ひだまりカフェのレシピ[12]
forgive and forget 許して忘れる
ひだまりカフェのレシピ[12]
forgive and forget 許して忘れる
春の到来を待ちかねていたような桜の開花。寒さに身構えていた身体も少しずつ緩むような気がする季節ですね。今回のレシピはあるテレビ番組で見たお婆さんの言葉。過去に散々移民の苦労を重ねながらも今は幸せと笑顔で答えるそのお婆さんの幸せの秘訣は“forgive and forget 許して忘れる”ことだそうです。
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ミーティングで皆さんのお話を聴いていると、摂食障害という病気、それまでにため込んだ怒りや憎しみなどの負の感情をうまく吐き出すことが出来なくて、それが食の症状に転化していることも多いのではないかという気がします。育ってきた環境の中で家族間に緊張関係があったり、学校や職場の人間関係がうまくいかなかったりして気持ちのもやもやが極度にたまる。けれど、それに自分で気付いていなかったり、悪い感情を持つのはいけないことだと思い込んで我慢していたり、うまくそれを表現する方法を知らなかったり、かと思えば、たまりたまった感情を爆発させてしまい、相手にはあまり気持ちが伝わらないのに自分ではとても後味の悪い思いをしたり…。
カウンセリングや自助ミーティングで話す、本を読む、他人の話を聴くなどの試みの中で、自分の心の中のメカニズムに気付いていくのは素晴らしいことだと思います。あれっ、自分は怒りをもってもよかったんだ、それも当然だったんだなどと納得するのは、回復の上で大きな転回点となる可能性のあることだと思います。そして、自分を守るための新しい関係の結び方を身につけるのも大いに有効だと思います。
ただ、同時に忘れてはいけないのは、何度も繰り返し語るうち考えるうちにいつのまにか出来上がる“私のストーリー”、それが大いに自分を助けてくれることは確かなのだけれど、それはあくまで“私のストーリー”であって、他の人にはまた他のストーリーがあるということ。だから怒りなどの負の感情をストレートに相手にぶつけてみても、また根気よく説明してみても、なかなかそれが伝わらないことがありうるということです。
例えば親との関係での気付きから、親に自分の気持ちと変化とをわかってもらいたい、親にわかってもらえさえすれば…と感じている方も多いのではないでしょうか。特に今親と一緒に暮らしている方にとっては現在進行形の問題ですから余計にその切実度も高いでしょう。でも、これがなかなかの難事業。なんせ心身の柔軟性に一世代分の差があるわけですから、その分親の側に考え方の変化を受け入れる余裕が少ないのも当然。わかってもらえないことの方が多いと考えた方がよいのかもしれませんね。また、過去に他人から傷つけられた経験がある場合にも、今謝罪を要求したところでなかなか心から謝ってもらうことなど期待出来ないことの方が多いでしょう。では、負の感情を宙ぶらりんにしたまま回復出来るのか、それでも幸せを感じることが出来るようになるのか。
とても悩ましい問題ですね。
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その時に思い出したいのがお婆さんの“許して忘れる”の言葉。もちろん自分の負の気持ちにふたをするなどということではなく、自分でその正当性に気付き、それを何度も何度もかみしめてからの話ですが、自らの身体や心を締め付けて蝕む、いわば毒物である怒りなどの負の感情を抱え込み続けるのをやめて、敢えて“自分の未来のために”(相手のためじゃなくても構わないじゃない!)意識して手放してみることは、決して卑怯でも自己欺瞞でもなく、とても賢い選択なのではないかと思うのです。嫌な思いをしたこちら側が、親には親の事情があった、いじめる側にも気の弱さがあったなど、いわば相手のストーリーをも受け入れることは、とてもとても大変なことではあるけれど、それでも相手に対して負の感情の色付けのない考え方が出来るようになると、不思議と自分の言葉が相手に届きやすくなるようです。
まぁ、エイッと相手より大人になって一段高みに立ってしまうこと。同じ土俵でいつまでも勝負のつかない戦いを続けるよりも、勝ち負け以上に大切なことを優先することとでもいったらよいのでしょうか。相手がわかってくれないから回復出来ないなどと悲観せずとも、自分で出来ることがまだまだありそうな気がします。
お婆さんの笑顔、春の花のように素敵でしたよ!
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MK/yy[201504ひだまりカフェbooklet No.18掲載]
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