を多く含んでいます。
〈Aria / 浮かぶ家の中で〉ソロ・パートは楽器によって2種類の楽譜をもちます(楽器のもつ音域によってテンションが変わるためです)。また、ソリスト以外のパート(Lower Group 6–8を除く)はほとんど同じ楽譜となっています。
〈Scherzo / 骨組みの奇妙なダンス〉主部については、リズムが主体となる音楽を指向しているため、フィギュレーションのみを強調するためにあえて半音のぶつかりを多用しています。また、合間に挟まれる抒情的なメロディは2声部で完結しており、前後とのコントラストをもたらしています。
〈Finale / 空を飛ぶ家〉エピローグ的な内容で、主にこれまでに現れた素材の再現を行なっています。後半では、Lower Group 1を中心としたメロディに対してデジタルクワイア的な発想でHigher Groupが扱われています。
なお、実演を経て改訂・加筆したい箇所がかなりあります。演奏をご希望の方はぜひお知らせくださいませ。(✉️ himenocomp@gmail.com)
楽器の指定についての詳細は、以下に抜粋したノーテーションをご参照ください。