ひだまりカフェのレシピ[14]
摂食障害ほどクリエーティブな病はない
ひだまりカフェのレシピ[14]
摂食障害ほどクリエーティブな病はない
この十月(2015年10月)で十年を迎えたひだまりカフェ、最初の年は教会のホールを借り、チラシをあちこちに配り歩き、ドキドキしながら家族の会をスタートさせました。医療機関にかかっていてもなかなか他の経験者の話を聴く機会がない、短期間には変化がみえないこの病気がどのように治っていくのか軽くなった人の話を聞いてみたい、ほんの少しでも希望がもちたい、そんな思いをずっと胸にいだいていたのです。無我夢中で始めた会でしたが、有難いことに半年後にはアートフォーラムの支援自助グループにしていただき、一年後には本人会も開くようになり、ずいぶんたくさんのご家族、そしてご本人との出会いがあって、今日に至っています。
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摂食障害は本人にとっても家族にとってもかなり手強くわかりにくい病気だと思います。
普通なら、医療機関にかかり、治療を受け、薬を飲むといった受け身の姿勢の受診だけで治る場合が多いでしょう。けれどもこの病気では、本人、そして出来れば家族も、今までの暮らし方、考え方を点検し、調整していくことが必要です。また、日常生活上困った症状、身体をおびやかす症状があれば、普通の病気ならそれをどうにかしようとするのが当然だと思います。
でもこの病気の場合は、直接食の症状をなくそうと努力し、もがけばもがくほど、泥沼にはまってしまうことが多いのです。ごく大雑把にいえば、食の症状や様々なこだわりは、現実の場面で挫折等の困難を感じている本人にとっての当座の足場、それを突然取り去ってしまっては立ってさえいられなくなる、じっくりとそれに代わるしっかりした足場を新たに築いていくことが必要、あるご本人の言葉によれば、“自分の取扱説明書をつくっていくこと”こそが大切だというのです。
そして、途中の段階では、これも別のご本人のお言葉を借りれば、“症状を目の敵にしてそれを克服できない自分を責めることはやめて、病気をまるでぬいぐるみか何かのようにそっと小脇にかかえて、しばらく共に生きていく”、その中で少しずつ、自分に出来ること(例えば人間関係、趣味興味、居場所の開拓など)をふやしていく、迂遠なようですが、それが着実な回復への道のように、この十年間いろいろな方の話を聞いてきた私には思えます。
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映画監督の川瀬直美さんが“子育てほどクリエーティブなものはない”と書いておられましたが、私は“摂食障害ほどクリエーティブな病はない”と今は言いたい気がします。そのようなクリエーティブな戦いをしている素敵なご本人さんたち、ご家族たちにとともに話し、考えてくることが出来たのを本当に幸せに思います
確かに長い経過をたどることの多い病気ではありますが、この頃、ずいぶん沢山元気になってきた方々を見ています。皆さんにとても豊かなものを感じます。
現実には治ってものハンディ、教育上の遅れや、就職、結婚の不利など様々な困難も残るのかもしれません。その辺のことを考えていくのがこれからのひだまりの一つの課題なのかもしれません。
でも、クリエーティブな病を闘ってきたことの目に見えない意味、それが私には本人さんたちを包むオ-ラのようにはっきりと見えます。そのことを忘れずどうぞ胸を張って生きて下さい。豊かな心で自分にとっての幸せを見つけて下さい。
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MK/yy[201603ひだまりカフェbooklet No.20掲載
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