2022年作曲。esprit-エスプリ-(昭和音楽大学弦管打楽器コース授業 演奏会実習、Sax.福住尚大・Fl.石川美羽によるデュオリサイタル)にて初演されました。
以下初演時のプログラムノートより抜粋です。
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高校以来の友人である福住氏からの委嘱作品です。彼からは「うたを中心に据えてほしい」「今後数十年演奏し続けられるような作品を」などの注文があり、その中でどんなことができるだろうかと考えたときに、「フーガを書こう!」と思ったところから曲を書き進めていきました。タイトルの「on F」は、「フーガ(Fugue)」をはじめとして「ヘ短調(f moll)」、「幻想曲(Fantasy)的な=気まぐれな展開」、などFを頭文字にもつキーワードが多く含まれていたことから名付けました。とはいってもフーガは副次的要素で、音楽はやはり「うた」を中心に進んでいきます。
先述の通り彼とは高校生の頃からの付き合いで、文化祭のときに廊下やエレベーターホールで一緒に無断で楽器を吹き散らかして注意されたり、エントランスで演奏会を企画したり(この演奏会は今でも後輩たちの手によって受け継がれているそうです)、高校を卒業してからもときどき会ったりと、彼の様々な面を見てきました。彼が練習している風景もよく眺めていて、そのときの印象や聴いていた音色も大いに曲に反映されているのは間違いありません。
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Alto Saxophone
Piano
吹奏楽版はピアノ版を元に、2026年3月9日に国分寺市立いずみホール Aホールにて開催の「吹奏楽の新風〜初演作品発表コンサート〜」のために編曲されました(MCPA吹奏楽団、波田賢門氏のアルト・サクソフォンと竹下奎汰氏の指揮により初演)。
編成の規模の変更に伴い尺の変更が部分的にありますが、基本的にはデュオ版と同じ内容です(つまり、順序としては逆ですがデュオ版をピアノリダクション版として考えることも可能です)。
吹奏楽は比較的小さい編成となっています。
Solo Alto Saxophone
Piccolo
Flute
Oboe
Bassoon
Bb Clarinets 1 (div.) & 2 (div.)
Bb Bass Clarinet
Eb Alto Saxophone
Bb Tenor Saxophone
Eb Baritone Saxophone
Bb Trumpets 1 & 2
F Horns 1 & 2
Trombones 1 & 2
Euphonium
Tuba (div.)
String Bass
Timpani
Percussion 1 (Suspended Cymbal / Snare Drum)
Percussion 2 (Bass Drum / Tambourine)
Percussion 3 (Tam-tam / Wind Chimes / Vibraphone / Suspended Cymbal / Triangle)
Percussion 4 (Glockenspiel / Tambourine)
作品に用いられる主な素材は3つの主題=フーガにおける主唱と対唱、第1楽章部にて3/8拍子で演奏される主題(以下アリア主題)の3つです。
作品のフォルムについて「気まぐれな展開」と解説では記したものの、最終的な印象としてそうなるように構成したものであり、構成上の基本的な発想は「ソナタ形式」と「伝統的な協奏曲における3楽章形式」の折衷にあります。
つまり、ソナタ形式における提示部-展開部-再現部と、3楽章制が次のように対応します:序奏+第1楽章(伝統的にはソナタ形式ですが、ここでは全体にソナタを敷衍しているため提示部と少しの展開のみ、程度の分量です。実態としてはすでに展開部といえるでしょう)-第2楽章(緩徐楽章的な楽想のもと素材を展開しています)-第3楽章(ロンド、あるいはソナタ形式の快活な楽想が置かれることが多い楽章です。ここではフーガの形式を用い、展開と再現を行います)。
主唱の変型による序奏を経た第1楽章部ではアリア主題を中心に進んでいきます。
第2楽章部では新たな素材が出ているように思われますが、これは対唱の反行形です。中間部ではアリア主題も現れます。
第3楽章部では先述の通り全面的にフーガの形式を採用しています。主唱と対唱を形式通りに用い、加えて通常自由唱が置かれる部分ではアリア主題の展開を行なっています。
また、クライマックスで行うストレッタ(追拍)ではアリア主題も同時に再現しています。
本作品の構造(3つ主題が現れ、フーガのストレッタとして主題のうち2つが同時に再現される)は拙作《Prelude, Choral, Fugue and Epilogue for wind orchestra》(2022 / 2024)と同様のものです。これは、Prelude...を作曲後納得がいかず一旦破棄し、そのアイデアをベースに本作品を作曲したためでした。
その後国立音楽大学の吹奏楽作品公募のためにPrelude...の改訂を行い初演が行われたため、現在はどちらも作品リストに載せてあります。