ひだまりカフェのレシピ[11]
“場”の力
ひだまりカフェのレシピ[11]
“場”の力
暮れには時ならぬ厳しい寒さや大雨など季節の不順さが目立ちましたが、年が明けてからここ横浜では青い空の晴れやかなお天気が続いています。ひだまりカフェを開いてから今年で10年。ずいぶん沢山の方々との出会いがありました。色々なことを深く考えてみる機会を与えて頂きました。治療法にも未だにどこか手探り感のある摂食障害という病気。回復のためにはどうしても生き方、考え方の路線変更が必要となります。皆で話し合うことは人生の復習点検、それぞれが遥々たどって来た道を振り返ることにもなりました。
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お医者様に任せて、治療やお薬の処方などを受け、言われた注意を守って大事にするのが世の中の常識的な病気への対応ですが、摂食障害の場合は必ずしもそのような筋書き通りにはいきません。意志の力ではなかなかコントロールがきかない食の症状には残念ながらすぐ効く特効薬、即効法は求められないもののようです。自分なりに人の中でやっていける自信を回復し、様々なストレスへの対処法を場に応じて学び、ものごとを柔軟に考えられる力を身に着ける。当たり前だけれどとても大切な、そんな日々の訓練のようなものを地道にやっていくうちにいつのまにか症状が消えていく、そのような回復の過程を身近で何度も見せてもらうことが出来ました。
気長に付き合っていくことを余儀なくされるこの病気ですが、とても貴重な体験にもなりえます。何より自らの人生の中で“自分が主役”であることを取り返す過程が、回復でもあるということは、なんと素晴らしいことでしょう。最初は病識さえないこともあるけれど、自分が症状で困っていることを認め、治りたいと思い始め、いろいろ苦しみ悩み考え、様々な気付きを経験し、生活の中で試行錯誤する。そんな経験がたとえその途上ではアップアップともがいているだけのように思えても意味のないはずがありません。そのような葛藤の中で“自分”の輪郭がよりはっきり見えてきて、“自分”にフィットする“自分”なりの生活を作っていくことが出来る。今苦しみの渦中にいる多くの本人さんたちにも、またそれを不安とともに見ている家族の方にも、出来れば現在の困難に対してそのような希望のイメージを持ってほしいと思うのです。
そんな気付きのために、専門家の力を借りる、自分であれこれと考え工夫する、本を読むなど人により様々なやり方をなさっていると思いますが、体験を話し合うという私たちの続けてきたようなやり方もまたとても力のあることだと実感しています。“場”の力とでも言ったらよいのか、集まった人たちの数の足し算より以上の何かが働いて、各自の自信やエネルギーの回復や気付きを強く促してくれるように思うのです。
ある本※のタイトルに「毎日が新たな始まりの日」とありました。回復は“自分”が“自分”の人生を変えようと思った日から始まります。新しい年に本人も家族もそのための何か小さなスタートが切れるとよいですね。
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※ある本:Karen Casey著 『Each Day a New Beginning』(摂食障害の)女性のための毎日のメディテーションの本です。
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MK/yy[201501ひだまりカフェbooklet No.17掲載]
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